ありのままに生きる

社会不適合なぼっちおやじが、自転車、ジョギング等々に現実逃避する日々を綴っています。

資本主義の終焉と歴史の危機

水野 和夫  著 「資本主義の終焉と歴史の危機」メモ  

 

 資本主義の終焉と歴史の危機を読み終えた。

 資本主義は生まれながらに過剰を求めるシステムで、世界や国家に中心と周辺を作り出し、中心(例:先進国)が周辺(例:新興国)を搾取することで成り立つシステムとのことだ。

 日本のような先進国は、必要なモノがあまねく行き渡り、これ以上成長の余地はなく、投資をしても利潤を得ることはできない。ゼロ金利状態が長く続いていることからも、資本主義の終焉を示しているとのことだ。

 くたばりかけた資本主義に対し、金融緩和や財政出動したところで、バブルの発生・崩壊や過剰設備を引き起こし、一部への富の集中と中間層の没落を招くだけのようだ。

 

 著者も資本主義の次のシステムは何なのかは分からないと言っているが、少なくともこれ以上の「成長」を求めるのは無理があり、資本主義の暴走を抑えつつ、新たなシステムを待つ必要があるようだ。

 

 どっかの国の首相は、あいかわらず「成長」とか新しい資本主義とか寝ぼけたこと言ってるけど(これ以上成長の余地なんてないし、今までの延長線上では無理があることは、みんななんとなく分かってると思う)、思考を違う方向に変えてくれないかな...。

 経済の専門家もどーすりゃいいのか分からんと言っているので、国の政策に期待しても仕方ないのかな。

 

水野 和夫 著
「資本主義の終焉と歴史の危機」メモ

 

第5章 資本主義はいかにして終わるのか
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【まとめ】
・21世紀のグローバル資本主義は、新自由主義の延長線上にあり、ブレーキなき資本主義と化している。
・国家が団結しなければ、資本主義にブレーキをかけることはできない。
・誕生時から過剰利潤を求めた資本主義は、欠陥のある仕組みだったと認めるべき。
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★資本主義の終焉
・資本主義:ヨーロッパの本質的な理念「蒐集」に適したシステム
・西欧は「蒐集」のためのシステムとして資本主義を発明。


・資本主義の本質:「中心/周辺」という分割にもとづき、富やマネーを「周辺」から「蒐集」し、「中心」に集中させること。


★近代の定員15%ルール
グローバル資本主義:国家の内側にある社会の均質性を消滅させ、国家の内側に「中心/周辺」を生み出すシステム。
・資本主義は、誕生以来、少数の人間が利益を独占するシステム。


・1870年~2001年まで、地球の全人口のうちの約15%が豊かな生活を享受。
・世界総人口のうち豊かになれる上限定員は15%前後。
→20世紀までの130年間、先進国の15%の人々が、残りの85%から資源を安く購入し、その利益を享受してきた。
・資本主義は全世界の人々を豊かにできる仕組みではない。


・現代の先進国には海外に「周辺」はない。
・資本は、国内に無理やり「周辺」をつくり出し、利潤を確保しようとしている。
・周辺:アメリカのサブプライム・ローン、日本の労働規制緩和
・世界各国の格差拡大は、グローバル資本主義が必然的にもたらす状況。


★ブレーキ約が資本主義を延命させた
・資本主義が存続できたのは、資本主義の暴走にブレーキをかけた経済学者・思想家がいたから。
 アダム・スミス道徳感情
 カール・マルクス資本論
 ジョン・メイナード・ケインズ
・資本主義はブレーキ役がいないと機能せず、その強欲さゆえに自己破壊する。


新自由主義:あらゆるブレーキを外す
・21世紀のグローバル資本主義は、新自由主義の延長線上にある。
→ブレーキなき資本主義と化している。


★「長期停滞論」では見えない資本主義の危機
・リフレ理論:金融緩和でインフレ期待を創出すれば、経済は好転する。
→貯蓄過剰のもと、需要不足の「長期停滞」に陥っている
・積極財政で国内需要を創出。
 →グローバル資本主義では付け焼き刃の処方箋
  「ゼロ金利、ゼロ成長、ゼロインフレ」時代に、成長を目的とするのは無理


・資本主義が地球を覆い尽くす=地球上どこでも投資に対してリターンが見込めなくなる(ゼロ金利、ゼロ成長、ゼロインフレ)
・資本の自己増殖や利潤の極大化の概念が無効となり、近代資本主義が成立する余地がない。
・成長を求めれば、システム転換に伴うダメージや犠牲が大きくなる


★「無限」を前提に成り立つ近代
・資本主義のもつ固有の矛盾は資本主義の定義自体にある。
・資本主義の定義:資本の自己増殖のプロセス
・資本主義には「目標地点」、「ゴール」を決めていない。
・資本家からみた「地球」は「無限」。
・近代の特徴:「無限」だからこそ、「過剰」を「過剰」だとは思わない。


・民主主義も「過剰」をつくり出すシステム。
・民主主義は大量の物質を必要とする。
・現在の「一部」を将来は「万人」に拡大するという夢の上に科学技術と民主主義は共存している。


★未来からの収奪
・成長を追い求めるために行う経済政策・経済活動は「未来からの収奪」。
時価会計:時価の数字がそのまま決算に反映されるシステム。
・投資かの期待を織り込んで資産価格が形成。
・マーケットは、その将来価値を過大に織り込んで利益を極大化しようとする。
・将来の人々が享受すべき利益を先取りしている。
時価会計に後退は存在しない。
・空間が「無限」であることでしか成立しない。


・マーケットが過剰に反応すればするほどバブルのリスクは高まる。
・弾けたときに巨額の債務が残り、巨額の税負担増加という損失も先送りする結果となる。


★バブル多発時代と資本主義の退化
・資本主義の終焉=近代の終わりであると同時に、西欧史の終わり。
・最大の問題:資本主義をどのように終わらせるか。
 ①むきだしの資本主義を放置した末のハード・ランディング
 ②一定のブレーキをかけてソフト・ランディング


・①の先に待ち受けているモノ:リーマン・ショックを凌駕する巨大なバブルの生成と崩壊。


ハード・ランディング・シナリオ ー 中国バブル崩壊が世界を揺るがす
・中国の過剰バブル
・政府主導の設備投資により、中国の生産過剰が発生。


★デフレ化する世界
中国バブル崩壊後、世界全体のデフレが深刻化、永続化する。
・設備過剰により、原材料も価格下落する。


★ソフト・ランディングへの道を求めて
・資本が国境を容易に超えるとき、国家は足枷になる。
バブル崩壊後には、国家は資本の後始末をさせられる。
・資本が主人で、国家が使用人の関係。


グローバル資本主義の暴走にブレーキをかける:世界国家の想定
・EUは欧州危機で振り回されていて、まだサイズが小さい?
・G20が連携し、巨大企業に対抗する必要あり。
法人税引き下げ競争に歯止め、国際的金融取引に課税するトービン税の導入。
・徴収した税金は、食糧危機・環境機器が起きている地域に還元。
・国境を超えた分配機能をもたせる。
・国家が団結しなければ、資本主義にブレーキをかけることはできない。


★「定常状態」とはどのような社会か
・資本主義にブレーキをかけて延命、ポスト近代に備える準備を整える時間を確保。
・定常状態:ゼロ成長社会
・ゼロ成長=純投資がない
・純投資:設備投資の際、純粋に新規資金の調達で行われる投資
     設備投資全体から原価償却費を差し引いたもの
減価償却の範囲内だけの投資しか起きない。
・買い替えだけが基本的に経済の循環をつくる。


★日本が定常状態を維持するための条件
・定常状態の維持を実現できるアドバンテージを持つのが日本。
・ゼロ金利だけでは定常状態に十分ではない。
基礎的財政収支(プライマリー・バランス)の均衡が必要。


★エネルギー問題という難問
新興国の成長に伴い、資源価格はつりあがる。
・定常状態の実現には、①人口減少を9000万人あたりで横ばいにすること、②安いエネルギーを国内でつくり、原油価格の影響を受けないこと。


★ゼロ成長維持ですら困難な時代
・1000兆円の借金、高騰する資源価格も、放置すればマイナス成長になる。
・マイナス成長社会は、最終的に貧困社会になる。
・成長至上主義から脱却しない限り、日本は沈没する。


★アドバンテージを無効にする日本の現状
・成長主義にとらわれた政策を続けた結果、日本国内もグローバル資本主義の猛威にさらされ続けている。
・金融資産ゼロ世帯:1987年は3.3%、2013年は31%
・格差拡大の処方箋:労働時間の規制を強化、ワークシェアリング
・労働規制を強化、原則的に正社員としての雇用を義務づけ


★「長い21世紀」の次に来るシステム
グローバル資本主義は、社会基盤である民主主義も破壊する。
・民主主義の経済的な意味:適切な労働分配率を維持すること。
・1999年以降、企業の利益と所得は分離
・政府の新自由主義的政策のため、中産階級が没落。
・超資本主義の勝利は、間接的、無意識のうちに民主主義の衰退を招いた。
・国家が資本の使用人になっている。
国民国家の存在意義にも疑問符をつきつけている。


・定常状態への必要条件:ゼロ金利、ゼロ成長、ゼロインフレ
・金融緩和や積極財政でも三点の趨勢は変わらない。


★脱成長
・資本主義の原型:12~13世紀に過剰な金利、リスク性資本の誕生
・利子率こそが資本主義の中核。
合資会社:一回限りの資本主義
・「長い16世紀」から永続型の資本主義へ転換。
・再び資本主義が「バブル清算型」の永続性なき資本主義へ先祖返り。


・誕生時から過剰利潤を求めた資本主義は、欠陥のある仕組みだったと認めるべき。
ゼロインフレ=今必要でないものは購入する必要はない
・消費するかどうかの決定は消費者にある。
・「より速く、より遠くへ、より合理的に」
という近代資本主義を駆動させてきた理念を逆転させ、
 「よりゆっくり、より近くへ、より曖昧に」
と転じなければならない。