独立型小電力ソーラー発電システムを作ろう
概要
思い付きで小電力のソーラー発電システムを作ることにして、これまでにシステム構成と自宅にある家電製品の消費電力を調べた。仕様検討に入る前に太陽電池・ソーラパネル/バッテリーの特性等を調査していく。
1.第三回の目的
太陽電池、ソーラーパネルの特徴と、実際の製品について調べてみる。
2.おもな太陽電池の分類とその特徴
CQ出版の「太陽光インバータとLiイオン電池の電源技術」に太陽電池の分類と特性が載っていたので、以下に引用する。
CQ出版 太陽光インバータとLiイオン電池の電源技術
p.5 表1 おもな太陽電池の分類とその特徴
材 料 |
特 徴 |
評価 |
備 考 |
シ リ コ ン 系 |
結晶系 |
単結晶 |
変換効率 |
○ |
15~19% |
信頼性 |
○ |
|
使用実績 |
○ |
|
価格 |
× |
|
多結晶 |
変換効率 |
△ |
13~18% |
使用実績 |
◎ |
最も広く使用されている |
大量生産 |
○ |
|
価格 |
○ |
|
アモルファス |
変換効率 |
× |
6~9% |
大量生産 |
○ |
加工性高い |
その他 |
- |
軽量・フレキシブルなモジュール製作が可能 |
結晶シリコンの1/100程度の負枠シリコン膜を使う |
化 合 物 系 |
GaAs系 |
変換効率 |
◎ |
30~40% |
価格 |
× |
高価(おもに宇宙用に使用) |
CIS系 |
変換効率 |
〇 |
10~12% |
価格 |
(〇) |
安価の可能性 |
その他 |
|
省資源での生産が可能 |
CdTe, Cdsほか |
変換効率 |
(◎) |
高効率化の期待 |
価格 |
(◎) |
低コスト、大面積化の可能性 |
その他 |
|
公害物質を含むものあり |
有 機 系 |
色素増感 |
変換効率 |
× |
5~6% |
価格 |
(◎) |
低コスト製造の可能性 |
有機半導体 |
変換効率 |
× |
4~6% |
その他 |
- |
有機物を含んだ半導体膜を使用 |
寿命と高効率化が課題 |
変換効率は、衛星用の高額なもので30~40%程度、一般に入手できるものでは20%程度が最高のようだ。
入手しやすいのはシリコン系の単結晶か多結晶のもので、単結晶のほうが効率が良いが、値段が高いということになるようだ。
ソーラーパネルの構成について、Wikipediaより一部を引用する。
ja.wikipedia.org
ソーラーパネル(solar panel)、太陽電池パネル
・太陽光で発電を行うためのパネルのこと。
・太陽電池板、太陽電池モジュールともいう。
<構造>
・ひとつひとつは小さな太陽電池を複数集め、何らかの枠・構造体に入れてパネル状にしたもの。
<構成>
・ひとつひとつの太陽電池の起電力は小さいが、それを複数直列に組むことで電圧を上げている。
・鉛蓄電池(12V)と組み合わせることも想定されたソーラーパネルは、蓄電池を充電するために、ソーラーパネル側の起電力は(蓄電池の12Vよりも高く)17~20V程度になるように設計されている。
・電流量を増やすために、上述の直列のユニットが複数、並列に組んであることもある。
<発電電力>
・一辺が数十センチメートル程度ならば、10ワット~100ワット程度。
・一辺が数センチ程度の小さなソーラーパネルの場合は、1W以下~数ワット程度。
4.実際の製品仕様例
密林で見つけた出力50Wクラスのソーラーパネルの仕様を表3-1に示す。
表3-1 GWSOLAR 50W太陽光パネルの仕様
材料 |
多結晶 |
最大出力 |
50W |
動作電圧 |
18.5V |
動作電流 |
2.72A |
解放電圧 |
22.3V |
短絡電流 |
2.84A |
寸法 |
507×690×35(mm) |
まだソーラーパネルを決めていないけれど、小さく始めるには、このくらいのサイズのものが良さそうだ。
以下のリンクのサイトにソーラーパネルの発電条件や発電効率等について記載されていたので、必要な部分を抜粋する。
www.ideastyle.co.jp
www.girasol-solar.jp
<1.太陽光パネルの発電条件>
(a) 天候
・発電に最も好条件な天気は晴天で、太陽光パネルに影が落ちていない状況下。
・曇天では晴天時の半分以下、雲の状況次第では晴天時の5%〜10%まで落ちることもある。
(b) 時間帯
・時間帯別では、朝6時〜夕方18時が発電タイム。
・お昼時の11時〜13時が発電のピーク。
(b) 季節
・一年間の月別では、4月・5月の春季が最も好条件。
・続いて8月の夏季、発電量が乏しいのは11月〜1月の冬季。
・太陽光パネルの素材であるシリコンの特性を踏まえると、最も発電量が安定するのは、ある程度涼しく、かつ日照時間が長い季節。
・一年の天候を見て、この条件に一番当てはまるのが春。
・梅雨の時期や冬に発電量が低下するのは、梅雨は雨で日光が差さない時間が多く、冬場は日照時間が短いため。
・夏季よりも春季の方が発電量が多いのは、高温すぎると太陽光パネルの発電効率が落ちるという特性があるため。
・条件によっては、夏よりも冬の方が発電量が上る可能性がある。
・太陽光発電に熱は必要なく、素材であるシリコンは熱に弱い反面低温で性能が上昇するため、冬場の方が効率よく電気を作り出すことができる。
・低い気温には、太陽光によって上昇したパネルの表面温度を下げる働きも期待することができる。
・日照時間についても、地域によっては冬場の方がむしろ太陽光発電に適している場合がある。
・雪があまり降らない地域では冬場乾いた晴天が多い傾向があるため。
・夏は雨や台風が多いため、季節ごとに考えると夏と冬で得られる電力量が逆転する可能性は十分ある。
<2.太陽光パネルの発電効率低下の要因>
(1) パネルへの影の影響
・現在主流となっている結晶シリコン型太陽電池モジュールは、太陽電池(セル)が直列に繋がっている。
・1つのセルに影がかかっただけで、モジュール全体の電流が流れにくくなり、結果発電効率が大きく落ちてしまう。
・CIS太陽電池はセルの一つ一つが独立しているため影に強い。
・ただし変換効率が結晶シリコン型よりも低いというデメリットがある。
(2) パネルの汚れ
・パネルの汚れも、発電効率の低下の原因になる。
・汚れていると当然その部分には太陽光がしっかり当たらなくなってしまうから。
(3) パネルの劣化
・太陽光パネルは一度導入すれば15~20年ほど使えると言われてるが、設置したときの発電量を維持できる訳ではない。
・単結晶パネルは少ない面積でも効率的に発電できるメリットがあるものの、多結晶パネルやCISに比べると劣化が早い。
(4) 高温
・太陽光パネルは高温になりすぎると、それだけ発電効率が低下する。
・太陽光パネルの性能を示す時は、測定時モジュールの温度が25度であることが国際的に定められた条件。
・この25度は太陽光パネルがもっとも効率よく電気を生み出すことができる温度で、それ以上温度が上ると発電量は落ちる。
・この25度という数字は外気温ではなく、パネルの表面温度。
・日の光が最大限当たるよう設置される太陽光パネルは、冬場であってもかなり熱い環境に置かれることになる。
・真夏の30度を超えるような気温の中、太陽光を直に浴びたパネルの表面は、最大で70~80度まで上昇する。
・太陽光パネルの発電効率は25度で最大になり、それより1度上昇する毎に0.5%発電量が低下していく。
・真夏は最大時に比べ、30%近く発電量が低下している可能性がある。
・太陽光パネルが高温に弱い理由は、シリコンでできているため。
・シリコンは高温によって性能が低下する特徴があるため、温度が上ることで発電効率が落ちる。
・特に最も普及している結晶シリコン系の太陽光パネルは気温に大きな影響を受ける。
<3.太陽光パネルの高温対策>
・太陽光パネルには大きく分けてシリコン系と化合物系の2つの種類がある。
・シリコン系は更に単結晶、多結晶、HIT、アモルファスの4つに分けることができる。
・太陽光パネルが高温に弱いのは、素材に使用されているシリコンに理由があり、単結晶と多結晶は熱に弱いとされている。
(a) アモルファス
・同じシリコン系でもアモルファスは熱に強い特徴がある。
・理由は使用しているシリコンの量を限界まで減らしているため。
(b) HIT
・単結晶シリコンとアモルファスを積層したHITも高温に強い特性がある。
・高温になると発電量が落ちる単結晶のデメリットを、アモルファスが補ってくれるため。
(c) CIS
・シリコンを使用していないCISも熱に強い太陽光パネル。
・CISはシリコン以外の物質を混ぜ合わせることで作られる化合物系太陽電池。
・単独では半導体として働くことができなくても、組み合わせることでシリコンと同じような特性を持たせることができる。
・CISは銅(Cu)、インジウム(In)、セレン(Se)の各元素を組み合わせたもので、その頭文字を取ってCISと名付けられた。
夏場は日差しが強いので、ガシガシ太陽光発電できると思っていたら、太陽電池は暑いと発電効率が低下するとのことで、とんだ勘違いしをしてたな。
自然が相手なので、ソーラーパネルの正確な発電量を見積もるなんてことは不可能だけど、天候や季節、時間帯の発電条件をもとにざっくりした発電量を見積もって、仕様検討に生かすとしよう。
6.次回の課題
次回はバッテリーの諸特性について調べてみたい。