ありのままに生きる

社会不適合なぼっちおやじが、自転車、ジョギング等々に現実逃避する日々を綴っています。

次なる100年 歴史の危機から学ぶこと

水野 和夫 著 「次なる100年 歴史の危機から学ぶこと」メモ

水野 和夫 著
「次なる100年 歴史の危機から学ぶこと」メモ

はじめに
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【まとめ】
・ノア以来の世界史は「蒐集」の歴史であり、資本主義は歴史上、資本の最も優れた「蒐集」システム。
・「蒐集」の成果を測るのが利子率で、世界史は「利子率」の歴史でもある。
・利子率低下による支配基準の変更や、ゼロ金利・マイナス金利に至るとシステムの変更が必要、すなわち「歴史の危機」。
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★世界史とは「蒐集」の歴史である
・ノア以来の世界史は「蒐集」の歴史である。
・本書のテーマ:「蒐集」を軸とし、市場がゼロ金利のメッセージをどう読み解くか。
・資本主義は歴史上、資本の最も優れた「蒐集」システムであるという認識から出発する。


・蒐集の歴史はノアの方舟のノアから始まった。
・古代帝国:土地を蒐集
 中世キリスト教:霊魂を蒐集
 資本主義:資本を蒐集
・人間は目に見える富を「蒐集」してきた。

 

★歴史における三つの法則
<「蒐集」の歴史の三つの法則>---
第一法則:世界史は「蒐集」の歴史である。
第二法則:いかなる基準で「蒐集する」側と「される」側が分類され、「蒐集する」側の支配基準の正当性基準に関する法則。
第三法則:支配の正当性が崩壊し、「蒐集」システムが機能不全に陥り「歴史の危機」が起きるプロセスを定式化したもの。
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・「蒐集」の成果を測るのが利子率。
→世界史は「利子率」の歴史。
・利子率低下による支配基準の変更(第二法則)や、ゼロ金利・マイナス金利までに低下すると、システムの変更が必要。
・そのときが「歴史の危機」(第三法則)。


・資本主義:資本を自己増殖させるシステム
・利子率:資本の増殖率を測る尺度
・ゼロ金利の長期化=実物投資空間では資本蒐集不可能。
・「蒐集」の歴史が終焉 → 最も「蒐集」に優れた資本主義も終わる


・本書でいう「蒐集」は、実物投資により資本を増やす意味。
・資産市場における資産と資産の交換=「電子・金融空間」における投機による資本増殖ではない。


・実物投資による資本「蒐集」:雇用と所得は増加、国民生活水準が向上、近代主権国家システムのもとで社会秩序が維持。
・「実物投資空間」から「バーチャル空間」へと資本蒐集の場が移るとき、「深い割れ目」が起きる。


・B.C.3000年以降、既存の「蒐集」の仕組みが機能不全に陥ったとき、「歴史の危機」が起きた。
・一度目:476年のローマ帝国の崩壊時
・二度目:長い16世紀
・三度目:フランス革命普仏戦争まで
・四度目:1971年以降


・米国の対外政策は、いかに自国の債務国転落を阻止するかが基本。
・米国の所得収支赤字国への転落阻止の政策がグローバリゼーションであり、バブルの生成と崩壊の繰り返し。


・プラス金利のときは実物投資により資本を蒐集。
・マイナス金利では資産と資産の交換により資本の増強をはかる。
・実物投資の資本の蒐集は国民の生活水準向上につながる。
・資産交換の資本の蒐集では貧しい人々が「蒐集」の対象になる。
→99%の人々、国民国家の「危機」となる。


★資本主義の根本的矛盾ー無限の空間と有限の地下資源
・近代=「無限空間」を前提とし、法人格を有し永遠の命を獲得した営利法人が資本を無限に「蒐集」する(増やす)資本主義のうえに成り立つシステム。
・このシステムがフル稼働するようになったのは、18~19世紀に始まった産業革命以降。
・資本の成長は地下資源に依存するようになり、地上の土地に制約されなくなった。


産業革命前:自然エネルギーに頼っていたため、人口増にブレーキがかかった。
化石燃料の使用で機械の高速回転により大量生産が可能となり、効率化を促した。


・ゼロ金利は売り上げに関して需要が飽和(限界収益逓減の法則)しているからであり、コスト面からはエネルギー価格が高くなっていく(限界費用逓減の法則)。
・ゼロ金利ゼロインフレの日本は、数十年後の世界を先取りしている。


・21世紀は「よし近く、よりゆっくり、より寛容に」を基本原理としてシステムになる。
・この原理は中世社会の原則だった。


・近代は「より遠く、より速く、より合理的に」行動することで経済成長をはってきた。
・地下資源である化石燃料に全面依存し、空間が無限に存在することを前提としてきた。
化石燃料を無制限に使える時代は終わった。
グローバル化の結果、地球は「閉じた空間」となった。
→ゼロ成長がせいぜい
・「より近く」が原則となれば、政治的には、極力相互依存しない「閉じた帝国(地域帝国)」の時代となる。


・「より遠く、より速く」の行動原理により、近代は「膨張」の時代。
・「より遠く、より速く」が不可能となれば、「収縮」の時代にならざるをえない。
・「収縮」はデフレとマイナス金利をもたらし、次にゼロインフレ、ゼロ金利、ゼロ成長の「定常状態」となる。
・「収縮」を「より速く」進めれば、激震をともなうショックが発生し、秩序が乱れる。
→「収縮」のプロセスは「よりゆっくり」進めなければならない。


・「膨張」から「収縮」へのプロセスにおいて既存システムが機能しなくなり、新しいシステムが誕生しつつあっても人々の信頼をすぐには獲得できない。
→「歴史の危機」となる。
・「より寛容に」の姿勢で激変による混乱を緩和しなければならない。


★世界史に楔を打ち込んだ「平成」
・「独創的な技術」という発想が近代の残滓にとらわれている証拠。
・近代が終わりつつあるのにそこにしがみつく姿勢こそが「敗北」。
・ゼロ金利時代に株式時価総額企業価値を測るという思考自体が時代遅れ。
・陳腐化した経済学の奴隷の典型例が日本の財界人トップ。


★本書の趣旨と構成
・本書の趣旨:「例外」が「常態」となったとき、近代の常識を疑ってみること。
・本書の結論:危機を救済してくれるのは芸術である。