- 作者: ファインマン,坪井忠二
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1986/01/08
- メディア: 単行本
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ファインマン物理学Ⅰ 力学
第16章 相対論的エネルギーと運動量 メモ16-1 相対性と哲学者
・ポアカレー:静止している観測者にとっても、またそれに対して一様な平行運動
をしている観測者にとっても、いろいろの物理現象の法則は同一であるというのが
相対性原理である。したがって、そういう一様な運動をしているかどうかを識別
する方法はないし、またありえない。
・相対性原理が物理学者にどのような新しい概念や考え方を教えたか
(1)非常に永い間信用されてきた、また非常に正確に立証されてきた考えで
さえ、間違いであることがある。(2)運動していると時間の進行がおそくなるというような新奇な考えがいろいろ
出てきたが、重要なのは実験の結果とあうかどうかということ。(3)法則の対称性に注意すること。どういう変換をしたら、法則の形がかわらな
いかということを求める。
16-2 ふたごのパラドックス
・μ中間子が運動していると寿命が長くなるように、例えば宇宙船に乗って運動
している人間のほうが長生きする・運動に加速度のある場合でも、μ中間子の寿命の長さは、直線運動しているとき
と同じ
16-3 速度の変換
・アインシュタインの相対性とニュートンの相対性との主なちがいは、相対的に
運動している二つの系の間の座標と時間との変換法則のちがいにある。ローレンツの変換法則は以下である(2人の観測者の相対運動が両方に共通な
x軸に沿っている場合)。x’=(x−ut)/√(1−u^2/c^2)、
y’=y、
z’=z、
t=(t−ux/c^2)/√(1−u^2/c^2)
x、y、z、tをx’、y’、z’、t’であらわすと、運動している座標系
からみると、静止している座標系がどうみえるかがわかる。運動の方向が逆であるから、速度の符号が反対になるだけで、変換は同じことに
なるx=(x’+ut’)/√(1−u^2/c^2)、
y=y’、
z=z’、
t=(t’−ux’/c^2)/√(1−u^2/c^2)
・速度の加法は相対論ではどうなるか
・宇宙船の中の物体が宇宙船のなかにいる人からみて速度vで運動していて、
宇宙船自体が地面から見て速度uで運動しているとする。
・地面にいる人からみたとき、この物体の速度vxを求める。宇宙船のなかでこの物体の速度はvx’であるとすると、変位x’は
x’=vx't'
外にいる観測者からこの物体をみたときの距離や時間は次式となる。
x=(vx't'+ut')/√(1−u^2/c^2)
外からみた時間を求める。
t=(t’+u(vx't')/c^2)/√(1−u^2/c^2)
xとtの比を求めると以下となる。
vx=x/t=(u+vx')/(1+uvx'/c^2)
・二つの速度を加えた合成速度は、その二つを単に代数的に加えたものではなく
1+uv/c^2という補正がつく(cに比して速度が遅い場合は無視できる)。
・物体が光の半分の速さで飛んでいて(v=c/2)、宇宙船自体も光速の半分の
速さだとすると(u=c/2)、その和は1にはならず、4/5になる。v=(c/2+c/2)/(1+1/4)=4c/5
・人が宇宙船のなかで光それ自体を観測する場合、v=cであり、宇宙船は運動
している。その場合は以下のようにu=cとなる。v=(u+c)/(1+uc/c^2)=c(u+c)/(u+c)=c
・宇宙船のなかで何かが光の速さで運動しているのを、地上にいる人からみると、
それはやはり光の速さで運動しているように見える。
16-4 相対論的質量
・衝突現象を考え、そのときの運動量ベクトルは速度ベクトルに係数:mv
(速度の関数)をかけたものである。p~=mvv~
同じ粒子が二つあり、それが同じ速度で互いに近づくとすると、全運動量はゼロ
である。粒子(2)の速度の水平成分をu、粒子(1)の上下速度をwとすると、粒子(2)の
上下速度utanαは次式である。utanα=w√(1−u^2/c^2)
上下に運動している粒子の上下運動量の変化は
Δp=2mww
である。この粒子の上下運動量の変化は?p'1=2mvw√(1−u^2/c^2)で
ある。速さvで運動しているときの質量と、wで運動しているときの質量比は
mw/mv=√(1−u^2/c^2)
wが無限に小さい場合、vとuはほとんど等しく、この場合mw⇒m0、mv→mu
であるので、mu=m0/√(1−u^2/c^2)
となる。
・同種のものが二つあるとして、同じ速さwで反対向きに動いてきてぶつかって
くっつく非弾性衝突を考える。M0=2mw
・二つのものの衝突によって新しくできたものの質量は、衝突するものの質量の
2倍・全体のMに寄与したのは静止の質量ではなく、その大きくなっていた質量
・衝突後静止していても、できるものの質量は二つのものの静止質量の和よりも
大きくなければならない。
16-5 相対論的エネルギー
・物体に力が働いているとき、その全仕事によって生ずる運動エネルギーの変化は
ΔT=(mu−m0)c^2=m0c^2/√(1−u^2/c^2)−m0c^2
・できたものの質量過剰は、投入された運動エネルギー
・エネルギーは慣性をもつ・質量の保存はエネルギーの保存と同等。
・衝突に運動エネルギーが関与するので、できたものはそれだけ重い
・二つのものを静かにいっしょにくっつければ、できるものの質量は2m0である
が、いきおいよくいっしょにくっつければ、できるものの質量はこれよりも大きい