イアン・スチュアート 著 徳田 功 訳 「不確実性を飼いならす」メモ
「不確実性を飼いならす」を読み終えた。
本を購入したときは、どんな内容の本なのか良くわかっていなかった。確率論や統計論からはじまり、非線型力学(カオス)、量子力学まで、不確実性に対処するために人間たちが生み出してきた方法(科学)を解説していた。
印象に残ったのは、15章の「量子の不確定性」で、決定論に基づく隠れた変数理論が、不気味な遠隔作用(互いに遠方にある二粒子からなる系で、一方の測定が他方に瞬時に(光速を越えて)影響を与える)を排除して量子もつれを説明できる可能性があるとのことだ。
コペンハーゲン解釈は、量子の奇妙な性質について深堀りするのをやめようという立場と理解しているが、隠れた変数理論を使えば、合理的な説明ができるかもしれないようだ。今後の研究成果が楽しみだ。
イアン・スチュアート著 徳田 功訳
「不確実性を飼いならす 予測不能な世界を読み解く科学」メモ
17 不確実性の活用
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【まとめ】
・不確実性が解決策になることもある。
・モンテカルロ法は多数のシミュレーションを実行して標本を取り出し、それらから解を推定する。
・モンテカルロ法は大雑把な見積もりをするのに適していて、たいてい直接法よりも効率的。
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・不確実性が解決策になることもある。
★モンテカルロ法の誕生
・モンテカルロ法:多数のシミュレーションを実行して標本を取り出し、それらから解を推定する。<複雑な図形の面積を計算する問題>―――
・面積のわかっている図形の内側に、面積を求めたい図形、たとえば長方形を配置。
・この図形に向けたくさんのダーツをランダムに投げる。
・長方形全体に当たったダーツに対し、図形に当たったダーツの割合がいいくつになるか求める。
・注意事項
①この方法は大雑把な見積もりをするのに適している。
得られる結果は近似、誤差の大きさを推定する必要あり。
②ダーツは長方形全体に一様に分布するよう投げる必要あり。
③誤った推定結果が偶然に得られることもある。・長所
①ダーツの代わりに、乱数表やコンピュータでの計算が使える。
②高次元でも使える。
③モンテカルロ法はたいてい直接法よりも効率的。
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★チャイティンのアルゴリズム情報量
・2進数の系列が圧縮できないとき、それはランダムである。
・ある位置までの系列を生成するアルゴリズムを作成するとき、アルゴリズムの長さが系列の長さを下回ることはない。
・従来の情報理論:2進数の系列の持つ情報量は、そのビット数(系列の長さ)
・2進数の系列の持つアルゴリズム情報量:それを生成する最短のアルゴリズムの長さ。
・チャイティンのランラムな系列についての証明
①0と1のランダムな系列は存在する。ほとんどすべての無限の系列はランダムである。
②系列がランダムならば、それを証明することは不可能である。
★量子もつれを利用した乱数生成
・量子力学を用いれば、系列のランダムネスの証明が不可能である制約を回避できる。
・量子の不確定性は特定の系列に変換可能。
・それらの系列がチャイティンの言う意味でランダムであることが、物理的に保証される。
・いかなる敵も、その系列を生成した数学的アルゴリズムを推定できない。
→そのようなアルゴリズムは存在しないから。
★遺伝的アルゴリズム
・生物進化の過程を単純化した方法。
・生物はその形質を子孫に伝える。
・形質にランダムな変異(突然変異)が起こることがある。
・生息環境に適応した個体は、生き延びて次世代に形質を伝える。
・適応していない個体は次世代に形質を伝えることができない。
(適者生存、自然選択)
・自然選択が何世代も行われると、生物は環境にうまく適応する。
→最適に近づく。
・進化は最適化問題としてモデル化可能。
・進化は本質的にランダム。
・進化はウェットウェア(生物という装置)に実装された確率的な山登りアルゴリズム。
・このよな進化を模したのが遺伝的アルゴリズム。