ありのままに生きる

社会不適合なぼっちおやじが、自転車、ジョギング等々に現実逃避する日々を綴っています。

サピエンス全史

ユヴァル・ノア・ハラリ 「サピエンス全史」メモ 

サピエンス全史 上下合本版 文明の構造と人類の幸福

サピエンス全史 上下合本版 文明の構造と人類の幸福

 

 ユヴァル・ノア・ハラリ 「サピエンス全史」メモ

第4部 科学革命

第16章 拡大するパイという資本主義のマジック

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【まとめ】
・経済全体が生き残り、繁栄できるのは、将来への信頼であり、信頼こそが世界に流通する貨幣を支えている。
・資本主義は「資本」と「富」を区別し、「資本」を構成するのは、生産に投資されるお金・財・資源。
・自由市場資本主義は、利益が公正な方法で得られることも、公正な方法で分配されることも保証できず、完全無欠にはほど遠い。
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・帝国の建設、科学の推進に絶対必要なものは、お金。
・経済の近代史を知るために必要な一語は「成長」。
・歴史の大半を通じ、経済の規模はほぼ同じだったが、近代に入り状況は一変した。
・途方もない成長はどうして起こりえたのか?
→信頼

・経済全体が生き残り、繁栄できるのは、私たちが将来を信頼しているから。
・この信頼こそが世界に流通する貨幣の大部分を支えている。


・貨幣は、無数の異なるものの代わりとすることが可能で、たいていのものを他のたいていのものへ変換できる。
・近代以前には、その能力は限られていた。


・信用という考え方は、私たちの将来の資力が現在の資力とは比べものにならないほど豊かになるという想定の上に成り立っている。

・近代以前は、将来が現在よりも良くなるとは信じられなかった。
・富の総量は減少しないまでも、限られていると信じていた。
・多くの文化で、大金を稼ぐとことは罪悪とみなされていた。
・世界のパイの大きさが変わらないのであれば、信用が生まれる余地はない(信用とは、今日のパイと明日のパイの大きさの差)。
・信用が限られる→資金調達困難→経済成長なし→信用供与のためらい


●拡大するパイ
・科学革命が起こり、進歩という考え方が登場した。
・進歩:私たちが己の無知を認めて研究に投資すれば、物事が改善しうるという見解の上に成り立っている
・進歩の考え方は、経済にも取り入れられた。
・将来への信頼→信用→経済成長


・グローバルなパイが拡大するという信念は、社会に革命的変化をもたらした。
アダム・スミス国富論
「地主にせよ、あるいは職工、靴職人にせよ、家族を養うために必要な分を越える利益を得た者は、そのお金を使って前より多くの下働きの使用人や職人を雇い、利益をさらに増やそうとする。利益が増えるほど、雇える人数も増える。したがって、個人企業家の利益が増すことが、全体の富の増加と繁栄の基本である」
・自分の利益を増やしたいと願う人間の利己的な衝動が全体の豊かさの基本になるというスミスの主張は、人類史上屈指の画期的思想。
・強欲は善であり、個人がより裕福になることは当の本人だけでなく、他の全員のためになる。
→利己主義はすなわち利他主義である
・スミスは富と道徳は矛盾するという従来の考え方を否定した。
→裕福であることは道徳的


・近代資本主義で決定的に重要な役割を担ったのは、新しく登場した倫理観:利益は生産に再投資されるべき
・再投資がさらなる利益をもたらし、その利益がまた生産に再投資されて新たな利益を生む。
・「生産利益は生産増加のために再投資されなくてはならない」


・資本主義は「資本」をたんなる「富」と区別する。
・「資本」を構成するのは、生産に投資されるお金や財や資源。
・「富」は地中に埋まっているか、非生産的活動に浪費される。


・資本主義という新しい宗教は、近代科学の発展にも決定的な影響を与えてきた。
・科学を考慮に入れずに資本主義の歴史を理解することもできない。
・紙幣を発行するのは政府と中央銀行だが、それに見合った価値を生み出すのは科学者。


コロンブス、投資家を探す。
・資本主義は、ヨーロッパ帝国主義の出現にも重要な役割を果たした。
・ヨーロッパ帝国主義こそが資本主義の信用制度を創出した。


・中国、インド、イスラム教世界の社会政治的な制度では、信用は二次的な役割しか果たさなかった。
・宮殿や要塞にいる王や将軍には、商人や商業的な考え方を見下す傾向があった
・支配層は偉大な征服者かエリート官僚やエリート軍人だった。
・税金や奪略により資金調達できた。


・ヨーロッパでは、国王や将軍が商業的な考え方をし始めた結果、商人や銀行家がエリート支配層となった。
・資金調達は税金よりも信用を通じてなされるようになった。
・それにつれて、資本家が主導権を握るようになっていった。


帝国主義の魔法の循環
 信用に基づいた融資→新たな地理上の発見→殖民地→殖民地からの利益→信頼を生む→さらなる信用供与


・投資してくれる人の数を増やし、彼らの被るリスクを減らす
有限責任の株式会社
・株式会社:株式会社が大勢の投資家から資金を集めることで、各自は自己資本の一部を危険にさらすだけで済む。
・西ヨーロッパでは高度な金融制度が発達し、短期間で多額の信用供与を募り、それを民間の起業家や政府が自由に使えるようになった。
・この制度は、どんな王国や帝国よりも効率的に探検や征服に資金提供できた。


・オランダ人は、どのようにして金融制度の信頼を勝ち取ったか?
①貸付に対して期限内の金額返済を厳守し、貸し手が安心して信用供与が行えるようにした。
②司法制度は独立を享受し、個人の権利、なかでも私有財産の権利を保護した。


●資本の名の下に
・資本主義と帝国主義のつながりは、19世紀の間にいっそう強まった。
・株式会社は、自前で殖民地を建設し、統治する必要がなくなった。
・西洋の政府は資本主義の手先になり下がりつつあった。
・政府が大資本の言いなりになった代表例は、イギリス・中国間の第一次アヘン戦争
・アヘン・カルテルは国会議員と政府閣僚に協力なつてがあり、政府に行動を起こすよう圧力をかけた。


・資本と政治の固い結束は、債券市場にも広く影響を及ぼした。
・一国の信用力は、純粋に経済的要因だけでなく、政治的な出来事によっても決まる。
・今日の国家の信用格付は、その国の財政の健全性にとり重要。
・信用格付は国が債務を返済する見込みを示し、純粋な経済データだけでなく、政治的要因や社会的要因、文化的要因まで加味されている。


●自由市場というカルト
・自由市場を信じるのも極端になると無邪気すぎると言わざるをえない。
・政治的な偏見がない市場はありえない。
・市場は、詐欺、盗難、暴力から自力で身を守れない。
・不正行為に対する制裁を法制化して信頼を確保し、その法を執行する警察、法廷、刑務所を設置して維持するのは政治の仕事。


●資本主義の地獄
・君主や聖職者が目を光らせていない完全な自由市場では、強欲な資本主義者は市場を独占したり、労働者に対して結託したりできる。
・強欲な雇用主たちが、労働者を借金の返済のためにただ働きさせたり、奴隷扱いしたりして、彼らの自由を奪いかねない。


・中世末期のキリスト教圏のヨーロッパでは、奴隷制はほぼ皆無だった。
・近代前期にヨーロッパ資本主義が台頭すると、大西洋奴隷貿易が盛んになった。
・暴君や人種差別的なイデオロギー信奉者ではなく、市場原理がこの悲惨な史実の原因だった。
奴隷貿易はどこの国家や政府にも管理されていなかった。
・純粋な営利事業であり、需要と供給の法則に則って自由市場が運営し、出資していた。


・自由市場資本主義は、利益が公正な方法で得られることも、公正な方法で分配されることも保証できない。
・人々は利益と生産を増やすことにとりつかれる、その邪魔になりそうなものは目に入らなくなる。
・成長が至高の善となり、それ以外の倫理的な考慮というたがが外れると、大惨事につながる。
・資本主義は、強欲と合体した冷淡な無関心から膨大な数の人間を死に至らしめた。
・自由市場資本主義は完全無欠にはほど遠い。


・19世紀になっても資本主義の倫理観は改善しなかった。
産業革命は銀行家と資本所有者の懐を潤したが、無数の労働者を絶対的な貧困に追いやった。
・2014年の経済のパイは、1500年のものよりはるかに大きいが、その分配は不平等。
・人類とグローバル経済は発展し続けるだろうが、さらに多くの人々が飢えと貧困に喘ぎながら生きていくかもしれない。