ありのままに生きる

社会不適合なぼっちおやじが、自転車、ジョギング等々に現実逃避する日々を綴っています。

ホモ・デウス -テクノロジーとサピエンスの未来-

ユヴァル・ノア・ハラリ 「ホモ・デウス」メモ 

ホモ・デウス 上下合本版 テクノロジーとサピエンスの未来

ホモ・デウス 上下合本版 テクノロジーとサピエンスの未来

 

 ユヴァル・ノア・ハラリ 「ホモ・デウス」メモ

 

第7章 人間至上主義革命

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【まとめ】
・人間至上主義は自由意志を尊重し、多種多様な知的・情動・身体的経験を通じて知識を深めることを目的とする。
・テクノロジーの現実から乖離した宗教は、投げかけられる疑問を理解する能力さえ失う。
遺伝子工学とAIの進歩により、自由主義と民主主義と自由市場は時代後れになるかもしれない。
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・意味も、神や自然の法もない生活への対応策は人間至上主義が提供する。


<人間至上主義>
・新しい革命的な教義
人間性を崇拝し、従来宗教の神や自然の摂理が演じた役割を、人間性が果たすものと考える。
・人間の経験が宇宙に意味を与える。
・人間は内なる経験から、自分の人生の意味だけでなく森羅万象の意味も引き出さなければならない。
・人間至上主義が私たちに与えた最も重要な戒律:意味のない世界のために意味を生み出せ


・近代以降の中心的宗教革命は、人間性への信心を獲得すること。
・かつては、意味と権威の源泉として神の役割があった。
・今日、私たちが意味の究極の源泉。
・人間の自由意志こそが最高の権威。
・人間至上主義のスローガン:「自分に耳を傾けよ、自分に忠実であれ、自分を信頼せよ、自分の心に従え、心地よいことをせよ」


・中世の結婚:結婚は神が定めた秘蹟
・現代の結婚:人は愛のために結婚し、本人の個人感情がこの絆に価値を与える。


<人間至上主義の教え>
・物事はそのせいで誰かが嫌な思いをするときにだけ悪いものになる。
・ある行動のせいで嫌な思いをする人がいなければ、その行動は悪くない。


・私たちの感情は、私生活だけでなく、社会や政治プロセスにも意味を与える。
・国の統治や外交政策の方針決定に聖典に答えを探すことない。
・民主的な選挙を行い、人々に問題についての答えを問う。
・個々の人間の自由な選択が究極の政治的権威。


・中世は、芸術は客観的基準に支配されていた。
・優れた芸術は、神聖な霊感に帰せられた。
・今日、人間至上主義者たちは、芸術的創造と美的価値の唯一の源泉は人間の感情だと信じている。


<人間至上主義のモットー>
・倫理:もしそれで気持ちが良いのなら、そうすればいい
・政治:有権者がいちばんよく知っている
・美学:美は見る人の目の中にある


・中世はギルドが生産過程を管理し、個々の職人や消費者の独創性や好みが入り込む余地なし。
・現代の自由市場は、新しい至高の権威である、消費者の自由意志に取って代わられた。


・中世ヨーロッパの知識の公式:知識=聖書×論理
・科学革命による知識の公式 :知識=観察に基づくデータ×数学
・この公式の欠点:価値や意味に関する疑問には対処できない。
・解決法:古い中性の公式を新しい科学の手法と併用する。
・それに代わるものを人間至上主義が提供した。
  ↓
・新しい公式:知識=経験×感性
・倫理に関する疑問に対する答えを知りたければ、自分の内なる経験と接触し、この上ないほどの感性でそれを観察する必要がある。
・経験とは主観的な現象。
・経験の三つの構成要素:感覚、情動、思考
・感性:①自分の感覚と情動と思考に注意を払うこと
    ②それらの感覚と情動と思考が自分に影響を与えるのを許すこと。
・経験と感性は果てしないサイクルをたどりながら互いに高めあう。
・感性は抽象的能力ではなく、実際に応用することでのみ発達し、成熟する実用的技能。


・人間至上主義の人生における最高の目的は、多種多様な知的経験や情動的経験や身体的経験を通じて知識を深めること。

 

・科学と人間至上主義により生み出された現代社会は、陰と陽の関係があてはまる。
・どの科学の陽にも人間至上主主義の陰が含まれ、どの人間至上主義の陰にも科学の陽が含まれる。
・陽は力を与え、陰は意味と倫理的判断を与える。


・人間至上主義の見方は、観光から芸術まで、多くの産業の基盤を成す神話となった。
・旅行業者やレストランのシェフは、斬新な経験を売っている。
・現代の小説や映画や詩は感情を強調する。


・知識=経験×感性という公式は、戦争のような重大な問題についての認識さえも変えた。
・これまで戦争を眺めるとき、神・皇帝・将軍・英雄を目にした。
・過去二世紀の間に、スポットライトは一兵卒やその経験にむけられるようになった。


・人間至上主義は三つの主要な宗派に分かれた。
①正当派の人間至上主義(自由主義的な人間至上主義、自由主義
・どの人間も。内なる声と二度と繰り返されることのない一連の経験をもつ唯一無二の個人である。
・個人の自由意志は国益や宗教の教義よりもはるかに大きな意味をもつ。


自由主義が生みだした二つの異なる分派
社会主義的な人間至上主義と進化論的な人間至上主義
・人間の経験が意味と権威の究極の源泉である点では、自由主義と同じ。
・人間の経験を自由主義の立場から解釈するのは間違いと主張する。
・あらゆる権威と意味が個人の経験から流れ出るのであれば、異なる個人どうしの矛盾をどう解決するのか?
自由主義はそのような矛盾に永遠に苦悩する。


社会主義的な人間至上主義
・自己探求を思いとどまらせ、私たちのために世界を読み解くことをめざす。
・強固な集団組織(社会主義政党、職種別組合など)の設立を提唱する。
自由主義の政治では有権者がいちばんよく知っており、経済では顧客が常に正しいのに対し、社会主義政治では党がいちばんよく知っており、経済では職種別組合が常に正しい。
・個人は自分の個人的感情よりも党と職種別組合が言うことに耳を傾けなければならない。


③進化論的な人間至上主義
・争いは嘆くべきではなく称賛するべきもの。
・争いは自然選択の原材料で、自然選択が進化を推し進める。
・人間に優劣があることに議論の余地はなく、人間の経験どうしが衝突したときは、最も環境に適した人間が他を圧倒するべき。
・優秀な人間が劣悪な人間を迫害することも命じる。
・この論理に従えば、人類はしだいに強くなり、適正を増し、やがて超人が誕生する。


・1914年から1989年まで、三つの人間至上主義の宗派間で凶悪な宗教戦争が猛威を振るい、最初は自由主義が次々に敗北した。
・第二次大戦は自由主義共産主義ファシズムの戦いとなり、共産主義の助けを得て自由主義が勝利した。
・大戦後は共産主義軍事独裁政権、社会主義政権の力が強まった。
ワルシャワ条約機構は軍事的には北大西洋条約機構を数の上でしのいでいた。
自由主義が救われたのは核兵器があったから。
NATOはMAD(相互確証破壊)ドクトリンを採用した。


自由主義社会主義ファシズムからさまざまな考え方や制度を採用した。
・一般大衆に教育、医療、福祉サービスを提供する責務を受け入れた。
・二十一世紀に生き残ったのは自由主義だけ。


・宗教とテクノロジーは微妙なタンゴを踊っている。
・テクノロジーは宗教に頼っている。
・発明の応用の可能性について、重大な選択を行い、求められている最終目標を指し示してくれる預言者が、技術者には必要。
・テクノロジーが私たちの宗教的ビジョンの限界を定めることもある。
・その時代のテクノロジーの現実から乖離した宗教は、投げかけられる疑問を理解する能力さえ失う。
マルクスレーニンが成功したのは、当時ノテクノロジーと経済の実状を理解することに、より多くの注意を向けたから。
社会主義者たちは、テクノロジーと経済を通しての救済を約束し、それにより史上初のテクノ宗教を確立し、イデオロギー上の議論の土台を変えた。


・進歩の列車は再び駅を出ようとしている。
ホモ・サピエンスと呼ばれる駅を離れる最後の列車となる。
・この列車に席を確保するには、バイオテクノロジーとコンピューターアルゴリズムの力を理解する必要がある。
・21世紀の主要な製品は、体と脳と心。
・進歩の列車に乗る人は神のような創造と破壊の力を獲得する一方、取り残される人は絶滅の憂き目にあう。


・伝統的な宗教は自由主義に代替となるものを提供しない。
自由主義は現在の成功に安んじていられるわけではない。
自由主義の理想が、不死と至福と神性に手を伸ばさせようとしている。
遺伝子工学とAIが潜在能力を余すことなく発揮した日、自由主義と民主主義と自由市場は、イスラム教や共産主義と同じくらい時代後れになるかもしれない。