
- 作者: ファインマン,砂川重信
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1986/04/07
- メディア: 単行本
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第2章 波動的観点と粒子的観点との関係 メモ
1-1 確率波の振幅
・量子力学的体系は、おこりうるあらゆる事象に対し、その振幅を与える。
その事象が1個の粒子を扱う場合、異なる場所と異なる時刻において、その1個の粒子を発見する振幅を与えることができる。
その粒子を発見する確率は、その振幅の絶対値の2乗に比例する。
・ある特別な場合、その振幅は時間・空間的にe^i(ωt-k~・r~)のように正弦的に変化する。
ここでr~は原点からの位置ベクトル。
この振幅はある決まった振動数ωと波数k~をもち振動する。
この振幅は、1個の粒子がエネルギーEをもち、振動数とE=h'ω (2.1)
の関係をもち、その運動量がp~であり、それが波数と
p~=h'k~ (2.2)
の関係にある。(h'=h/2π)
・波束の拡がりが小さいとき、その波長というものを一義的に定義できない。
そのような波束は一定の波長をもたず、その波数に不確定さがあり、その運動量に不確定さがある。
2-2 位置と運動量の測定
・粒子が幅Bの孔を抜けると、その孔を通り抜けたあとでは垂直方向の位置(y方向の位置)を±Bの精度でしることになる。
位置の不確定さ⊿yはBの程度の大きさ。
粒子が孔を通り抜けたことにより、垂直方向の運動量に関する知識は失われた。
波がスリットを通り抜けると、拡がり回折し、直進しない確率をもつ。
・垂直方向への運動量の拡がりpyはp0⊿θに等しい。(p0は水平方向の運動量の大きさ)
拡がった回折像の⊿θはλ/Bで、⊿py=p0λ/Bとなる。
Bを小さくして粒子の位置を正確に測定しようとすると、回折像はさらに拡がり、粒子が横向きの運動量をもつ可能性も大きくなる。
垂直方向の運動量はyの不確定さに逆比例する。
・λは波長で、p0は運動量であり、波長の運動量をかけたものはプランク定数に等しい。
垂直方向の運動量と垂直方向の位置の不確定さの積はhの程度の大きさである。⊿y⊿py=h (2.3)
・粒子の垂直方向の位置が分かっているとき、(2.3)式で与えられるより正確にその垂直方向への運動量の値を予知できる体系を設定することはできない。
位置についての知識の不確定さが⊿yであるとき、垂直方向における運動量の不確定さはh/⊿yよりも大きい。
2-4 原子の大きさ
・核からの電子の距離をaの程度とする。
電子の運動エネルギーは、大よそmv^2/2=p^2/2m=h^2/2ma^2で与えらえる。
位置のエネルギーは−e^2/a
aを小さくすると位置のエネルギーは減少するが、不確定性原理によりその運動量は大きくなり、運動のエネルギーは増大する。
全エネルギーは
E=h^2/2ma^2−e^2/a (2.10)
電子はエネルギーをできるだけ小さくしようとする。
Eの極小を求めるdE/da=−h^2/ma^3+e^2/a^2 (2.11)
dE/da=0とおくと、aの値は
a0=h^2/me^2=0.528オングストローム
=0.528×10^-10m (2.12)
となる。この距離をボーア半径とよぶ。
(2.12)のa0の値を(2.10)に代入するとエネルギーが分かる。
E0=−e^2/2a0=−me^4/2h^2=−13.6eV (2.13)
水素原子をイオン化するには上記のエネルギーが必要。
・原子を押しつぶそうとすると、電子はもっと狭い空間内に押し込められる。
不確定性原理により、その平均運動量は大きくなり、エネルギーは高くなる。
原子の圧縮に対する抵抗力は、量子力学的効果によるものであり、古典力学的効果ではない。
2-5 エネルギー順位
・原子はその定常状態において、ある一定のエネルギーだけをもちうる。
電子は原子に束縛されているときは、任意の値をとれず、許されたエネルギーのうちのどれか一つの値をとる。
・許されるエネルギーの値を、E0、E1、E2、E3と書く。
・励起状態にある電子は、光の形でエネルギーを放出してより低いエネルギー状態に落ち着く。
・E3からE1の状態に転位するときに解放される光の振動数
ω31=(E3−E1)/h' (2.14)
これは、その原子に特有の振動数であり、これがその原子から放出される光のスペクトル線を与える。
E3からE0の場合の振動数は
ω30=(E3−E0)/h' (2.15)
E1からE0は
ω10=(E1−E0)/h' (2.16)
(2.14)、(2.15)、(2.16)より
ω30=ω31+ω10 (2.17)
である。
・2個のスペクトル線があるとき、それらの振動数の和(または差)のところにもう一本の別のスペクトル線が存在する。
・すべてのスペクトル線は、ある一対のエネルギー順位のエネルギー差に対応する。
・(2.17)の関係をリッツの結合則という。