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哺乳類前史 起源と進化をめぐる語られざる物語

エルサ・パンチローリ 著 的場和之 訳「哺乳類前史」メモ

 

エルサ・パンチローリ 著  的場和之 訳
「哺乳類前史」メモ

第9章 中国発の大発見
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【まとめ】
・モルガヌコドン類のあとに現れた初期グループのひとつがドコドン類で、哺乳網の共通祖先よりも前の時代に系統樹から分岐した側枝で、哺乳形類に含まれる。
・哺乳形類のドコドン類は、より洗練された姉妹群である哺乳類よりもずっとシンプルだと考えられてきたが、哺乳類とほぼ同じ複雑な構造の歯を、哺乳類よりも先に進化させた。
・ドコドン類は、地中生活・樹上生活・半水性ニッチ・滑空性などへ高度に適応し、中生代哺乳類にまつわる神話を打ち砕いた。
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ジュラ紀は5600万年しかなかった。
・2億5000万年にわたりひとつだった大陸が分離した。
・大陸の分離が、地球の生物多様性に影響を与えた。
・動物の多様性が増加、生息環境内で実現できることを拡大。
・いくつもの現世の系統の最初期メンバーがこの時代から見つかっている。
 →サンショウウオ、鳥、哺乳類の祖先など


・中国の誕生もジュラ紀にさかのぼる。
ジュラ紀中期を通じて、新たな大地の周辺で周期的な火山噴火が発しつづけた。
・爆発的に噴火し、周囲数百キロメートルにわたり火山灰を降らせた。
・中国で、火山灰は化石の保存料のように作用した。
ジュラ紀の中国の生態系は、葉、茎、翼、角、羽、骨、毛まで完全な形で残されている。
・灰と堆積物の微細粒子は、古代の石棺のように死体を封じ込め、腐敗を妨げ、永遠に保存した。


・モルガヌコドン類のあとに現れた、初期グループのひとつがドコドン類。
・ドコドン=梁のような歯
・哺乳類化石は、歯だけに基づき他種と区別され命名される。
・~ドンは、ギリシャ語で歯を意味するdontiからきている。
・歯だけで区別可能なのは、哺乳類の歯列が複雑だから。


・トリボスフェニック:現世哺乳類の歯でもっとも有名な構造
・上顎のトリボスフェニック型臼歯には三つの咬頭が山々のように三角形を描いて並び、それぞれの間に険しい峡谷がある。
・下顎の臼歯は、片側に三つの山が、反対側に円形の盆地があり、周囲を丘陵が取り囲む。
・この基本構造は哺乳類の固有の形質。
・上と下の歯を合わせて噛むことで、トリボスフェニック型臼歯を使い食物を剪断し、するこぎとすり鉢の要領ですりつぶす。
・この咀嚼の基本設計から出発した。


三畳紀後期からジュラ紀前期に現れた最初期の哺乳類は、トリボスフェニック型臼歯をもたない。
・モルガヌコドンなどの臼歯は、三つか四つの小さな山が一列に並んでいるだけ。
・最初の哺乳類たちはシンプルな昆虫捕食者だったように思えた。


・モルガヌコドンとキューネオテリウムは、似た外見に反し、異なる咀嚼パターンをもっていた。
・キューネオテリウムの咬合力弱く、やわらかい昆虫を食べていた。
・モルガヌコドンの歯の磨耗跡は、硬い外骨格をもつ甲中を補職するコウモリのものに類似。
・最初期の種の段階で、哺乳類はすでに生態の多様化に踏み出していた。


・歯が化石記録の大半を占める理由:歯がエナメル質と象牙質からできていて、化石化の過程のなかの破壊作用に耐性があるため。
・硬い歯と密度の高い下顎骨は化石に残りやすい。


・ドコドン類はジュラ紀を通じ、古代世界の北半分を占めたユーラシア大陸に広く分布していた。
・ドコドン類は専門的には哺乳形類に含まれる。
・「真」の哺乳類とは区別される。
・クレード(clade):ひとつの共通祖先をもつ生物のグループ
・哺乳網というクレード:有胎盤類、有袋類、単孔類、1億6000万年前に存在した共通祖先よりあとに現れた絶滅したこれらの親戚すべてを含む。
・かれらは「真」の哺乳類。
・このグループの外にいるものはみな、哺乳網といううクレードに含まれない。

 

・ドコドン類などの最初期の哺乳類は、哺乳網の共通祖先よりも前の時代に系統樹から分岐した側枝。
・より広く大きな多様性を内包するカテゴリーである哺乳形類に属する。


・哺乳形類は、より洗練された姉妹群である哺乳類よりもずっとシンプルだと考えられてきた。
・ドコドン類の歯が発見されるにつれ、予想外に複雑な咬頭や隆起に誰もが衝撃を受けた。
・これらの哺乳形類の歯は、トリボフェニックス型臼歯の鏡像であることがわかった。
・ドコドン類は、哺乳類ではなかったが、哺乳類とほぼ同じ複雑な構造の歯を、哺乳類よりも先に進化させた。


・1999年、北京から北東約400km地点で、世界でもっとも見るものを魅了するジュラ紀の哺乳類化石が発見された。


<ドコフォソル>ーーー
・頭骨はほかのドコドン類よりも寸詰まり。
・歯は単純化している。
・ミミズなどの地中生物を補色する現世哺乳類のそれに似る。
・四肢は相対的に短く、ひじの部分は鋭く長い。
・この部分に付着するたくましい上腕筋を使い土を掘った。
・これまで中生代哺乳類に見つかったことのない適応を備える
 →どの指も関節がひとつ少ない
・自然が始めたつくりだしたモグラの手。
ーーー


・現代のモグラは別の複数の系統が含まれる。
・近縁ではないが、ショベル型の手をもつ共通点がある。


モグラ科は穴掘りのスペシャリスト。
・かれらのボディプランは地中生活への究極の適応。
・幅広い前肢に長く丈夫なかぎ爪を備える。
・耳介はなく、眼は小さい。
・触覚は生命線。
・鼻のまわりに触覚受容器であるアイマー器官をもつ。
・この器官は神経につながった皮膚細胞が変化したもの。
・地下の完全な暗闇のなか、触覚だけを頼りに獲物を見つけいきてゆける。


モグラ的に動物はモグラ科の専売特許ではない。
・アフリカ南部のキンモグラはキンモグラ科に属し、ゾウやツチブタの近縁。
・オーストラリアには有袋類のフクロモグラがいる。
・三つのグループは哺乳類の系統樹の別の枝にいながら、よく似たモグラ的な特徴をもつ。
・同様の生態学的課題を解決するよう自然淘汰が作用し、それぞれのケースで独立に同じような結果に至った。


・五本指のボディプランはすべての四肢動物の共通祖先にさかのぼる。
・このナンバリングはすべての四肢動物に適用。
・四肢と指は相同器官であり、機能が変わっても同じひとつの進化的起源をもつ。
・ほとんどの哺乳類と同様、ヒトは長い中手骨と、その先にあるそれぞれの指に三つずつ(親指は二つ)の指骨をもつ。
・アフリカのキンモグラは、指の数と指を構成する骨の数も減らした。
・キンモグラの指骨は、子宮のなかで消失する。
・発生が進むにつれ、真ん中の指骨(中節骨)のつち二つの成長が止まり融合する。
・誕生時にはほとんどの指に指骨が二つしかなく、小指は完全に消失している。
・巨大な爪を備えた中指が圧倒的存在感を示す。


モグラ的な特徴は、比較的最近になって生じた特殊化だと考えられてきた。
・ドコフォソルは、ほかのドコドン類では三つある指骨が、どの指にも二つしかない。
・高度に特殊化したモグラ的適応が中生代の化石記録から初めて見つかった。
・最初期の哺乳類における胚発生と遺伝子発現についても示唆が得られる。


<アジロドコドン>ーーー
・細長い四肢をもち、長い指で樹皮や枝につかまった。
・胸より下の肋骨の縮小や消失は哺乳形類ですでに起きていた。
・これにより柔軟な動作を実現、並行して横隔膜を獲得。
・アジロドコドンでは肋骨がさらに退化した結果、樹上生活に必要な曲芸並みの動きが可能になった。
ーーー


カストロカウダ・ルトシミリス>ーーー
・ドコドン類の一員で、水中で生活していた。
・この学名は、「ビーバーの尾をもつカワウソに似たもの」の意。
・四肢を広げ石板に突っ伏した姿勢のほぼ完全な骨格が知られている。
・軟組織の痕跡が残されていた。
・毛の痕跡は手足と尾を除く全身を覆う。
・尾は、毛がなく、輪郭が胴体と比して幅広。
・現世ビーバーの尾にそっくり。
・ほかのドコドン類、既知のすべての中生代哺乳類にも似たものは見られない。
・尾の内部の骨そのものも側方に広がる。
・尾を使い遊泳時の推進力を得る現世の半水生哺乳類にも同様の特徴がある。
・水かきをもっていた。
・ドコドン類の特徴の複雑な歯は単純化し、釣り針のように後方にカーブ。
・肋骨が短冊状に幅広く、胴体は頑丈で柔軟性を欠いた。
・ほかのドコドン類は最大で100g。
カストロカウダは800gに達し、大きかった。
カストロカウダはカモノハシに似ていた。
・そこそこの大きさで半水生ニッチに高度に適応した哺乳類がジュラ紀の地層から発見されたことに、研究者たちは驚愕。

ーーー


・ドコドン類は、中生代哺乳類にまつわる神話を打ち砕いた。


・ヴォラティコテリウム:史上初の滑空性哺乳類だった。
・滑空と飛行は別物。
・哺乳類では、コウモリだけが真の動力飛行を実現。
・ムササビやモモンガがしているのは滑空。
・皮膚のひだを利用して空中を移動する動物
 哺乳類:リスの二系統、ヒヨケザル、一部のキツネザル
 有袋類:フクロモモンガ、フクロムササビ、チビフクロモモンガ
 爬虫類、両生類、魚にも翼を生み出し揚力特性を利用するものがいる。
・滑空はきわめて効率的な移動方法。

・ヴォラティコテリウム以外の滑空性哺乳類は、マイオパタジウム。
・滑空性哺乳類の多くは、ハラミヤ類と呼ばれるグループに属す。
・長いV字谷をはさみ円錐形の山々が二列にならぶ臼歯の特徴で知られる。
・門歯が前方に突出している点は現世の齧歯類に似ている。
・植物色、あるいは雑食への適応だった。
・中国で見つかった化石は、滑空性哺乳類の最古の記録を1億2千万年以上塗り替え、収斂進化の実例をさらに増やした。


・中国の化石は哺乳類の生態的多様性の出現に関する常識を根底から覆した。
・厳密には哺乳網に含まれないグループのものだった。
・哺乳類の系統で多様性が解き放たれた鍵は、複雑な歯にあった。
・さまざまな食物を咀嚼できたことで、最初期のドコドン類は、同時代のほかの系統には利用できなかった新しい生活様式、新しいニッチ空間の開拓に成功。


ジュラ紀は現世哺乳類の系統が出現した直後の時代である点も重要。
・現世哺乳類の主要二系統
 有袋類
 有胎盤
中生代以降の絶滅した側枝も含めた学術用語
 後獣類:有袋類とそれに近縁の絶滅哺乳類のグループをすべて含むクレード
 真獣類:後獣類の姉妹群で、すべての有胎盤類とこちらにより近縁の絶滅哺乳類を含むクレード
・二つ合わせたものが獣類。
・ヒトを含め今日の地球上に生息する哺乳類は、単孔類を除き、すべて獣類の一員。
・獣類の祖先がジュラ紀に生きていたのは間違いない。

・現世哺乳類はほかの四肢動物をはるかにしのぐ可聴域をもつ。
 ヒト:20~20万Hz
 コウモリ:~200kHz
 イルカ:~275kHz
 シロガナガスクジラ:10Hz~
 ゾウ:14Hz~
自然淘汰により四肢動物のボディプランが哺乳類の耳に改造されたから可能になった。
・聴覚の進化は、哺乳類の行動と生態に多大な影響を及ぼし、狩りやコmニュニケーションの様式を一変させた。


・音=空気の振動
・耳介:音が最初に到達する器官。
    音を取り込み、音源の方向を特定する機能をもつ。
・音は外耳道を通過し、鼓膜に衝突する。
・ここが中耳の入口。
・哺乳類の中耳には三つの小さな骨がある。
 耳小骨 槌骨
     キヌタ骨
     アブミ骨
・こられが音を内耳に伝える。
・哺乳類の体でもっとも小さな骨。
・外からのメッセージ伝達以外に、増幅する役割もある。
・アブミ骨はほかの四肢動物にもあるが、哺乳類は二つの骨を追加し、音の増幅機能を劇的に高めた。
・内耳に入ると、音は蝸牛を満たす液体を通して伝わる。
・液体はリンパ液で、蝸牛の内表面にある微細な「毛」を揺らして振動を伝える。
・振動は電気信号に変換され、脳に送られ解釈される。
・蝸牛の渦の長さは、その動物がどれだけ鋭い聴覚をもつか教えてくれる。


・最初の単弓類の顎関節は、頭骨の方形骨が下顎の関節骨と接していた。
・キノドン類の時代までに、下顎の大部分は歯を納めた歯骨に占められ、残りの骨は縮んで後方に追いやられた。
・小さくなった下顎の骨は、下顎そのものの振動を通じて音を感じ取る当時の単純な耳に、音を伝達する役割を果たした。
・角骨は、プレート状になりより効率的に振動し、アブミ骨を介して蝸牛にシグナルを送るようになった。
・方形骨と方形頬骨は強固につながり、顎関節を補強する一方、可動域を制限
→この配置がキノドン類の下顎中耳(MMEC)
・MMECから現世ほ乳類の耳(DMME)への変化は、進化史における奇跡的な転換のひとつ。
・咀嚼のしくみの改良により筋肉の配置が変化。
・筋肉を支える役目から解放された結果、下顎の骨はますます小さくなった。
・最初に方形頬骨が退化、方形骨の可動域が広がった。


・単孔類はDMMEをもっていなかったが、子孫である現世の単孔類はDMMEをもっている。
・後獣類と真獣類はDMMEをもつが、共通祖先はDMMEをもたない。
・化石記録を見るかぎり、哺乳類の耳は現れたり消えたりを繰り返している。


・哺乳類の別々の系統で、DMME独立に複数回進化した?
・単孔類を含む系統は中生代に分岐したあと、独自にDMMEを進化させた。
・獣類の共通祖先も現代的な耳を獲得し、これが現世哺乳類のDMMEの原型となった。
・多丘歯類のDMMEもまた、独立に進化したもの。
・現代的な耳が独立に三回進化した。
・同形形質:複数の異なる系統で同じ形質の獲得または喪失が起こる現象。


・高周波音を検出できる中耳と内耳の構造ができるまで、哺乳類系統は、頭の輪郭からはみ出す耳介をもたなかった。
・耳介は高周波音の検出に特化した構造だから。
・ほかの四肢動物では、音は左右の耳の間の頭の中を通過。
・振動の強さの違いを分析することで、脳は音源の方向を特定。
・両生類と爬虫類は、方耳から入った音は口を構成する骨を伝い反対側の耳に届く。
・鳥類は左右の内耳をつなぐ管をもつ。
・哺乳類は左右の耳が実質的に独立している点でユニーク。
・この構造は発生源を突き止めるときに問題となる。


・問題解決の糸口は小型化だった。
・重要なのは体のサイズではなく、両耳間の距離
・小さい動物ほど、両耳が音を検出する時間差は小さくなる。
・哺乳類は左右の時間差だけでなく、音圧の強さの違いも音源定位に利用。
・左右の耳の間の距離が非常に小さい場合、音圧から音源の方向に関する信頼できる情報を引き出すには、高周波音でなければならない。
→小さい体と甲高い音はセット
・哺乳類の左右の耳が独立しているため、周囲の世界を把握するには、より鋭敏で高周波に対応した聴覚が必要。
・これがDMME。
・耳介が高周波音の構造を調整することで、音の定位能力が向上。
低周波音の場合、この恩恵は得られない。
・一定の高周波数帯を感知できるようになるまで、哺乳類は音源定位のための耳介をもつメリットがなかった。


・音の検出に長けていたことは、初期哺乳類に圧倒的優位をもたらした。
・捕食者を避け、食料を見つけ、他個体との相互作用の際、これまでにない方法でコミュニケーション可能だった。
・こうした変化は脳の大型化と連動。
灰白質の増大により、感覚系からの入力情報の処理が効率化され、中生代にますます複雑化した行動のための演算も可能になった。