行列演算だの偏微分が出てきて、ずい分久しぶりにお目にかかるな...。
- 作者: トランスナショナルカレッジオブレックス
- 出版社/メーカー: ヒッポファミリークラブ
- 発売日: 1991/08
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トランスナショナル カレッジ オブ レックス編 「量子力学の冒険」
第三話 <W.Heisenberg> 「量子力学の誕生」メモ
☆正準な交換関係
・マトリックスの計算を使うと Bohrの量子条件
∫pdq=nh
と Newtonの運動方程式
F=mq’’
を書き換えることができ、3つの利点がある。1.「エネルギーの保存則」がどんな場合でも成り立つことが証明できる。
2.「Bohrの振動数関係」がどんな場合でも成り立つことが証明できる。
3.問題が「固有値問題」になる。
Bohrの量子条件を量子力学の形に書きかえると次式となる。
∫pdq=nh
↓
Σ[τ]P(n;n−τ)Q(n−τ;n)−Σ[τ]Q(n;n+τ)P(n+τ;n)
=h/(2πi)
マトリックスの記号で書くと次式となる。
Σ[n’’]Pnn’’Qn’’n−Σ[n’’]Qnn’’Pn’’n
=h/(2πi)
マトリックスのかけ算ルール
(xy)nn’=Σ[n’’]xnn’’yn’’n’
から考えると上の式はPQ、QPのかけ算のnn要素(対角線要素)になっている。
式をかきかえると次式となる。
(PQ)nn−(QP)nn=h/(2πi)
nn要素以外の要素が全て0になるとする。
(PQ)nn’−(QP)nn’=h/(2πi) (n=n’)
0 (n≠n’)
対角要素だけが値を持ち、あとは全部0になるマトリックスを「対角線マトリックス」
と言う。
|h/(2πi) 0 0 ・・・|
| 0 h/(2πi) 0 ・・・|
| 0 0 h/(2πi) ・・・|
| ・ ・ ・ ・・・|
|1 0 0 ・・・|
=h/(2πi)|0 1 0 ・・・|
|0 0 1 ・・・|
|・ ・ ・ ・・・|
=(h/(2πi))1
対角線要素だけが1で、あとは全部0のマトリックスを単位マトリックスと言い1と書く。
マトリックス・・・PQ−QP=(h/(2πi))1
マトリックス要素・・(PQ)nn’−(QP)nn’=(h/(2πi))δnn’
δnn’:クロネッカーデルタ(n=n’の時1、n≠nの時0)
小文字のp、qで表される遷移成分がどんな関係をもつのか見る。
(pq−qp)nn’=Σ[n’’]pnn’’qn’’n’
−Σ[n’’]qnn’’pn’’n’
=Σ[n’’]Pnn’’e^i2πνnn''t Qn’’n’e^i2πνn''n't
−Σ[n’’]Qnn’’e^i2πνnn''t Pn’’n’e^i2πνn''n't
=Σ[n’’]Pnn’’Qn’’n’e^i2πνnn't
−Σ[n’’]Qnn’’Pn’’n’e^i2πνnn't
=(Σ[n’’]Pnn’’Qn’’
−Σ[n’’]Qnn’’Pn’’n’)e^i2πνnn't
=(PQ−QP)nn’・e^i2πνnn't
=(h/(2πi))δnn’・e^i2πνnn't
ここでe^i2πνnn'tは、n=n’のときe^i2πνnnt=e^0=1となり、
n≠n’のときはδnn’が0になる。
まとめると以下となる。
pq−qp=(h/(2πi))1
(pq−qp)nn’=(h/(2πi))δnn’
δnn’=1 (n=n’)
=0 (n≠n’)
・マトリックスのかけ算ではA×B≠B×Aとなり、かけ算の交換法則は成り立たない。
・マトリックスのかけ算において順番を変えたとき、それがどのようになるかを与える
のが先ほどの式であり、これが「正準な交換関係」と呼ばれる。
pq−qp=(h/(2πi))1
・マトリックスpとqのかけ算の順番を変えた時の差がh/(2πi)になると決めている。
・正準な交換関係は「微分」の役割を果たす
マトリックスp、qの関数
f(p、q)=2p+3q^2+pq
を考える。これをマトリックスqで「偏微分」すると次式となる。
(pはふつうの数と同じとみなして微分する)∂f(p、q)/∂q=6q+p
次式を偏微分する。
pf(p、q)−f(p、q)p=p(2p+3q^2+pq)
−(2p+3q^2+pq)p
=2p^2+3pq^2+p^2q−2p^2ー3q^2p−pqp
=3(pq^2−q^2p)+p(pq−qp)
ここで、正準な交換関係 pq−qp=(h/(2πi))1 を使うと次式となる。
=3(pq^2−q^2p)+(h/(2πi))p
=3((pq)q−q^2p)+(h/(2πi))p
正準な交換関係より、pq=qp+(h/(2πi))1 なので
=3((qp+h/(2πi))q−q^2p)+(h/(2πi))p
=3(qpq+(h/(2πi))q−q^2p)+(h/(2πi))p
=3((h/(2πi))q+q(pq−qp))+(h/(2πi))p
正準な交換関係を使うと
=3((h/(2πi))q+q(h/(2πi)))+(h/(2πi))p
=3(h/(2πi))2q+(h/(2πi))p
=h/(2πi)(6p+q)
よって、
pf(p、q)−f(p、q)p=h/(2πi)(6p+q)
となる。
∂f(p、q)/∂q=6q+p
正準な交換関係
pf(p、q)−f(p、q)p=h/(2πi)(6p+q)
まとめると
∂f(p、q)/∂q=((2πi)/h)(pf−fp)
同じようにf(p、q)をpで微分すると
∂f(p、q)/∂p=((2πi)/h)(qf−fq)