ありのままに生きる

社会不適合なぼっちおやじが、自転車、ジョギング等々に現実逃避する日々を綴っています。

サピエンス全史

ユヴァル・ノア・ハラリ 「サピエンス全史」メモ 

サピエンス全史 上下合本版 文明の構造と人類の幸福

サピエンス全史 上下合本版 文明の構造と人類の幸福

 

 ユヴァル・ノア・ハラリ 「サピエンス全史」メモ

第4部 科学革命

第17章 産業の推進力

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【まとめ】
・熱を運動に変換する内燃機関は、人類の輸送手段に大変革をもたらし、石油を液状の政治権力に変えた。
・人間至上主義による家畜の工業化は、家畜動物たちの社会的欲求や心理的欲求を無視し、彼らにとって悲劇。
・現代資本主義に消費主義は不可欠で、エリート層と大衆間には分業がある。
 ⇒富める者の至高の戒律は「投資せよ!」、それ以外の人々は「買え!」
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・経済成長にはエネルギーと原材料が必要で、どちらも有限。
・エネルギーと原材料がなくなれば、システム全体が崩壊する。
・両者が有限なのは理論上のことにすぎない。
・過去数世紀の間に人類のエネルギーと原材料使用量は爆発的に増えたが、使用できる量は”増加”した。
・どちらか一方の不足で経済成長が減速する恐れが出るたび、科学とテクノロジーの研究に資本が流れ込んだ。
・投資は必ず実を結び、既存の資源のより効率的な利用法、新種のエネルギーと原材料が見つかった。


・1700年には世界の輸送手段の製造業界は木と鉄に頼っていた。
・今日ではプラスティックやゴム、アルミニウム、チタンといった新たに発見された多様な材料が使える。
・1700年には荷車は主に大工と鍛冶屋の筋肉の力で造られていた。
・今日では石油を使った燃焼機関や原子力発電所から動力を得ている。
・同じような革命がほぼすべての産業分野を席巻した。
 →「産業革命


産業革命以前、人類は多種多様なエネルギー源を利用する方法を知っていた。→木、風力、水車
・これらには、明確な限界と問題があった。
・木はどこでも手に入らない、風は必要なときに吹くとはかぎらない、水力は川のそばに住んでいるときしか役立たない。


・大きな問題は、一つのエネルギーを別の種類のエネルギーに変換する方法がわからなかったこと。
・人類はそのようなエネルギー変換の離れ業をやってのける機械を一つしかもっていなかった。
 →肉体
・筋肉の力がカギだった。
有機的筋肉機械の燃料となるエネルギーは、単一の源泉、植物に由来。
・植物が蓄えた後、筋肉の力に変換された太陽エネルギーを燃料としていた。

・人類史は、植物の成長サイクルと太陽エネルギーの変化サイクル(昼と夜、夏と冬)という、主に二つのサイクルに支配されてきた。


●熱を運動に変換する
・熱を動きに変換するという大躍進は、9世紀の中国で火薬が発明された後に起こった。
・火薬の発明から実用的な大砲の開発までは、約600年が過ぎていた。
・大砲ができたあと、熱を運動に変換するという発想を実現するまでに、さらに三世紀が過ぎた。
・新しいテクノロジーは、1700年ごろ、イギリスで生まれた。
・ポンプで炭坑の坑道の底から水をくみ出すために蒸気機関が使われた。
蒸気機関の共通原理:
①石炭のような燃料を燃やし、生じる熱でお湯を沸かし、蒸気を生み出す。
②蒸気は膨張するときにピストンを押す。
③ピストンが動き、ピストンにつながった物もいっしょに動く。
→熱を運動に変換する


・その後の数十年間に、イギリスの起業家たちは蒸気機関の効率を上げ、織機や綿繰り機につないだ。
・織物生産に革命がもたらされ、安価な織物を大量生産できるようになった。
・重要なのは、蒸気機関を炭坑の外の世界に引っ張り出すことで、大きな発想の壁が崩れたこと。


・1852年:史上初の蒸気機関車(石炭を満載した炭坑の貨車に蒸気機関をつなぎ、20kmほどの線路に沿い、炭坑から最寄りの港まで貨車を引いた)
・1830年9月15日:リヴァプールマンチェスターを結ぶ、初の営利鉄道路線が開業
・20年後、イギリスには何万kmもの鉄道線路が敷設された。
・以降、人々は機械と機関を使えば、一つの種類のエネルギーを別の種類のエネルギーに変換できるという発想にとりつかれた。


・どんな種類の質量もエネルギーに変換できる(E=mc^2)とアインシュタインが結論してから40年の間に、原子爆弾で広島と長崎が壊滅させられ、世界中に原子力発電所が続々と建設された。


・決定的に重要な発明は、内燃機関の発明。
内燃機関は一世代のうちに、人類の輸送手段に大変革をもたらし、石油を液状の政治権力に変えた。


・石油よりもさらに驚異的なのが、電気の歴史。


●エネルギーの大洋
産業革命は、エネルギー変換における革命だった。
・この革命は、私たちが使えるエネルギーに限界がないことを立証してきた。
・唯一の限界は私たちの無知により定められることを立証してきた。
・数十年ごとに新しいエネルギー源を発見するので、使えるエネルギーの総量は増える一方。


・この世界でエネルギーが不足していないのは明らか。
・私たちに不足しているのは、私たちの必要性を満たすためにそのエネルギーを利用し、変換するのに必要な知識。
・地球上の化石燃料に蓄えられているエネルギーの量は、太陽が毎日無料で与えてくれるエネルギーの量に比べれば微々たるもの。
・太陽エネルギーのうち私たちに届くのは、毎年376万6800エクサジュール。
・世界中の植物が、光合成の過程を通して捉えるのは、3000エクサジュール。
・人間活動と産業を合わせても、消費するエネルギーは約500エクサジュール。
・これは地球が太陽から90分で受け取るエネルギー量でしかない。


産業革命の間に、途方もないエネルギーの大洋に接して生きていることに気づきはじめた。
・これまでよりも性能の良いポンプを発明しさえすればよい。


・エネルギーの利用と変換方法を学ぶことで、原材料不足も実質的に解消できた。
・以前には近づき難かった原材料の鉱床を開発したり、ますます遠い場所から原材料を輸送したりできるようになった。
・科学の飛躍的発展により、フラスティックなどの新しい原材料を発明したり、シリコンやアルミニウムといった、以前は知られていなかった天然材料を発見できた。


●ベルトコンベヤー上の命
産業革命により人類の生産性は爆発的に向上し、それが真っ先に実感されたのが農業だった。
産業革命は、何よりもまず、第二次農業革命だった。
・過去200年間、工業生産方式は農業の大黒柱になった。
・動植物も機械化された。
・人間至上主義の宗教により、家畜は痛みや苦しみを感じる生き物とみなされなくなり、機械として扱われるに至った。
・家畜は工場のような施設で大量生産されることが多い。
・彼らは巨大な製造ラインの歯車として一生を送り、その生存期間の長さと質は、企業の損益で決まる。
・業界は、動物たちを健康で良い栄養状態を保配慮をするが、彼らの社会的欲求や心理的欲求には本来関心を持たない。


・大西洋奴隷貿易がアフリカ人に対する憎しみに端を発したわけではないのと同じで、今日の畜産業も悪意に動機づけられていない。
→無関心が原動力
・卵や牛乳、食肉を生産したり消費したりする人の大半は、自分が飲食しているもののもとである動物の運命について、立ち止まって考えることは稀。
・哺乳類や鳥類には複雑な感覚構造と感情構造があることは立証されている。
・彼らは身体的苦痛を感じるだけでなく、感情的苦痛も被りうる。
・自然界で形作られた欲求は、生存と繁殖に必要なくなったときでさえ、以前として感じられる。
・工業化された農業の悲劇は、動物たちの客観的欲求を満たすことには心を砕くのに対し、主観的欲求は無視する点にある。


・ほぼすべての社会では、農民が人口の9割以上を占めていた。
・農業の工業化以降は、少数の農民で多くの人口を養えるようになった。
・今日のアメリカ合衆国では、農業で生計をたてる人は人口の2%。
・その2%でアメリカの全人口を養い、余剰分を国外に輸出している。
・農業の工業化がなければ、都市での産業革命は起こらなかった。
・今、人類史上初めて、供給が需要を追い越し始めた。
・全く新しい問題が生じた。
→いったい誰がこれほど多くのものを買うのか?


●ショッピングの時代
・現代資本主義は、存続するために、たえず生産を増大させなければならない。
・製品を買ってくれる人がいなければ、製造業者も投資かも破産する。
・新しい種類の価値体系が登場した。
→消費主義


・歴史を通じて、ほとんどの人々は欠乏状態で生きてきた。
・倹約こそが彼らのモットー。
・消費主義は、ますます多くの製品やサービスの消費を好ましいことと見なす。
・倹約は病気であり、治さなければならない。


・消費主義の価値体系が隆盛を誇る様子は、食品市場に最も顕著に表
れている。
・今日の豊かな世界では、致命的な健康問題の一つが肥満。
・犠牲者は豊かな人よりも、貧しい人のほうが多い。
・肥満は消費主義にとり、二重の勝利。
・人々は食べ過ぎ、その挙げ句、減量用の製品などを買い、経済成長に二重に貢献している。


・実業家の資本主義体系(利益は消費してはならず、生産に再投資すべき)と消費主義の価値体系の折り合いをどうすればつけられるか?
・今もエリート層と大衆の間には分業がある。
・中世ヨーロッパ:貴族階級の人々は派手に浪費して贅沢をし、農民たちはわずかのお金も無駄にせず、質素に暮らした。
・今日状況は逆転した:豊かな人々は細心の注意を払って資産や投資を管理しているのに対し、裕福でない人々は必要のない自動車やテレビやを買って借金に陥る。
・資本主義と消費主義の価値体系は、表裏一体。
・富める者の至高の戒律は「投資せよ!」であり、それ以外の人々の至高の戒律は「買え!」。


・資本主義・消費主義の価値体系は、別の面でも革命的。
・以前の倫理体系の大半は、人々に厳しい条件を突きつけた
(楽園を約束されたが、それは思いやりと寛容さを養い、渇望と怒りを克服し、利己心を抑え込んだ場合に限られた)
・ほとんどの人にとり、これは難しすぎた。
・今日ではほとんどの人が資本主義・消費主義の理想を首尾よく体現している。