今日は第十一章を読んだ。
- 作者: トマ・ピケティ,山形浩生,守岡桜,森本正史
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2014/12/06
- メディア: 単行本
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トマ・ピケティ 「21世紀の資本」 第十一章 <長期的に見た能力と相続 メモ>
資本収益率が経済成長率よりも大幅かつ永続的に高いなら、(過去に蓄積された財産の)
相続が(現時点で蓄積された富である)貯蓄よりも優位を占めるのは避けがたい。
低成長で高資本収益の時代になれば、相続は19世紀と同じくらい重要になる。
これは、21世紀の格差構造が19世紀と同じになるということではない。
富の集中はそれほど極端ではなく、労働所得の階層が拡大しており、以前よりも富と所得
の相関が高まっている。
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長期的な相続フロー
富を蓄積する過程:労働と相続
この両者がそれぞれ富の階層のトップ十分位やトップ百分位でどのくらいの割合を占める
のか
19世紀:相続フローは年間所得の20-25%を占めた
1910-1950年:相続フローは減少、その後回復
1980年代:加速
相続の回復はまだ終わっておらず、現在も進行中。
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三つの力―相続の終焉という幻想
経済的な相続と贈与の年間フローの国民所得比を指すbyは、三つの力の積に等しい。
by=μ×m×β
β:資本/所得比率
m :死亡率
μ:生存者一人当たりの平均財産に対する死亡時の平均財産の比率
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長期的死亡率
平均余命が伸びると死亡率mが下がり、相続までの時間が長引く。
死亡率の低い社会では相続フローが国民所得に占める割合も小さくなる。
平均余命の変化を根拠に相続財産が必然的に経済の大きな要素ではなくなると考える
のは間違い。
コーホートのの安定、あるいはコーホートの縮小と組み合わさると、きわめて高い相続
フローが生じかねない。
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人口とともに高齢化する富―μ×m効果
超長期的には避けがたい死亡率の低下傾向は、それに対応して高齢者の相対的富が
構造的に拡大することで補われ、μ×mの積は変わらないままか、ゆっくりとしか
下がらない。
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死者の富、生者の富
1820年から現在までの2世紀を通じて、フランスでは常に死者のほうが生者よりも裕福で、
μは比率が100%を下回った第二次大戦後の期間を除き、常に100%よりも大きい。
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50代と80代―ベル・エポック期における年齢と富
50歳あるいは60歳の人が所有する富が相続によるものか、稼いだものかにかかわらず、
ある閾値を超えると、資本は自己再生して指数関数的に蓄積する傾向がある。
r>gという論理は、起業家は常に不労所得者になりがちだと示唆している。
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21世紀には相続フローはどのように展開するか?
どんな蓄積行動の構造においても、資本収益率が上がり経済成長率が下がると、
累積プロセスが早くなって不平等になる。
高齢者が貯蓄を使い果たして相続財産に終止符が打たれるという直観は間違い。
高齢化社会では、相続は人生の遅い時期だが、相続額はずっと大きくなり、
相続財産の全般的な重要性は変わらない。