ありのままに生きる

社会不適合なぼっちおやじが、自転車、ジョギング等々に現実逃避する日々を綴っています。

ファインマン物理学Ⅱ 光 熱 波動

ファインマン物理学〈2〉光・熱・波動

ファインマン物理学〈2〉光・熱・波動

第6章 屈折率の本質

6-1 屈折率

・電気的な波が屈折率nの物質中を速さc/nで進むように見えるのはだいたい
正しいが、いかにして見かけ上の速さが現れるか


・薄い透明な物質の板から遠く離れたところに光源(外部光源:S)があるとする。
・この板の反対側で遠く離れたところにある一点:Pでの電場を調べる。

・P点での電場は、外部光源Sにより生ずる電場とガラス板内の各電荷により
生ずる電場とのベクトル和になり、各電場は速度cによるそれぞれの遅れをもつ。

・P点における電場は

   E~=Σ(全電荷)E~_各電荷    (6.1)


   E~=Es+Σ(他のすべての電荷)E~_各電荷   (6.2)


  Esは外部光源だけによる電荷(正確に物質が全然存在しない場合のP点の電荷)


・全体の場が他の電荷の運動によってあまり変化を受けない物質を考える
 ⇒屈折率が極めて1に近い物質


・ガラス板内のすべての振動する電荷によって生ずるP点の電場:Eaを計算する
・Eaは、6.2式の第2項として現れる項の和であり、これを光源によるEsに加える
と、P点における全体の電場が得られる。


・板がなんの影響ももたないとすると、z軸に沿って進む波の電場は

   Es=E0cоsω(t−z/c)     (6.3)


   Es=E0e^iω(t-z/c)         (6.4)


 板の暑さを?zとすると、板を通り抜ける際の遅れを考慮に入れて、式(6.4)の
tを(t−?t)または[t−(n−1)?z/c]で置き換える

   E_板のうしろ=E0e^iω[t-(n-1)?z/c-z/c]    (6.5)


   E_板のうしろ=e^-iω(n-1)?z/cE0e^iω(t-z/c)  (6.6)


 この式は板の背後の波が、板が存在しなかったときの波:Esに、
e^-iω(n-1)?z/cという因子をかけることでえられることを意味する。
つまり、位相の遅れはω(n-1)?z/cである。


 e^xは近似的に(1+x)に等しくなるので、

   e^-iω(n-1)?z/c=1−iω(n−1)?z/c     (6.7)


となり、(6.6)へ代入すると

   E_板のうしろ=E0e^iω(t-z/c)−

               (iω(n−1)?z/c)E0e^iω(t-z/c)


となる。

 第1項は光源からの電場を表し、第2項はEaに等しくなる。


6-2 物質による電場

 波源Sが左の方に遠く離れているとすると、電場Esの位相は板上のいたる
ところで同じになり、板の近くの電場は

   Es=E0e^iω(t-z/c)      (6.9)


 板の位置をz=0とすると

   Es=E0e^iωt         (6.10)


 電子は原子に弾性的に結びついており、力が電子に加わると、その基準の位置
からの変位が力に比例するとする。

 電子は質量mで共鳴各振動数ω0の振動体の性質をもつと考えると、運動法定式
は次式となる。

   m(d^2x/dt^2+ω0^2x)=F   (6.11)


   F=qeEs=qeE0e^iωt       (6.12)


 qeは電子の電荷。電子に対する運動方程式

   m(d^2x/dt^2+ω0^2x)=qeE0e^iωt   (6.13)


 その解は

   x=x0e^iωt         (6.14)


 これを(6.13)へ代入する

   x0=qeE0/(m(ω0^2−ω^2))   (6.15)


 よって

   x=qeE0/(m(ω0^2−ω^2))・e^iωt   (6.16)


 電場Eaは

   Ea=−ηqe/2ε0c[iωqeE0/(m(ω0^2−ω^2))・e^iω(t-z/c)]

                                 (6.17)

 電子の駆動された運動は右方向に進行する二次的な波をつくる。


 (6.17)式が(6.8)のEaの式と似ており、以下の関係が成り立てば二式は一致する。

   (n−1)?z=ηqe^2/2ε0m(ω0^2−ω^2)    (6.18)


 ηが単位面積当たりの原子の数であり、Nを板の単位体積当たりの原子数とする
と、ηはN?zである。この関係を上式に入れ、?zで割れば、屈折率を物質の
原子の性質と光の振動数との項で表す式が得られる。

   n=1+Nqe^2/2ε0m(ω0^2−ω^2)    (6.19)


6-3 分散

・屈折理が振動数に依存する現象を分散といい、屈折率を振動数の関数として
与える式を分散式という。

固有振動数ωk、その減衰係数γkの電子が単位体積当たりNk個あるとすると、
分散式は

   n=1+(qe^2/2ε0m)Σ(k)Nk/(ωk^2−ω^2+iγkω)   (6.20)


6-4 吸収

 nを実数部分と虚数部分に分け、

   n=n'−in''    (6.21)


と書くことができる。

 (6.6)式に複素数nを代入すると

   E_板のうしろ=e^-ωn'?z/ce^-iω(n'-1)?z/cE0e^iω(t-z/c)

                                (6.22) 


となる。  

・最初の項は実数の指数をもつ指数関数で、1より小さい実数であり、電場の減少
を表し、?zが大きくなれば減少量も大きくなる。

・複素屈折率の虚数部分は波の吸収(減衰)を表し、n''は吸収係数とよばれる。


6-5 電波によって運ばれるエネルギー

・電波によって単位面積を通して単位時間中に運ばれるエネルギー(強度)は、
ε0cE^2で与えられ、強度をSとすると

   S=(強度あるいはエネルギー/面積/時間)=ε0cE^2


 となる。


6-6 スクリーンによる回折

・不透明なスクリーンの穴を光が通り抜けるとき、強さの分布(回折像)は
穴をその上に一様に分布した光源(振動体)で置き換えと考えることにより
えられる。

・回折波は穴が新しい波源になったときと全く同じになる。