ありのままに生きる

社会不適合なぼっちおやじが、自転車、ジョギング等々に現実逃避する日々を綴っています。

不確実性を飼いならす:予測不能な世界を読み解く科学

イアン・スチュアート  著 徳田 功 訳  「不確実性を飼いならす」メモ  

 

 日経サイエンスのブックレビューにこの本が載っていて、面白そうだったので読んでみることにした。

 

 この本の著者(イアン・スチュアート)の名前をどこかで見たことがあるような気がしたら、学生時代に読んだ「カオス的世界像」の著者だった。

 一時カオス系や複雑系に興味があって、その関係の本を読んでいたことがあったなあ。

 

 「不確実性を飼いならす」の原題は「DO DICE PLAY GOD?」、「カオス的世界像」の原題は「DOES GOD PLAY DICE?」なので、二つの著書は関連があるようだ。

 「不確実性を飼いならす」を読み終えたら、「カオス的世界像」をもう一度読んでみるか。

 

イアン・スチュアート著 徳田 功訳
「不確実性を飼いならす 予測不能な世界を読み解く科学」メモ


1 不確実性の六つの世代
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【まとめ】
・不確実性は人間の無知を表しているのではなく、世界の構成要素。
・不確実性の六つの世代
 第一世代:不確実性は神の御旨 
 第二世代:不確実性は無知による一時的なもの
 第三世代:不確実性に関する数学の発展(確率論と統計学
 第四世代:不確実性は量子世界がもつ根本的性質
 第五世代:不確実性は決定論的なシステムにも存在する(非線形力学、カオス理論)
 第六世代:不確実性はある程度理解が進み、予測・対処・応用可能であるが、未解決問題も多い
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・近似的に正しい規則・モデルを見つけることができる。
・それらはすべて暫定的なもの。
・新しい証拠の発見により新しい規則に取って代わる
・カオス理論:システムが厳密な規則に従っていても、その動きを予測することは不可能。
量子論:物質の大きさが最小となるレベルの世界では、宇宙は本質的に予測不可能。
・不確実性は単に人間が無知であることを表しているのではない。
→不確実性は、世界の構成要素


<不確実性の第一世代>
・未来について懸念するのは、時間に縛られた生き物だから。
・時間の流れの中で自分がどこにいるかを強く意識し、将来起こることを予想し、その予想に基づいて行動する。
・脳は意志決定を行う機械として、未来を推量する。
・脳は世界の仕組みを簡略化した内部モデルを構築
・自分の知っていることをモデルに入力し、その結果を観察する。
・この類のモデルでは、世界の仕組みを正確に記述する必要はない。
・このモデルが示すのは、世界の仕組みに関する信念。
・不確実性に対処するために人間が最初に学んだこと
 →超自然的な存在が世界を支配していると考え、その存在について体系的な信念を作り上げること。
・人間は信念の体系を発明し、自然の不確実性を神の御旨として説明づけた。


<不確実性の第二世代>
・神々に結びつけた信念体系は、何も説明しない。
・観測に基づく証拠に裏付けられた論理的推論に基づいて世界を考え始めた。
・科学により、考えているほどに自然は不確実ではないことがわかってきた。
・先行きがわからず不確実なのは、無知による一時的なもの。
・十分な努力と思考により、すべては明らかにできる。


<不確実性の第三世代>
・科学は、ある事象の確かさ、不確かさを定量化する方法を提供。
・不確実性に関する研究は新しい数学分野になった。
・確率論の発展は、賭博師と天文学者による。
・確率論は物理の基本原理にも影響を及ぼすようになった。
・確率論の応用として統計学が生まれた。
・確率論とその応用である統計学が、不確実性の第三世代を支配。


<不確実性の第四世代>
・コイン投げの力学的メカニズムは決定論に基づく。
・原理的には、決定論的プロセスは、すべて予測可能。
・基礎物理学における新発見により、この見方は修正が必要。
・必要とする情報が入手できない場合がある。
・世界について二つの見方が必要。粒子と波(波動)。
・粒子:物質の微少な塊で、局在化しており、正確に定義できる。
・波動:移動する擾乱で、広い空間に広がっていく。
・光は波なのか、粒子なのか? →両方
・どちらのかは実験に依存。
量子力学:粒子の位置・速さといった、古典物理学では確実とされたものがすべて、原子よりも小さなスケールの物質にはあてはまらない。
・量子の世界は不確実性で満たされている。
・量子世界に属する粒子は、ぼんやりと広がる確率の雲のようなもの。
・量子の世界は真に不確実からできており、欠けている情報はなく、それい以上深いレベルで記述するこもできない。


<不確実性の第五世代>
決定論では、与えられた現在の状態から可能な未来はただ一つ。
決定論的なシステムであっても予測困難な問題が生じる。
 →非線形力学、カオス理論
・科学の予測は、一定の条件下で、ある事象が起こることを予測するものであり、”いつか”を予測するものではない。
・物事の詳細な仕組みが自明であっても、いつ起きるかはわらない。


<不確実性の第六世代>
・種々の不確実性があり、①~③の組み合わせである程度まで理解可能。
 ①さまざまな形の不確実性に関する数学的理解
 ②パターン・構造解析
 ③不確実性を定量化する複雑なアルゴリズム
1.進歩した技術の活用で、より正確な予測が可能。
2.予測の信頼性を考慮することで、不確実性に対処可能。
3.不確実性が役立つ場合もある。
 ・機器や作業効率の向上に、制御可能な程度の不確実性を故意に付加。
 ・最適解を見つけるための数学的手法では、ランダムな擾乱を用いる。


不確実性はどこまで解明できるか?
・未だ未解決な難問は多くある。
 世界金融の仕組み
 伝染病の広がり方
 新しい病気がいつどこでその姿を現すか
 地震・火山活動


・量子世界の理解が深まると、量子論に内包されているパラドックスが解けるかもしれない。
古典物理学で発見された新しい現象は量子の振る舞いに酷似している。
・その仕組みは既約な(単純かできない)ランダムネスとは関係がない。