ありのままに生きる

社会不適合なぼっちおやじが、自転車、ジョギング等々に現実逃避する日々を綴っています。

トランスナショナル カレッジ オブ レックス編 「量子力学の冒険」

 行列演算だの偏微分が出てきて、ずい分久しぶりにお目にかかるな...。

量子力学の冒険

量子力学の冒険

トランスナショナル カレッジ オブ レックス編 「量子力学の冒険」

第三話 <W.Heisenberg> 「量子力学の誕生」メモ


☆正準な交換関係

マトリックスの計算を使うと Bohrの量子条件

   ∫pdq=nh


 と Newtonの運動方程式

   F=mq’’

 
 を書き換えることができ、3つの利点がある。

 1.「エネルギーの保存則」がどんな場合でも成り立つことが証明できる。

 2.「Bohrの振動数関係」がどんな場合でも成り立つことが証明できる。

 3.問題が「固有値問題」になる。


Bohrの量子条件を量子力学の形に書きかえると次式となる。

   ∫pdq=nh

     ↓

 Σ[τ]P(n;n−τ)Q(n−τ;n)−Σ[τ]Q(n;n+τ)P(n+τ;n)

    =h/(2πi)


 マトリックスの記号で書くと次式となる。

    Σ[n’’]Pnn’’Qn’’n−Σ[n’’]Qnn’’Pn’’n

    =h/(2πi)


 マトリックスのかけ算ルール

   (xy)nn’=Σ[n’’]xnn’’yn’’n’


から考えると上の式はPQ、QPのかけ算のnn要素(対角線要素)になっている。

 式をかきかえると次式となる。

    (PQ)nn−(QP)nn=h/(2πi)


 nn要素以外の要素が全て0になるとする。

    (PQ)nn’−(QP)nn’=h/(2πi) (n=n’)

                    0       (n≠n’)


 対角要素だけが値を持ち、あとは全部0になるマトリックスを「対角線マトリックス
と言う。


   |h/(2πi)    0     0        ・・・|
   |   0    h/(2πi)  0        ・・・|
   |   0       0    h/(2πi)   ・・・|
   |   ・       ・     ・        ・・・|


           |1 0 0 ・・・|
   =h/(2πi)|0 1 0 ・・・|
           |0 0 1 ・・・|
           |・ ・ ・ ・・・|


   =(h/(2πi))1


 対角線要素だけが1で、あとは全部0のマトリックスを単位マトリックスと言い1と書く。


   マトリックス・・・PQ−QP=(h/(2πi))1


   マトリックス要素・・(PQ)nn’−(QP)nn’=(h/(2πi))δnn’


   δnn’:クロネッカーデルタ(n=n’の時1、n≠nの時0)



 小文字のp、qで表される遷移成分がどんな関係をもつのか見る。

   (pq−qp)nn’=Σ[n’’]pnn’’qn’’n’

               −Σ[n’’]qnn’’pn’’n’


     =Σ[n’’]Pnn’’e^i2πνnn''t Qn’’n’e^i2πνn''n't

       −Σ[n’’]Qnn’’e^i2πνnn''t Pn’’n’e^i2πνn''n't


     =Σ[n’’]Pnn’’Qn’’n’e^i2πνnn't

       −Σ[n’’]Qnn’’Pn’’n’e^i2πνnn't


     =(Σ[n’’]Pnn’’Qn’’

         −Σ[n’’]Qnn’’Pn’’n’)e^i2πνnn't


     =(PQ−QP)nn’・e^i2πνnn't


     =(h/(2πi))δnn’・e^i2πνnn't


 ここでe^i2πνnn'tは、n=n’のときe^i2πνnnt=e^0=1となり、

n≠n’のときはδnn’が0になる。


 まとめると以下となる。

   pq−qp=(h/(2πi))1


   (pq−qp)nn’=(h/(2πi))δnn’


   δnn’=1 (n=n’)

       =0 (n≠n’)


マトリックスのかけ算ではA×B≠B×Aとなり、かけ算の交換法則は成り立たない。

マトリックスのかけ算において順番を変えたとき、それがどのようになるかを与える

のが先ほどの式であり、これが「正準な交換関係」と呼ばれる。

    pq−qp=(h/(2πi))1


マトリックスpとqのかけ算の順番を変えた時の差がh/(2πi)になると決めている。


・正準な交換関係は「微分」の役割を果たす

 マトリックスp、qの関数

   f(p、q)=2p+3q^2+pq


を考える。これをマトリックスqで「偏微分」すると次式となる。
(pはふつうの数と同じとみなして微分する)

   ∂f(p、q)/∂q=6q+p


 次式を偏微分する。

   pf(p、q)−f(p、q)p=p(2p+3q^2+pq)

                    −(2p+3q^2+pq)p


      =2p^2+3pq^2+p^2q−2p^2ー3q^2p−pqp


      =3(pq^2−q^2p)+p(pq−qp)


 ここで、正準な交換関係 pq−qp=(h/(2πi))1 を使うと次式となる。


   =3(pq^2−q^2p)+(h/(2πi))p


   =3((pq)q−q^2p)+(h/(2πi))p


 正準な交換関係より、pq=qp+(h/(2πi))1 なので

   =3((qp+h/(2πi))q−q^2p)+(h/(2πi))p

   =3(qpq+(h/(2πi))q−q^2p)+(h/(2πi))p

   =3((h/(2πi))q+q(pq−qp))+(h/(2πi))p


 正準な交換関係を使うと

   =3((h/(2πi))q+q(h/(2πi)))+(h/(2πi))p


   =3(h/(2πi))2q+(h/(2πi))p


   =h/(2πi)(6p+q)


 よって、

   pf(p、q)−f(p、q)p=h/(2πi)(6p+q)


 となる。


 偏微分

   ∂f(p、q)/∂q=6q+p


 正準な交換関係

   pf(p、q)−f(p、q)p=h/(2πi)(6p+q)


 まとめると

   ∂f(p、q)/∂q=((2πi)/h)(pf−fp)


 同じようにf(p、q)をpで微分すると

   ∂f(p、q)/∂p=((2πi)/h)(qf−fq)