ありのままに生きる

社会不適合なぼっちおやじが、自転車、ジョギング等々に現実逃避する日々を綴っています。

サピエンス全史

ユヴァル・ノア・ハラリ 「サピエンス全史」メモ 

サピエンス全史 上下合本版 文明の構造と人類の幸福

サピエンス全史 上下合本版 文明の構造と人類の幸福

 

 ユヴァル・ノア・ハラリ 「サピエンス全史」メモ

第3部 人類の統一

第10章 最強の征服者、貨幣

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【まとめ】
・貨幣は最も普遍的で、最も効率的な相互信頼の制度。
・貨幣は人間が生み出した信頼制度のうち、ほぼどんな文化の間の溝をも埋め、宗教や性別、人種、年齢、性的指向に基づいて差別することのない唯一のもの。
・貨幣がコミュニティ・宗教・国家を崩すにつれ、世界は一つの大きい、非常に無慈悲な市場になる危険があり、人類の統一を純粋に経済的な過程として理解することはできない。
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★物物交換の世界
・狩猟採集民には貨幣はなかった。
・農業革命が起こっても、ほとんど変化はなかった。
・都市や王国が台頭し、輸送インフラが充実すると、専門化の機会が生まれた。
・専門化の問題:専門家どうしの品物の交換をどう管理するか?


・物々交換は、限られた製品を交換するときにだけ有効で、複雑な経済基盤を成しえない。
・物々交換経済では、交換レートの管理が不可能、いつも交換可能とも限らない。
→貨幣の創出


・貨幣は多くの場所で何度も生み出された。
・純粋に精神的な革命。
・人々が共有する想像の中にだけ存在する新しい共同主観的現実があればよい。


・貨幣は硬貨や紙幣とはかぎらない。
 貝殻、牛、皮、塩、穀物、珠、布、約束手形など。
・今日、貨幣の合計の9割以上は、コンピュータのサーバ上にだけ存在する。
・商取引の大部分は、現金のやりとりを経ず、一つのコンピュータファイルから別のコンピュータファイルへと電子データを移動することで行われる。


・複雑な商業システムの機能には、何らかの種類の貨幣が不可欠。
・貨幣は普遍的な交換媒体であり、それを使えばはぼ何であれ、別のほぼどんなものにも転換可能。
・理想的な種類の貨幣は、富を蓄えること、運搬も可能。


★貨幣はどのように機能するのか?
・貨幣は物質的現実ではなく、心理的概念。
・貨幣は物質を心に転換することで機能する。
・自分たちの集合的想像の産物を信頼している。
・信頼こそ、あらゆる種類の貨幣を生み出す際の原材料。


・これまで考案されたもののうちで、貨幣は最も普遍的で、最も効率的な相互信頼の制度。
・この信頼を生み出したのは、非常に複雑・長期的な、政治的、社会的、経済的関係のネットワーク。


・最初の貨幣:紀元前3000年頃、シュメールの「大麦貨幣」
・大麦には本質的な生物学的価値があるが、保存と運搬が困難。
・貨幣の歴史における飛躍的発展は、本質的価値は欠くものの、保存と運搬が簡単な貨幣を信頼するようになったとき。
→紀元前3000年紀半ばの古代メソポタミアで出現した銀のシェケル
シェケルは硬貨ではなく、銀8.33グラム。
・貴金属の一定の重さが、硬貨の誕生につながった。


・史上初の硬貨:紀元640年頃、アナトリア西武のリュディアの王アリュアッテスが造った。
・一定の重さを持つ金や銀で、識別記号が刻印されていた
・記号は二つのことを保証していた。
 ①その硬貨にはどれだけの貴金属が含まれているか。
 ②その硬貨を発行し、中身を保証した権威を明らかにしていた。
・硬貨が金属塊に優る点
 ①取引のたびに重さを量らなくてよい。
 ②刻印された記号が厳密な価値を保証し、刻印は、その硬貨の価値を保証する政治的権威の署名であること
・人々は、王の権力と誠実さを信じているかぎり、王の硬貨も信頼した。


・リュディア方式の硬貨制度が地中海からインド洋へ拡がったころ、中国は青銅貨と、無印の金塊に基づく貨幣制度を開発した。
・二つの貨幣制度には共通点があった(金と銀に依存)ので、中華圏とリュディア圏の間には、緊密な貨幣と商業の関係が確立した。
イスラム教国やヨーロッパの貿易商と征服者は、リュディア方式の制度と金の副音を世界の隅々に広めた。
・近代後期には全世界が単一の通貨圏となり、最初は金と銀、後にはイギリスのポンドやアメリカのドルといった、少数の信頼されている通貨に依存した。
アフロ・ユーラシア大陸と、最終的に全世界が単一の経済・政治圏となる基礎が固まった。
・文化や言語、宗教、政治体制の違いはあったが、誰もが金貨と銀貨を信頼した。
・この共有信念抜きでは、グローバルな交易ネットワークの実現は不可能だった。


・宗教は特定のものを信じるように求める。
・貨幣は他の人々が特定のものを信じていることを信じるように求める。
・貨幣は人類の寛容性の極み。
・貨幣は人間が生み出した信頼制度のうち、ほぼどんな文化の間の溝をも埋め、宗教や性別、人種、年齢、性的指向に基づいて差別することのない唯一のもの。


★貨幣の代償
・貨幣は二つの普遍的原理に基づく
 ①普遍的転換性:土地を忠誠に、正義を健康に、暴力を知識に転換可能。
 ②普遍的信頼性:貨幣は仲介者として、どんな事業においてもどんな人どうしでも協力できるようにする。


・信頼が個性のない硬貨に依存しているとき、各地の伝統や親密な関係、人間の価値が損なわれ、需要と供給の冷酷な法則がそれに取って代わる。
・貨幣による見ず知らずの人どうしの間の信頼は、貨幣自体や貨幣を支える非人間的な制度にそそぎ込まれる。
・貨幣がコミュニティや宗教、国家というダムを崩すにつれ、世界は一つの大きい、非常に無慈悲な市場になる危険がある。
・人々は貨幣に頼り、見知らぬ人との協力を促進するが、貨幣が人間の価値や親密な関係を損なうことを恐れている。
・人類の統一を純粋に経済的な過程として理解することはできない。
金・銀に劣らず極めて重要な武力の役割も無視できない。