ありのままに生きる

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哺乳類前史 起源と進化をめぐる語られざる物語

エルサ・パンチローリ 著 的場和之 訳「哺乳類前史」メモ

 

エルサ・パンチローリ 著  的場和之 訳
「哺乳類前史」メモ

第11章 故郷への旅
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【まとめ】
・K-Pgイベントは、約6600万年前の小惑星衝突により、非鳥類恐竜を根絶やしにした大量絶滅事象。
リリパット効果は、大量絶滅のあとの動物相が全体的に小型化する現象で、恐竜は大型化が得意だったが、小型化に関しては壊滅的だった。
・白亜期末の競合する別の哺乳類系統(初期に多様化した哺乳形類(モルガヌコドン類、ドコドン類)、最初期の「真の」哺乳類(多丘歯類、コビコノドン類))の絶滅は、獣類、現代の哺乳類の台頭を後押しする重要な要因だった。
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・K-Pgイベント:約6600万年前、小惑星が地球に衝突して非鳥類恐竜を根絶やしにした大量絶滅事象
白亜紀と古第三紀の堆積送の間には、地球上では希少元素だが小惑星には豊富なイリジウムが大量に含まれる。
・メキシコのユカタン半島沿岸部にある小惑星衝突のクレーターは、直径150km、岩盤の深さは20km
 →チクシュルーブ・クレーター
小惑星は小島ほどの大きさだった。
・衝撃は長崎と広島におとされた原子爆弾の数十億倍。
・巨大地震が発生し、熱衝撃波が周囲数百km以内のすべての生命を一瞬で黒焦げにした。
・暴風は1000km先まで森林の木々を倒し尽くした。


・浅海に落ちた小惑星は巨大津波を引き起こした。
・高さ100m、1500m弱という推定もある。
・北米沿岸に襲いかかり、内陸部を蹂躙。


・メキシコ湾岸の岩石には大量の石膏が含まれ、硫黄も豊富。
・これが衝突により蒸発し、液状化した岩石が大気中に拡散。
・放射性を帯びた噴出物が何時間も降り注いだ。
・地球の半分のエリアにいた生物たちはすぐさま被害を受けた。
・衝突のその日のうちに数十億の命が奪われた。


・大気中の巻き上げられた砂埃は、気流や偏西風に乗り地球を包み込んだ
→すべての生命は呼吸困難に陥った。
エアロゾルの厚い壁を通過できるのは、本来の日光の半分だった。
・1年かそれ以上、生き残った者たちは真っ暗闇と薄明の毎日のサイクルに苦しんだ。
・すすに含まれる硫黄は水滴と合わさり硫酸と化し、有毒の液体が地球表面に降り注いだ。
・植生の表層は灼けただれ、衝突地点から遠い植物食者も飢餓に陥った。


・核の冬が訪れ、数年にわたり居座った。
・表面気温の急降下により嵐が発生し、生存者をむち打った。
白亜紀の複雑な食物網は寸断、廃墟と化した生態系の残骸が残された。


ラブラドール・レトリーバーより大きな動物のほとんどは、K-Pg大量絶滅事象を乗り切れなかった。
リリパット効果:大量絶滅のあとの動物相が全体的に小型化する現象
・生き残った者たちは、体が小さいおかげで生存に必要なエネルギーが少なく、自然淘汰は急速に小型化を促す。


・K-Pg事象は、恐竜たちの断頭台だった。
小惑星衝突前に繁栄を享受した初期鳥類は失われ、現世種につながる系統も白亜紀の枝の多くが切り払われた。
・生き残ったグループ:カモ、ニワトリ、走鳥類、小型の飛翔性鳥類のグループ


翼竜白亜紀後期にはふるいにかけられたあとだった。
小惑星衝突により、アズダルコ類の巨大翼竜も姿を消した。


・トカゲや両生類でも複数の系統が絶滅。
・哺乳類も大災害の犠牲になった。
・多丘歯類はアジア地域で減退。
有袋類を含むグループである後獣類も同じ道をたどった。
・植物、それに依存する昆虫も大打撃を受けた。


・河川や海ではワニたちが苦しみ、海生爬虫類やその他の海生生物は消滅するか、深刻な現象に見舞われた。
アンモナイトは海から完全に姿を消した。


・大量絶滅事象の存続期間:数百年~数千年、数万年?
・地質学的スケールでは、一瞬。


・絶滅からの回復の道のりは地域によりさまざま。
・生態系の自己修復は50万年以内に始まった。
・400万年後までにパタゴニアなどの地域では葉食性の昆虫が回復。
・植物と昆虫の共生関係の一部が終焉し、新たな契約が結ばれ、生態系復活の基盤となった。
・アリとシロアリは生態系に不可欠な役割を獲得して繁栄、蝶もそれに続いた。
被子植物は急速に回復。
・新しい系統の果樹が誕生、哺乳類や鳥類を利用し、種子をばらまき繁栄。


・深海は大部分が破壊を免れた。


・一部の動物群にとり、事態は仕切り直しだった。
スペシャリストがもっとも痛手を被った。
・危機を乗り切るには柔軟性、進化的リメイクが必要。
・一部の種はレフュジアと呼ばれる、比較的影響が軽微だった場所、生態学的シャングリラに籠城。
・いち早く台頭したのは真獣類の哺乳類だった。
・古第三紀に起きた真獣類の回復は、地球上のすべてに生命に影響を及ぼした。
→「哺乳類時代」の第二幕が始まった。


・古第三紀は混沌のなかにあった。
・この時代は6600万年前に始まり、4300万年続いたあと、新第三紀にバトンタッチした。
・新第三紀からバトンを受けたのは、現在の地質年代である第四紀で、2500万年前に幕開けした。
新生代:古第三紀、新第三紀、第四紀をあわせて呼ぶ。
・哺乳類のスタートは、古第三紀の幕開けから3億年も昔にさかのぼる。


・哺乳類と鳥類の何が特別だったのか?
→何も特別ではなかった
・K-Pg事象を乗り切った分類群はたくさんあった。


・祖先たちはなぜもっと早く多様化しなかったのか。
・何千万年もの間、脇役に甘んじていた理由は何か?


・恐竜時代の哺乳類は制約を受けていたが、恐竜が全滅した古第三紀の始まりがギアチェンジを促し、多様化して空白のニッチを埋めた。
・この研究は中生代の制約の正体を突き止めたわけではない。
・哺乳類のさまざまなグループが恐竜時代の間も、適応放散を繰り返していた。
・恐竜が哺乳類の繁栄を妨げていたという考えは、以前ほど自明ではない。


中生代に哺乳類が直面した進化的制約に注目。
・分析対象を三つにグループに分け。
 ①初期に多様化した哺乳形類(モルガヌコドン類、ドコドン類)
 ②最初期の「真の」哺乳類(多丘歯類、コビコノドン類)
 ③獣類、現代の哺乳類
・それぞれのグループにおいて中生代を通じて表現型の変化がどれだけ起きたか比較。
・①、②は白亜紀に入っても新たなニッチへの適応を続けていた。
・③はK-Pg大量絶滅後までは大した仕事はできなかった。
・③を抑えていたのは、恐竜よりもむしろ広義の哺乳類の兄弟姉妹だった。
・白亜期末の競合する別の哺乳類系統の絶滅は、現代の哺乳類の台頭を後押しする重要な要因だった。


・体サイズは進化の重要な要素のひとつ。
・恐竜は大型化が得意だったが、小型化に関しては壊滅的。
中生代を通じて恐竜のほとんどの系統は大型化を実現したあと、最適範囲に落ち着いて推移。
→恐竜の場合、最適値は比較的大きかった


・恐竜の進化史のなかで、もっとも重要で劇的変化は、獣脚類、なかでも鳥の先祖でおきた。
・鳥の系統だけが、哺乳類がはるか昔に達成したレベルのミニチュア化を成し遂げた。
・哺乳類が経験したのと似た身体的変化が鳥の進化を加速。
・羽毛の獲得、体温の上昇と恒温化、活動性の上昇。
・鳥の系統すべてが融合。
・自然は別々の方向に出発した両者を、同じ場所に導いた。


・鳥類と哺乳類共通の形質の組み合わせは、彼らをK-Pg大量絶滅事象を生き延びるのに役だった可能性がある。
・鳥類と哺乳類は、ほかの四肢グループより子供の世話に長い時間を費やす。
→過酷な状況で次世代に優位性を授けることができる。
・半水生や穴居性の哺乳類は、最大のダメージを回避できたかもしれない。
・海岸に棲む鳥や半水生の鳥が危機を切り抜けたのも偶然ではない。
・古第三紀の早い時代から見つかった哺乳類の体骨格化石から、多くの種は穴掘りがうまかったようだ。
・カンガルーラットは、米国ネバダ州の核実験場に生息し、複雑な構造の巣穴と貯め込んだ食料のおかげで爆心地周辺でも生きていける。
・昆虫食も生存戦略として優れる。
・昆虫食は体が小さいこととセットで、小型の鳥類と哺乳類がより有利。


・多丘歯類はK-Pg境界を越え、しばらくは順調だった。
・新新世後期までに、多丘歯類は姿を消した。


・古第三紀謳歌したのは、細かいことを気にしない動物たちだった。
・食性だけでなく身体的特徴についても、新時代の先駆者となった哺乳類たちはみな、初めのうちはきわめてよく似ていた。
・がっしりした中くらいの体格、それ以外は何かに特殊化していなかった。
・有胎盤類であったことは確実。


・現世のすべてのグループの初期メンバーが、古第三紀の開始から1000~2000万年の間に大いに繁栄した。

 

有袋類とその親戚>ーーー
白亜紀末時点では北半球全体で隆盛を誇ったが、そのご下火。
小惑星衝突のあと、北米で新たなグループへ放散、南米に渡りパタゴニアに到達。
・この地域は緑生い茂る肥沃な古第三紀の南極とつながっていた。
・南極は動物たちで賑わい、白亜紀の南方系グループであるゴンドワナ獣類もしばらく生き続けた。
・コンドワナ獣類も一時的に存続したが、パタゴニアで発見された始新世前期(5900万年前)の化石を最後に姿を消した。
ーーー

 

有袋類>ーーー
・豊かな森林に覆われた南極大陸全域に分布を広げ、分裂する直前のオーストラリアに到達。
・オーストラリアと南米に、起源地である北半球では見られない有袋類が分布しているのはこのため。
・3500万年前、南極に氷床が広がりはじめ、それまでの生態系は周縁部においやられた。
有袋類は氷に押されて衰退、化石を残して死に絶えた。
ーーー

 

<単孔類>ーーー
・はるか昔からの長くのんびりした歩みを続けた。
・かれらのモットー「壊れないものは直さなくていい」
・大量絶滅から時を経ていない約6100万年前の時点で、かれらはパタゴニアに分布していた(モノトレマトゥム)。
・2800万年前のオブドゥロドンの化石は、見るからにカモノハシな動物がこの時代のオーストラリアに生きていた証拠。
ーーー

 

<有胎盤類>ーーー
・ほぼすべての大陸でいくつもの系統へと急速に多様化した。
・アフリカ:最初のアフリカ獣類(ゾウ、ツチブタ、キンモグラを含む系統)が現れた。
・北半球:ローラシア獣類が新天地に足を踏み入れ、コウモリ(翼手目)の祖先や鯨偶蹄目の祖先が出現。
・食肉目がセンザンコウ(鱗甲目)と分岐。
・トガリネズミは、多くの初期哺乳類と同じようなライフスタイルを続けた。

<新種齧上目>ーーー
・有胎盤類の第三の主要系統。
・古第三紀の終わり頃に現れ、多丘歯類に取って代わった。
・兎形目、ウサギの仲間は、齧歯目と袂を分かったが、生体に共通点を残した。
・ツパイとヒヨケザルも独自の細枝を形成、樹上性動物の小グループであるプレシアダピス類から分岐して先へ伸びて行った。
ーーー


・5800~5500万年前に生きていたプレシアダピスとその類似種は、ヒトの近い親戚と呼べる最初の動物たち。
・全長1メートル未満、見た目はリスに似て長く隙間のあいた前歯で物をかじった。
・眼は前方を向き、樹上生活に役立つ奥行き知覚をもつ。
・地上性だったという説もある。
・かれらの骨格には、わたしたちと同じ霊長類の枝の根本に位置することを示すたくさんの特徴が見てとれる。
・プレシアダピス類から、キツネザル、サル、類人猿が出現、ヒトが誕生。


アルクトキオニデスの歯は、英国諸島で見つかった古第三紀脊椎動物の化石のなかでもっとも古い。
・5700万年前のもので、初期の有蹄類、あるいは現代まで生き残れなかった哺乳類のグループである、肉食性の肉歯類に属する可能性がある。
・古第三紀の半ばには、イングランド南部の地層に出演キャストが勢ぞろいした。
・霊長目、齧歯目、兎形目、偶蹄目、食肉目の初期の種の歯や骨がみつかっている。
・少数の後獣類の終わりは近かった。
・ヨーロッパの有袋類は中新世中期(1400万年前)まで生息、最後の名残の化石がドイツで見つかっている。
・最古のモグラであるエオタルパは、イングランドの古第三紀中期の地層から発見。
・かれらは、ドコドン類が1億年以上前に発明した生活様式を再発見。
・森林に覆われた生態系の一部として、鳥、トカゲ、両生類の多様な系統と共存。


小惑星衝突後に起きた生命の回復と世界的な繁栄に比べれば、これらはみな予告編のようなもの。