ありのままに生きる

社会不適合なぼっちおやじが、自転車、ジョギング等々に現実逃避する日々を綴っています。

次なる100年 歴史の危機から学ぶこと

水野 和夫 著 「次なる100年 歴史の危機から学ぶこと」メモ

水野 和夫 著
「次なる100年 歴史の危機から学ぶこと」メモ

 

第2章 グローバリゼーションと帝国ーグローバリゼーションは資本帝国建設のためのイデオロギーである
----------------------------------------------------------------------------------
【まとめ】
新自由主義の目的は資本蓄積のための条件を再構築し経済エリートの権力回復のための政治的プロジェクトとして解釈可能で、グローバリゼーションと新自由主義はコインの裏表の関係にある。
・バブルが弾けさせるために作られるのは、債務国が返済不能に陥ったとき、債権国から債務国への内政干渉が正当化されるからで、帝国が「世界帝国」をめざせば、バブルの生成・崩壊は永続する。
・21世紀の帝国は貿易赤字でも、グローバリゼーションが貿易黒字の累積で所得収支黒字を維持するメカニズムを一変させたため、対外債務の収益率と対外債務の支払い利子率とギャップにより所得収支黒字を維持可能。
----------------------------------------------------------------------------------
★1近代を招き入れた中世のグローバリゼーション
☆インターナリゼーションに先行していたグローバリゼーション
国民国家が「例外」であり、帝国が「常態」。
・21世紀は帝国の時代に回帰しようとしていると理解すべき。


・資本家や企業経営者は国境にとらわれずに経済活動しようとする。
・グローバリゼーションが主でインターナリゼーションが従。
・グローバリゼーションは前近代的現象、かつポスト近代的な現象でもある。
・インターナリゼーションよりグローバイゼーションのほうが歴史が古い。


・「国境」の「内」と「外」を区別するのがインターナリゼーションであり、その主役は多国籍企業
・その区別をしないのがグローバリゼーションであり、その主役はグローバル企業。

多国籍企業:国や地域ごとに違う製品を、異なる売り方で売る会社
       経営の脳内が国境で仕切られている会社
       「国境」を定めた近代の産物
・グローバル企業:単一化する世界市場のスケールメリットを生かし、
         安くてしかもいい品物を作る企業のこと。
         「国境」を意識しないので近代を前提としていない


・資本主義は元来グローバルを指向するのであり、近代を前提にしない。


・17世紀になり国民国家が力をつけると、グローバリゼーションがインターナリゼーションへと変容していく。
・印刷術は、各国の国語の発展とそれによるラテン語の排除をもたらした。
・結局のところ、文化世界が分割された。
・下部構造である経済活動(出版業)が上部構造の一つである文化を規定した。


☆相性の悪い資本主義と近代主権国家ー16世紀「海と陸の分離」と21世紀「陸の海化」
・21世紀になりグローバリゼーションが陸と海を一本化させた。
・近代の最大の特徴は「海と陸の分離」。
・近代が始まると陸のグローバル化はインターナショナル化へ転じたが、海はグローバル化に向かった。
・資本が国民国家の国境の壁を低くし、陸をグローバル化しようとしている。
・人間が生活する陸が、もともと分割できない海と同じになった。
 →陸の海化


・近代は陸が主で海が従。
・近代の根本原理:「海と陸の分離」
・近代主権国家からみると建前は国民の生活基盤である陸が主で海が従。
・資本主義の本音は海、すなわち陸の海化でありグローバルな資本帝国の建造にある。


・国民からみれば生活水準の向上をめざす国民国家が「常態」。
・資本からみればそれは「例外状況」
・国民生活の向上は資本の利潤率を高めることにはつながらない。
・「例外」と「常態」が併存するのが近代。
・相反する矛盾を解決してくれるのが「経済成長」だった。
・ゼロ金利で「経済成長」ができなくなると、力の強い資本が国民経済をグローバル経済に組み替えようとする。
・資本と国家の関係は一枚岩ではない。
・資本と国家の利害が一致した20世紀の福祉国家は「例外」的存在。


・放置しておけば常に資本は国家を下僕にしようと暴走する。
・それを抑え、政治と経済の乖離を縮める役割を担っていたのが立憲主義と民主主義。
・21世紀になると、政府は国民に自助努力を求め、再び資本に奉仕する国家につくりかえようとしている。


☆直線時間と進歩
・モダニティの示すダイナミズムの三つの源泉
1「時間と空間の分離」
2「脱埋め込みメカニズムの発達」
3「知識の再帰的占有」


・「時間と空間の分離」があって初めて「脱埋め込みメカニズム」が発達する。
・この三つは互いに絡み合い「時間ー空間の拡大範囲を大幅に押し広げ、時間と空間を超えた調整に依存していく。


・リスクはもともと「空間に関わる言葉だった」
・「のちに時間にかわわる言葉となり、銀行や投資業務において、借り手と貸し手の投資の意志決定がもたらすであろう結果の確率を算定することを意味するようになった。
・「より遠く」に、「より速く」といった近代の行動原理を可能にするにはリスクという概念の登場が不可欠だった。


☆11世紀以降、ヨーロッパは「貨幣の時代」へ
・11世紀に「西ヨーロッパが「貨幣の時代」に入った」
・「聖俗両界においては富なくしてはなにもできない時代」になった。
・「11世紀から12世紀にかけての富裕化現象は一部の階層に限られたものではなく、社会全体をおそった大規模なものだった」


☆金持ちの誕生ー資本が都市文明をつくる
・都市が資本を「蒐集」し、その富で文明をつくる。
・貨幣は文明にとり不可欠な他の幾つかの要素。


・貨幣、資本がヨーロッパ文明と結びつくと、世界統一の夢が現実味を帯びる。
・ヨーロッパはいわゆる「資本帝国」に向かう。
・ヨーロッパとは、統一の夢である。
・ヨーロッパの世界統一の夢は古代ローマから受け継いでいる。


・近代および資本主義とは都市文明といい換えるることができる。
・都市はマネーを「蒐集」するマシーン。
・都市の集合体である国家もマネー・マシーンと化す。
・マネー・マシンを抑制する仕組みを導入しておかないと金権政治が横行。
・世界最大の所得収支黒字国である米国は世界最強のマネー・マシン。


☆「中世」が呼び寄せた資本主義
・資本主義のほうが近代よりも歴史が古い。
・資本主義の暴力性は隠蔽されている。
・成長しなくなれば資本主義が有している暴力性が目を覚ます。
 →ショック・ドクトリン
・「無限」の空間を前提にしている限り、「電子・金融空間」で「バブルは3年に一度生成し、崩壊」し、「ショック・ドクトリン」の出番となる。


★2 ポスト近代を招来させる21世紀のグローバリゼーション
・近代社会はあらゆるものを機械(マシーン、メカニズム)に見立てる。
・機械である近代国家は、産業革命と地下資源の発見・利用により、協力な政治的および経済的パワー、火力と生産力を獲得。
・結果、人類史上例をみない「成長の時代」を招来させた。


・15世紀半ば、人間は円環時間を直線時間に変換し、永遠の進歩という概念を受け入れ、成長教に入信した。
・成長の役目は20世紀で終わったとみれば、21世紀は貨幣愛にとらわれない人間精神の進歩の第一歩となり後世の歴史家から評価されるだろう。
・経済成長によろ物質的豊かさを追求する近代社会はリスクコントロールが求められる。
・予測可能な社会でないと、経済成長の原動力である投資ができないから。
・「闘争常態」から脱却すべく国家をつくる。


・純粋に技術的思考のみが革命的であり得る。
・技術的思考はあらゆる社会伝統に対して無関心。
・技術進歩教は近代が生んだ宗教であり、魔術。
・成長こそ神であると信じる技術進歩教は「機械教」に他ならない。


☆グローバリゼーションと資本主義
・「世界市場」を作り出すためのイデオロギーがグローバリゼーション。
・グローバリゼーションは一つの社会的過程。
・その背後にはイデオロギーが隠されている。


・グローバリゼーションの経済的プロセスに限定した定義:「ヒト、モノ、カネの国境を自由に超える移動」
新自由主義者がグローバリゼーションを推進すると、グローバリゼーションはイデオロギー化する。
新自由主義の目的は資本蓄積のための条件を再構築し経済エリートの権力を回復するための政治的プロジェクトとしても解釈可能。
新自由主義は「海賊資本主義」の21世紀版。
・グローバリゼーションと新自由主義はコインの裏表の関係にある。
・21世紀になり「電子・金融空間」で高頻度取引(HFT)を駆使して資本を増やすのがグローバリゼーション。


☆グローバリゼーションとは
・テクノロジーが世界を収斂、標準化に向かわせており、そのプロセスがグローバリゼーション。
・グローバリゼーションは「技術進歩教」と合体して神のような存在になる。
・科学とテクノロジーにより自己増殖する資本を中心に据えた。
・資本を中心に据えることは、16世紀以来資本が「世俗の神」となったことを示す。


アンソニー・ギデンズのグローバリゼーションの定義:遠くに隔たった地域を相互に結びつけていく、そうした世界規模の社会の関係が強まっていくこと。


・インターナリゼーション:特定の地理的位置に関係なく、2ヶ国以上の国民国家の間の相互作用と相互関連のパタンに関するもの。
・グローバリゼーション:国境が事実上なくなる「空間的組織の変容」をもたらし、「社会関係の強化」を進める。
・グローバリゼーションが社会関係を強化するほど、社会は「閉じた世界」に閉じこもる。
 →働く人を社会から排除、資本の社会は狭い「電子・金融空間」に閉じこもる。


☆秘匿されたグローバリゼーションのイデオロギー
・グローバリゼーションに秘匿されているイデオロギー
①グローバリゼーションは、市場の自由化およびグローバルな統合に貢献する。
②グローバリゼーションは非可逆的で、不可避である。
③グローバリゼーションを統括している者はいない。誰のせいでもない。
④グローバリゼーションは誰にとっても利益がある。
⑤グローバリゼーションは世界に民主主義をいっそう広める。


①には政府よりも民間が優れているというイデオロギーが隠されている。
②の主張は人々に強迫観念を植え付ける。
③の主張は市場とテクノロジーがグローバリゼーションを統括している。
グローバリズムの中核に位置する主張。善、悪の重大な規範的問題に対して肯定的な答えを与える。
中産階級を擁する複合的市民社会創出の導き手で、この階級と社会的構造こそが民主主義を促進する。
 →「薄弱」な民主主義概念は、エリート主義的あるいは管理型の、「強度の低い」、「形式的」な市場民主主義モデルを反映するもの。


・グローバリゼーション推進者たちは大手メディアを使い、グローバリゼーションを「善」であり「不可逆的」だと人々
に植え付けるのにやっきになった。
→21世紀はじめにはグローバリゼーションという名の妖怪が世界を席巻。


☆曲がり角のグローバリゼーションを猛スピードで直進する日本
・世界はグローバル化の曲がり角にきている。
・米国の資本流入量は、2007年のピーク時に比べ半減している。
・モノの動きも同様。
・モノ(工場)が国境を自由に超える動きは一段落すると見込まれる。


☆「The Four」は神かマモンか?
・インターナリゼーション:文化・文明において相互依存関係があり、主権国家システムを強化する方向に作用する
・グローバリゼーション:国境を意識しないため、政治、経済、文化などあらゆる面で影響力が一方通行であり、多数国家からなり相互依存関係を前提とすう主権国家システムを弱体化させる。


★3 帝国の時代における支配と被支配の関係ー債務と責務
☆米「帝国」化と日本の「異次元金融緩和」ー日本は米帝国へのマネー供給源
・覇権国は帝国への一里塚であり、目指すは「帝国」。
・覇権国:相手国の外交政策にのみ影響を行使できる国。
・帝国:相手国の外交政策のみならず、内政政策にも影響力を行使できることであり、その権力行使に対して周辺国は拒否できない。
・相手国の内政政策に影響力を行使できるようにするには、グローバリゼーションを推進し、国境を越えるおカネの自由な移動ができるようにすることが最も効果的。


グローバル化を進めるほど、米国を筆頭に世界の金融資産が経済規模に比して大幅に膨張する。
・米国はじめ先進国は自国内に優良投資先がないため、新興国への投資を増やすか国境を越えてM&Aを仕掛ける。
・結果、米国の対外資産が増加すれば、世界の対外債務が追随して増大する。


・資本の自由化でおカネが国境を自由に越えるようになると、ある国の対外債務が増大する
・その反対側では債務過剰となり返済できない国が出てくる。
IMFやECBが返済資金を融資する条件として新自由主義的な構造改革を要求。
・グローバリゼーションとは、IMFを通じて米国のワシントン・コンセンサスが世界に伝搬、米国が帝国化していくプロセスそのもの。
・日本はプラザ合意以降、いちはやくそのプロセスに組み込まれた。


・グローバリゼーションは、資本の自由化であり、その目的は大きな政府の下で低下しつつあった経済エリートの権力を取り戻すこと。


・バブルが弾けさせるために作られるのは、債務国が返済不能に陥ったとき、債権国が債務国に構造改革を強いるなど内政干渉をすることが正当化されるから。
・3年に一度バブルを引き起こすたびに、帝国完成に一歩ずつ近づく。
・帝国が「世界帝国」をめざすならば、バブルの生成と崩壊は永続する。


☆民主「非公式」帝国と専制「公式」帝国のたたかい。
・20世紀の「非公式の帝国」である米国は21世紀には「公式」の帝国になろうとしている。
・公式の帝国のほうが近代が想定する手続きなしに直接相手に権力を行使できるため、資本の蓄積がより効率的に行える。


・「全世界の債権者」が世界の「帝国」として他国の債権を保全する役割を担う代償として他国に「非公式」に内政干渉
する権利を有する。


・21世紀の帝国が20世紀と異なるのは所得収支を黒字にさせる方法。
・「過剰」な生産力を有する帝国は貿易黒字を生み出し所得収支を黒字化する。
・21世紀の帝国は貿易赤字でも、対外債務の収益率と対外債務の支払い利子率とギャップにより所得収支黒字を維持で
きる。
・グローバリゼーションが貿易黒字の累積で所得収支黒字を維持するメカニズムを一変させた。
・米国民の過剰消費体制を是正することなく、過大な貿易赤字を縮小することなく、全世界の債権者として君臨すること
を可能にした。