ありのままに生きる

社会不適合なぼっちおやじが、自転車、ジョギング等々に現実逃避する日々を綴っています。

直立二足歩行の人類史 人間を生き残らせた出来の悪い足

ジェレミー・デシルヴァ 著  赤根洋子 訳「直立二足歩行の人類史」メモ

ジェレミー・デシルヴァ 著  赤根 洋子 訳
「直立二足歩行の人類史」メモ

第1部 二足歩行の起源
第5章 アルディとドナウ川の神
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【まとめ】
・人類進化の行進図(チンパンジーのようなナックルウォークするサルから段々と人間に変化していく絵)は間違いかもしれない(進化の向きが逆)。
・発掘された化石より、人類と大型類人猿の共通祖先は、直立して木の上を歩いていたらしい。
・共通祖先の二足歩行から、類人猿はナックルウォークへ進化し、人類の二足歩行は進化していないかもしれない。
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・1994年、エチオピアで440万年前の化石、アルディピクス・ラミダスが発見された。
アウストラロピテクス属ではなく、まったく新しい属の化石だった。
・このホミニンはルーシーよりも遙かに類人猿に近かった。


・「アルディ」と呼ばれる部分骨格の比較的小さな犬歯から、アルディは大人のメス。
・生きていたのは448万年~438万5千年まで、10万年の幅がある。
→アルディが生きていたのはルーシーよりも100万年以上前。


・当時アフリカでは森林が後退、草原が拡大中。
・アルディが暮らしていたのは森林に覆われた環境だった。
・アルディは時折、二足歩行していたらしい。
→直立二足歩行は森林で始まった。


・アルディの骨は、樹上生活に適応していたことを示す。
・腕は長く、長い指は湾曲。
・類人猿のような足の親指は、手の親指のように横に突き出している。
・アルディの手や手首の骨には、ナックルウォークする類人猿のような特徴が見られない。
・骨盤の形から、二本足で歩いたときに身体のバランスを保ことができたと思われる。


・アルディの足関節は類人猿のそれに似る。
・ヒトのように足を自然に地面につてけて立つことはできなかった。
・ヒトより柔らかい足関節のおかげで、木登りのときに足の指で幹をつかめた。
・足の親指側は、ものを掴むのに適した、長く横に張り出した親指を含めチンパンジーに似る。
・小指はヒトの足に似る。
・二足歩行時、彼女の足は固定され、地面を押し返す硬い足底を形成しただろう。


・ヒトの指は小指側から親指側に向かい進化した。
・足の小指側は、人類進化の早い段階で(アルディピクスの時代までに、さらに早い時期から)ヒトに近い形を獲得。
・足の親指側はルーシーの時代までに変化。
・ヒトの足の親指は、最近のほんの200万年の間に短く、真っ直ぐになった。


・アルディの足の指は、最初期の二足歩行ホミニンが足の小指側で地面を蹴り出していた。
・彼らの足指は手の親指と同様、横に突き出していたため、足の親指に体重を移動させずにい歩いた。
・二足歩行には効率悪いが、大半の時間を樹上で過ごし、地面に下りて餌場から餌場へ二本足で移動してたので、そのような歩き方で妥協した。


・直立二足歩行と木登りを両立させていた初期ホミニンの発見は驚くことではない。
・600万年前のオロリン、別種のアルディピクスの化石で見つかっている。
・真に驚くべきはアルディピクスを通じて二足歩行の起源についての考え方が転換したこと。


★人類進化の行進図
・人類進化の行進図:チンパンジーが段々と人間に変化していく絵
・人類がナックルウォークするチンパージンから直線的に進化した
→これは間違い。
チンパンジーはわれわれの祖先ではなく、いとこ。
チンパンジーが600万年の間変化しなかったことは考えられない。
・進化するにつれて人類は段々と背筋が伸び脳が大きく、体毛も薄くなるように描かれる。→これも間違い
・こうした変化は同時に始まったわけではなく、変化のスピードもまちまち。


・最後の共通祖先がナックルウォークしていなかったとすれば、チンパンジーやゴリラはナックルウォークを独自に発達させたことになる。
・アルディピクスの化石は、人類の祖先が最初からナックルウォークしていなかったことの明確な証拠?
・ヒトの骨格は原始的で、大型類人猿の側が進化した?


・二足歩行するホミニンがナックルウォークする動物から進化したのでなければ、われわれは何から進化したのだろう

→アフリカの類人猿とホミニンは、尾のない大型のサルのようなものから枝分かれした?
・サルや多くの原始的な類人猿が人間と同じように直立できる。
・現世に大型類人猿は木登りは得意だが、膝や腰を曲げずに直立できない。
・アルディピクスは二本足で立って歩くとき腰を屈めていなかった。
・われわれと同じような歩き方はできなかったが、われわれと同じように直立していた。


・アルディピクスが生きたのは450万年前。
・共通祖先まではまだ200万年近くある。
・アルディよりも古い人類の祖先を見つけられるだろうか?


★ドイツで発見された新種
・類人猿は2千万年前までにアフリカで進化。
・遺伝学的証拠より、現世類人猿が共通祖先から枝分かれしたのが2千万年前。
・最古の類人猿の化石もほぼ2千万年前のもの。
・過去には非常に多くの種類の類人猿がいた。
・いくつかの点で現世類人猿に似ていた。
・尾がない、果実を食べていた、成長期間が長かった。
・それらの大半は現世類人猿と異なり、前肢で木の枝からぶら下がることができず、尾のない大型のサル同様、四本足で樹上を移動。


・1500万年前、アフリカの類人猿は減少し始めた。
・赤道直下のアフリカの大森林が地中海沿岸へと北上した。
・ヨーロッパの森は、果実を餌とする現世大型類人猿(および人類)の祖先たちに豊かな環境を提供。
・太古のヨーロッパの類人猿は多様化し、多くの種が出現。


・果実が少なくなるヨーロッパの冬を類人猿はどのように生き延びたのか?
・遺伝学と生化学がその答えを教える。


・尿酸は細胞が特定の化合物を分解するときにできる。
・尿酸は尿とともに対外に排出される。
・霊長類を含むほとんどの動物は、尿酸が血液中にたまったとき、それを分解するウリカーゼという酵素をつくることでも尿酸を除去する。
・ヒトはウリカーゼを作り出すことができない。
・遺伝子の突然変異により作れない。
チンパンジーボノボ、ゴリラ、オランウータンもウリカーゼを作れない。
・分子遺伝学者はこの遺伝子が変異した時期を、人類と大型類人猿との最後の共通祖先が生きていた1500万年前と推定。


・ウリカーゼが作れないことにより、通風にかかりやすい。
・尿酸には、果糖が脂肪に変わるのを助ける働きがある。
・ヨーロッパの森で暮らす類人猿にとり、冬の日照不足により食料が乏しくなったとき、脂肪を蓄えていることは役立ったはず。
・アフリカの熱帯雨林にはそのような問題は存在しない。
・それを解決するための進化的変化は温帯の南ヨーロッパの森でしか起こらなかったはず。


・人類の祖先が熟れすぎて発酵した果実を好むようになったことを遺伝学的証拠は示している。


・発酵した果実は高カロリー。
・それはエタノール代謝できればの話。
代謝できなければ体に毒。
・ヒトはエチルアルコールを分解するのに不可欠な酵素を作り出す遺伝子を持つ。
チンパンジーボノボ、ゴリラにもこの遺伝子はあるが、オランウータンにはない。
・アフリカの類人猿とヒトだけにこの遺伝子がある。
→われわれとアフリカの類人猿に共通する最後の祖先が食糧難の時期に、森の地面に落ちて発酵した果実を食べて生き延びたことを示唆。


・中新世末期に気候が寒冷化・乾燥化すると、類人猿たちは地中海の温帯の森ではいきられなくなり、絶滅した。
・その前に人類とアフリカの類人猿に共通する最後の祖先が誕生していた。
・森林の端がアフリカへと南下したいった頃、チンパンジーとゴリラとヒトの祖先が誕生。


・この太古の類人猿はどんな姿をしていたのだろうか?
ダヌビウス・グッゲモン:ドイツ南部のバイエルンで発掘された、1100万年以上に生息していた中新世の類人猿の新種
ダヌビウスは二足歩行していた。
ダヌビウスの脛骨上端はヒトのそれのように平ら。
 →膝を伸ばして類人猿よりもまっすぐ立てるはず。
・ヒト以外の現世霊長類は脛骨の下端が傾斜している。
・そのため足が内側に向き、足で木の幹や枝をつかみやすい。
・この傾斜により膝と膝が離れ、類人猿はO脚。
・ヒトの足首の関節には傾斜がなく、膝を合わせて真っ直ぐ立てる。
ダヌビウスの足首はヒトのそれに似ていた。
・ルーシーの足首に似ていた。
ダヌビウスの脊柱はS字カーブを描いていた。
ダヌビウスは1100万年前、直立して木の上を歩いていいた。
・二足歩行は地面に下りてからではなく、木の上で始まった。


★樹上の二足歩行?
・東南アジアの熱帯林に生息するギボンは、その長い腕と手を使い、枝から枝へとすばやくとび移る。
・ギボンの腕は非常に長く、身体を屈めずに手が地面につく。
・腕が長くて細いため、腕に体重をかけすぎると骨折の危険がある。
・ギボンは地面に下りると腕を上げて二本足で走る。
・樹上にいるときも綱渡りをする人のように腕バランスを取りながら枝の上を歩く。


・ヒトとチンパンジーとゴリラが共通の祖先から枝分かれした時代に生きていた、ナックルウォークする大型類人猿の化石は見つかっていない。
・見つかっているのは、枝から腕でぶら下がることができ、直立姿勢を取ることが可能な柔軟な背中を持つ、比較的小さな類人猿。


・ルダピテクス・フンガリクス:ハンガリーで発見された1000万年前の化石類人猿。
・ルダピテクスは頭骨や歯の形状から大型類人猿の祖先と位置づけられる。
・その骨盤は大型類人猿らしくない。
・多くの点でフクロテナガザル(ギボンの中で最大の種)に似る。
・骨盤形状から、ルダピテクスは現世大型類人猿よりも効率的に二足歩行可能だった。
・木の上で二足歩行していたのはダヌビウスだけではなかった?


・人間は四本足から二本になったのかと考えるのが間違い。
・疑問に思うべきは、なぜ人類の祖先はそもそも手をついて歩かなかったか。


ダヌビウスが教えてくれること。
トゥーマイが生きていたのは700万年前。
・ヒトとチンパンジーが共通祖先から枝分かれしたのが650~550万年前。
・二足歩行していた可能性のあるトゥーマイが生きていたのはそれより前の時代。
・それはホミニンが進化する以前の、ヒトの系統が存在しなかった時代。
・ヒトとアフリカの大型類人猿に共通する祖先が現在のチンパンジーやゴリラよりも二足歩行が得意だったとすればつじつまがあう。


ダヌビウスの化石は、ヒトと類人猿の共通祖先が木の上で二足歩行していたことを示しているかもしれない。

 

・二足歩行はナックルウォークから生まれたのではないかもしれない。
・「人類進化の行進図」は方向が逆だったかもしれない。
・人類はナックルウォークしていた祖先から進化して二足歩行するようになったのではない。
・ナックルウォークする現生類人猿のほうが二足歩行していた祖先から進化した。


・ヒトの手は過去600万年の間に驚くほどわずかしか変化していない。
チンパンジーやその他の類人猿は木から落ちないように進化し、指が長くなった。