ユヴァル・ノア・ハラリ 「ホモ・デウス」メモ
ユヴァル・ノア・ハラリ 「ホモ・デウス」メモ
第2部 ホモ・サピエンスが世界に意味を与える
第4章 物語の語り手----------------------------------------------------------------------------------
【まとめ】
・書字は官僚制の本質を形作り、貨幣は国家により価値を与えられ、その権力をさらに増す。
・21世紀の新しいテクノロジーは、神や国家や企業といった虚構をさらに強力なもにする。
・虚構と現実、宗教と科学を区別するのは難しくなるが、その能力はかつてないほど重要になる。
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・動物は二重の現実の中で暮らしている
①自分の外の客観的なもの
②自分の中の主観的な経験
・サピエンスは三重の現実の中で生きている
①自分の外の客観的なもの
②自分の中の主観的な経験
③虚構の物語(お金や神々、国家、企業についての物語)
・21世紀の新しいテクノロジーは、神や国家や企業といった虚構をさらに強力なもにする。
・未来を理解するには、虚構の物語がどうやって力を獲得したかを理解する必要がある。
・人間は自分たちが歴史を作ると考えるが、歴史は虚構の物語のウェブを中心に展開していく。
<虚構のウェブの歴史>
○7万年前
・すべてのはじまり。
・認知革命のおかげでサピエンスが自分の想像の中にしか存在しないものについて語り出した。
○その後6万年間
・サピエンスは多くの虚構のウェブを織りなしたが、局所的なものにとどまった。
○約1万2千年前
・農業革命は、共同主観的ネットワークを拡大・強化するのに必要な物質的基盤を提供。
・共同主観的ウェブは新たな障害にぶつかった。
・初期の農耕民は人間の脳のデータ処理能力に頼っていたが、その能力には厳しい制限があった。
○6千年前頃
・古代シュメールの初期の都市では、神殿は崇拝の中心地であり、最も重要な政治的・経済的中枢だった。
・シュメールの神々は、現代のブランドや企業に相当する機能を果たしていた。
・神々は法人として機能していた(農地や奴隷を所有し、融資をしたり、受けたり、給金を払ったり、ダムや運河を建設)。
・日々の活動は神殿の神官たちが管理した。
・神々が多くの資産と力を獲得するにつれ、その管理は神官たちの手に負えなくなった。
・世界の他のどの場所とも同様、シュメールでも人間の強力ネットワークは、農業革命から何千年も過ぎた後でさえ、さして拡大できなかった。
○5千年前頃
・シュメール人が「書字」と「貨幣」の両方を発明し、この障害を克服した。
・「書字」と「貨幣」の結合体双生児は、人間の脳によるデータ処理の限界を打ち破った。
・シュメールの神々や生き神のファラオも、エルビス・プレスリーやマドンナやジャスティン・ビーバーのような、現代の個人ブランドになぞられることができる。
・ファラオ同様、エルビスは物語であり、神話であり、ブランドだった。
・そのブランドは、生物学的な肉体よりもずっと重要だった。
・エルビス本人は必要な仕事のほんの一部しか行わなかった。
・仕事の大半は、かなりの数の代理人や弁護士、プロデューサー、秘書が担っていた。
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生物学的なエルビスが亡くなっても、ブランドのための業務は平常どおり行われた。
・書字のおかげで、人間は社会をまるごとアルゴリズムの形で組織できるようになった。
・読み書きのできない社会:人々はあらゆる計算や決定を頭の中で行う。
・読み書きのできる社会 :人々はネットワークを形成し、各人は巨大なアルゴリズムの中の小さなステップでしかなく、アルゴリズム全体が重要な決定を下す。
↓
官僚制の本質
・書字は強力な想像上の存在の出現を促し、そうした存在が何百万もの人を組織し、河川や湿地のありようを作り変えた。
・書字は同時に、人間にとってそうした虚構の存在を信じやすくした。
・書字のおかげで、人々は抽象的なシンボルを介して現実を経験することに慣れた。
・官僚制は力を蓄えるにつれ、自らの誤りに動じなくなる。
・自分たちの物語を変えて現実に合わせる代わりに、現実を変えて自分たちの物語に合わせられる。
・さいごは外部の現実が官僚制の空想に合致するが、それは官吏が無理やり現実にそうさせたからにすぎない。
・人間の強力のネットワークの力は、真実と虚構の間の微妙なバランスにかかっている。
・誰かが現実を歪め過ぎると、その人は力が弱まり、物事を的確に見られる競争相手に負ける。
・何らかの虚構の神話に頼らなければ、大勢の人を効果的に組織することができない。
・虚構を織り込まずに、現実にこだわっていたら、ついてきてくれる人はほとんどいない。
・本当に強力な人間の組織は、物事を必ずしも的確に見られるわけではない。
・そういった権力の大半は、虚構の信念を従順な現実に押しつける能力にかかっており、貨幣がその好例。
・政府がただの紙切れを発行し、それには価値があると宣言し、それを使って他のあらゆるものの価値を計算する。
・政府はその紙切れで税を払うことを国民に強制する権力を持ち、国民は紙幣を手に入れるよりほかない。
・結果、紙幣は本当に価値を持つようになり、政府の役人の信念が正しかったことが立証される。
・紙幣の発行は政府が管理しているので、政府の権力が増す。
・虚構のおかげで上手に強力できるが、虚構により私たちの協力の目標が決まってしまう。
・非常に手の込んだ協力システムを持っていても、それが虚構の目標と関心のために利用される。
・結果、システムはうまくいっているように見えるかもしれないが、それは私たちがそのシステムそのものの基準を採用した場合に限られる。
・人間には数々の物質的、社会的、心理的欲求がある。
・人間の協力ネットワークを評価するとき、すべてはどのような基準と観点を採用するかにかかってくる。
・人間のネットワークの歴史を詳しく調べる際、何か現実のものの視点から物事を眺めるのが望ましい。
・あるものが現実のものかどうかは「それが苦しむことがありうるか?」と自問すればよい。
・戦争の原因は虚構であっても、苦しみは100%現実。
・だからこそ虚構と現実を区別するべき。
・物語は道具にすぎない。
・物語を目標や基準にすべきではない。
・物語がただの虚構であることを忘れたら、現実を見失う。
・企業やお金や国家は私たちの想像の中にしか存在しない。
・私たちは、自分に役立てるためにそれらを創り出した。
・なぜ、気がつくとそれらのために自分の人生を犠牲にしているのか?
・21世紀には、これまでの時代に見られなかった強力な虚構と全体主義的な宗教を生み出す。
・その宗教はバイオテクノロジーとコンピュータアルゴリズムの助けを借り、私たちの生活を絶え間なく支配し、私たちの体や脳や心を形作り、天国も地獄も備えたバーチャル世界を創造することもできるようになる。
・虚構と現実、宗教と科学を区別するのは難しくなるが、その能力はかつてないほど重要になる。