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哺乳類前史 起源と進化をめぐる語られざる物語

エルサ・パンチローリ 著 的場和之 訳「哺乳類前史」メモ

 

エルサ・パンチローリ 著  的場和之 訳
「哺乳類前史」メモ

第10章 反乱の時代
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【まとめ】
・トリティロドン類は植物食への特殊化を果たし、三畳紀末から白亜紀前期まで8000万年にわたり存続し、中生代キノドン類のなかでもっともしぶといグループのひとつ。
・約1億2000万年前、被子植物(花を咲かせ果実をつける植物)が出現(白亜紀陸上革命)、白亜紀の昆虫、哺乳類、爬虫類はみな、そられが生み出した花蜜や果実に適応し多様化。

・哺乳類の一系統である多丘歯類は、中生代終盤、種数と個体数の面でもっとも成功を収めた哺乳類で、北半球の森林、草原、乾燥地に生息し、樹上性、穴居性、乾燥した灌木地を跳ね回るものもいた。
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・オリゴキフスのモノグラムは古生物学者が参照する基準となった。
・哺乳類の系統樹の側枝をなすグループに属す。
・ボディプランからは哺乳類と非哺乳類キノドン類の共通祖先がどんな動物だったか理解するうえで必要な手がかりが得られる。 
 →ほぼ哺乳類と呼べるかどうかの分水嶺


・オリゴキフスの食性と頭骨は、哺乳類の全進化史のなかで最大の成功を収めた。
・オリゴキフスはトリティロドン類と呼ばれるグループに属す。
・キノドン類のなかでもっとも哺乳類に近い関係にあるとされる系統のひとつ。
・世界中できわめて豊富に化石が発見されている。

 

・トリティロドン類は三畳紀末から少なくとも白亜紀前期まで、8000万年にわたり存続。

中生代キノドン類のなかでもっともしぶといグループのひとつ。
・植物食への特殊化を果たしていた。
・ジュラ期前期まで、小柄な最初期の哺乳形類は昆虫食だった。


・植物食への特殊化は、かれらが成功できた重要な要因。
・かれらの奥歯:二つの山脈が前後方向に平行に走るような形。
・上の歯の尾根が下の歯の谷に収まる構造。
・咀嚼中は顎を前後にスライドさせ、植物をエナメル質の溝に送った。
・かれらの歯はエスカレーター式に継続的に生え変わった。
・絶え間ない歯の磨耗に対処した。


齧歯類は前歯で課題を解決。
・かれらは単弓類が達成した究極の偉業。
自然淘汰が生み出したすべてが詰め込まれている。
・小さな体
 内温性
 速い繁殖速度
 生涯伸び続ける門歯で、堅果から樹の幹まであらゆるものを齧りつくす能力


・原生哺乳類の種のうち、ほぼ半数は齧歯類
・マウス、リス、ヤマアラシ、ビーバー、トビネズミ、モルモット、カピバラ
・前歯には歯根がなく、磨耗速度に合わせ顎骨から萌出する。
・門歯は植物食に完璧に適応し、齧る動作が必要な硬い食物をうまく処理できる。


齧歯類型の頭骨はトリティロドン類にも見られる。
・巨大化した門歯とその後ろの歯隙はペンチ型のパターンをなす。
・すりつぶしを担う奥歯はベルトコンベア式に生え変わる。


・約1億2000万年前、植物の1グループが出現し、物理的にも生態学的にも景観を全面的につくり変えた。
・これらの植物がなければ、わたしたちがここにいないのは確実。
 →花


被子植物:花を咲かせ果実をつける植物。
・1億3000万年前まで、花は世界にひとつもなかった。
・植物が上陸してから3億5000万年の間、開花を起こらなかった。
・生態系の植物要素は、最初は地衣類、ヒカゲノカズラ類、ミズニラ類、シダ類が占め、続いて裸子植物が現れた。
裸子植物:種子と花粉をつくり、昆虫など送粉を担う昆虫と共生関係を築いている。
・こうした植物の大半は、風媒と水媒だけで繁殖できる。


・最初の被子植物の起源は正確にはわからない。
・最初の被子植物は湿潤環境、密林の薄暗い下層に適応。
白亜紀に入り、花は時代の主役となった。
・化石記録のなかのスーパーブルームはじつに唐突に始まった。
白亜紀中期に完全な形で現れた。
自然淘汰はゆっくりと漸進的なこともあるが、駆け足で爆発的にもなりうる。


・1億2500万年前から8000万年前までの間に、被子植物は突如として生命の歴史のなかでも1、2を争うほど革新的で爆発的な適応放散を果たした。
・一連の事象は白亜紀陸上革命と呼ばれる。
・植物群集は生活環境と食物連鎖の基盤
 →そこに起こる変化は生態系全体に影響を及ぼす。
白亜紀の昆虫、哺乳類、爬虫類はみな、被子植物が新たに生み出した豊富な栄養源である、花蜜や果実に適応し多様化。


・最後のトリティロドン類の化石は、日本の中西部地方にある白亜紀の地層から発見。
・約1億3000万年前、ひとつの水系の河川が石川県 白峰地区を離合しながら流れていた。
・支流のひとつが動物たちの骨を最後の安息地へと運んだ。
・最後のトリティロドン類、モンティリクトゥス・クワジマエンシスは、歯だけを残して姿を消した。
・かれらの歯と一緒に、植物食キノドン類に代わり台頭した、ニッチの後継者の歯も見つかった。
 →多丘歯目の哺乳類。
・多丘歯類は、中生代終盤、種数と個体数の面でもっとも成功を収めた哺乳類。


・1920年代の時点で後獣類(有袋類とその近い親戚からなるグループ)は米国の白亜紀の地層から発見。
・後獣類の姉妹群である真獣類(有胎盤類、および後獣類よりも有胎盤類に系統的に近いその他の哺乳類すべて)については、恐竜時代に生きていた証拠が見つかっていなかった。
白亜紀末の大量絶滅の直後である古第三紀の地層からは発見。
・真獣類が最初に現れたのは白亜紀とされた。
ゴビ砂漠調査で、白亜紀に真獣類が存在した証拠が見つかった。
・ザラムダレステスと名付けられた化石は、真獣類と考えられただけでなく、当時知られていたなかでもっとも完全な中生代哺乳類化石のひとつ。


中生代の真獣類と後獣類の違いは、第一に歯にある。
・真獣類の臼歯は三つ、後獣類は四つ以上
・今日の世界に生きている多くの小型哺乳類によく似ていた。


・後獣類の起源地はアジアだった可能性が浮上。
・後獣類と考えられる最古の化石であるシノデルフィスは、オポッサムに似た樹上生活者。

・シノデルフィスの存在は、北米がユーラシアと分かれる前に、初期後獣類の一部が新大陸に到達したことを示唆。
・その後、新大陸でさらに進化し、最初の有袋類となったものが、南米やオーストラリアに拡散したと考えられた。
・最近の研究で、後獣類の起源に関するこの仮説に疑問符がついた。
・シノデルフィスはじつは真獣類だった。
・最古の後獣類の化石は、北米のずっとあとの時代のものに押しやられた。
・このグループがどこでどのように誕生したかは謎。


・エオマイアはモフモフ毛玉で、茶色い塊のまわりに爪楊枝のように細かい骨が並ぶ。
・現世哺乳類の系統が約1億2500万年前のアジアで繁栄していた証拠。

・後獣類と単孔類に特有とされた骨盤の一部をなす骨が、多丘歯類にもあった。
・すべての哺乳類系統の共通祖先がこのような形態の骨盤をもっていた。
・一部の多丘歯類の四肢骨は、ウサギのような四足での跳躍移動をしていた。
・古い哺乳類であるにもかかわらず、高度に特殊化した移動方法をとっていた。
・多丘歯類は、白亜紀にもっとも種数の多かった哺乳類。
・全体の半分を占めた。
・哺乳類の一系統である彼らは、北半球の森林、草原、乾燥地に生息。
・樹上性、穴居性、乾燥した灌木地を跳ね回るものもいた。
・大きなものはビーバーほどの大きさになり、丸鋸のような巨大な小臼歯で食物をすりつぶす前にスライスした。


・哺乳類は中生代の間にすでに確固たる足場を築き、繁栄していた。
三畳紀に小型化と夜行性のボトルネックを経験したあと、哺乳類はさまざまなサイズに多様化、あらゆる生活環境を利用し、恐竜が絶滅するまで踏み込めなかったと考えられていたニッチにも適応。
・哺乳類はけっして「卑小な」生き物ではなかった。


・最初の補食性哺乳類が選んだメニューは恐竜だった。
・単弓類のなかで最初に大型の肉食動物が現れたのは、獣弓類の系統。
・補食に特化した形質を備えていた
  咬みつくための長く鋭い犬歯
  追跡と襲撃に適した体型
  獲物を押さえ込むのに有利なたくましい首と前肢
・ほとんどの肉食獣は肉しか食べないわけではない。
・ひとつのタイプの食料しか摂取しないのは例外。
スペシャリストは唯一の食料が絶滅したり、生息地の喪失に見舞われた場合、生存が危うくなる。
・肉食獣とされる動物の食性のうち、肉が占めるのは三分の一ということもある。
超肉食性動物は、食性の四分の三を肉が占める。


白亜紀には複数の哺乳類系統に超肉食性の昆虫食者がいた。
・ほかの四肢動物を補食する肉食動物は、獲物よりも体が大きい傾向にある。
・例外もある。
・小さくキュートでくねくねした外見からは想像できないほど獰猛なハンター:イタチ科でもっとも小さいイイズナは自分の10倍もある獲物を殺す。


・レペノマムス・ロブストゥスの最後の食事はプシッタコサウルス

・キタオポッサムほどの大きさ。
・姉妹種のレペノマムス・ギガンティクスはラーテルに匹敵。
・鼻先から尾端までが約1メートル、体重は約14kg。
・かれらは中生代の肉食獣であるゴビコノドン類と呼ばれるグループの一員。
・ゴビコノドン類は肉食に適した歯をもち、かれらの一部が当時の生態系において最大級の哺乳類であった。