ありのままに生きる

社会不適合なぼっちおやじが、自転車、ジョギング等々に現実逃避する日々を綴っています。

次なる100年 歴史の危機から学ぶこと

水野 和夫 著 「次なる100年 歴史の危機から学ぶこと」メモ

水野 和夫 著
「次なる100年 歴史の危機から学ぶこと」メモ

 

第3章 利子と資本ー数字(利益)が嘘をつくと近代秩序は維持できない
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【まとめ】
・G5の5ヶ国中3ヶ国の長期国債利回りがマイナスとなり、G5のそれが発するメッセージは、近代システム、資本主義システムが持続不可能ということ。
・グローバリゼーションは国境により守られている中間層を国家から切り離し、解体させる「トロいの木馬」の役割を担う。
・近代システムの成立条件が消滅しているので、IT革命は経済成長には貢献せず、「産業革命は人類史上1度限り」。
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★1 いかにして「中心」に利潤を蒐めるのか―進歩がつくりあげたマモン
☆ゼロ金利は「例外」か「常態」か
・日本のマイナス金利は「例外」ではない。
・G5(主要先進5ヶ国)のなかでフランス10年国債利回りが日独に続き2019年6月下旬以降マイナスとなった。
・5ヶ国中3ヶ国の10年国債利回りがマイナスとなり、マイナス金利が多数派、「常態」となった。
・「例外」は米国だけ。
・先進国において魅力的な投資先がないことを反映している。


・G5の長期国債市場が発するメッセージは、近代システム、資本主義システムが持続不可能ということ。


構造改革とは、企業の賃下げを容易化してROEを向上させるためのものだった。
・21世紀以降の日本の内閣は、「資本家のために働く内閣」だった。


・近代の統治形態は国民国家体制が「常態」。
・「例外」状況に当たる帝国化を米国が進めることができるのは、日本国内における近代の「例外」状況、中産階級の犠牲において日本企業が巨額の資金剰余(貯蓄超過)を生み出しているから。


☆「利子率革命」と「利潤インフレーション」はコインの裏表の関係
・米国は自国の生産力(GDP)以上に所得(GNI)が発生し働いた以上に消費できる。
→実力以上の生活を享受できる。
・世界最大の所得収支黒字国の特権。
米帝国の傘下にある国民は消費を我慢して輸出能力を高めるために投資を増やす。
・結果、労働時間が長時間化し、生産力以下の生活しかできない。


・1998年に日本の10年国債利回りが1.125%を下回り、21世紀の「利子率革命」が生じた。
・同時期に米ウォール街発の「ROE革命」が世界中を席巻し、米所得収支の黒字が増大。
・「利子率革命」が原因となり「ROE革命」を招来させた。
・利子と利潤は発生源の段階では区別していなかったが、20世紀の終わりから明確に分離した。
・その約を担ったのがグローバリゼーション。
・グローバリゼーションは米帝国のイデオロギーであり、経済的な暴力装置そのものだった。


☆利益は上に、責任は下に
・貿易黒字の累積が所得収支黒字を生む。
貿易赤字が続けば所得収支が赤字となり所得の一部が海外流出し生活水準が低下する。
・過剰な債務を抱える国は債権国の支配を受け入れる。
自由貿易がすべての国にとりメリットがあるというのは幻想。
・実態は自由貿易はグローバリゼーションと同じく帝国のイデオロギー


・グローバリゼーションは上位1%の人々に富を集中させるために世界の50%の人々および先進国の中産階級の人々から富を奪取するために画策されたもの。


☆近代はその本質からして反近代である
・グローバリゼーションは国境により守られている中間層を国家から切り離し、解体させる「トロいの木馬」の役割を担う。


・先進国の国内にて「中心」と「周辺」のあいだに貧富の線が引かれた。
・前者が後者から富を「蒐集」し、「深い溝」が生まれる。
・日本国内の中心は地域では東京、働き手では「中心」は東京の正規労働者。
・「周辺」は地方であり、非正規労働者


☆進歩は「よりよき未来」をもたらしたのか
・人間は自由時間を獲得して初めて豊かさを実感できる。
・それには、迂回生産手段としての資本が必要。


・資本は都市に投下されるが農村にはされない。
・迂回生産手段としての投資が行われるには、農産物の輸出が増える条件が整っていなければならない。
・日本は耕作面積の狭さで機械化が困難で、その条件が満たされない。


・資本と文明、自由時間の関係を考えると、G5の中で米国、英国、フランスの3ヶ国の文明の進歩は止まっている。
・労働時間の観点で文明の進歩を測ると、日本の文明は遅れた段階で止まっている。
・日本人はドイツ人に比べ、無駄な仕事を5割している。


☆マモンのために建てられたメガロポリス
・資本の「蒐集」なくせいて西欧都市文明は成立しない。
・気候変動による自然災害、新型のウィルスは都市文明、その頂点に立つメガロポリス文明の終わりを意味する。


★2 一体いつまで「不正なものは公正である」と偽り続けるのか―ROE vs. 地代
☆生産性の鈍化と企業の利潤率の上昇
・成熟した経済では、資本と労働の投入量を増やすことは文明の進歩に逆行する。
全要素生産性が重要となる。
全要素生産性:労働と資本の投入を減らして生産物をいかに増やすかの度合いを測る指標


・IT革命は内燃機関の「より速く、より遠く」の延長線上にある。
・21世紀の現在、近代システムが成り立つ条件が消滅しているので、IT革命は経済成長には貢献しない。
・情報革命も18世紀後半以降の「産業革命」の延長線上にあり、「産業革命は人類史上1度限り」。


シュンペーターの利子理論の基礎をなす三つの命題
 第一命題:大きな社会現象としての利子は発展の産物である。
      (発展なくして利子(利潤)はゼロ)
 第二命題:それは企業利潤から流出する。
      (利子は利潤から発生)
 第三命題:それは具体的財貨には結びついていない
      (実物資産が生み出す収益が源泉)

シュンペーターの利子論では説明できないことが日本で起きている