ありのままに生きる

社会不適合なぼっちおやじが、自転車、ジョギング等々に現実逃避する日々を綴っています。

ヒトはなぜ自殺するのか:死に向かう心の科学

ジェシー・ベリング 著 鈴木幸太郎 訳  「ヒトはなぜ自殺するのか」メモ  

ジェシー・ベリング著 鈴木幸太郎 訳

「ヒトはなぜ自殺するのか:死に向かう心の科学」メモ   

 

3章 命をかける
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【まとめ】
・ハミルトンの血縁淘汰の数式モデルでは、血縁者を助けることで得られる利益がコストを上回るなら、利他行動が起こる可能性がもっとも高い。
・自殺は精神病理ではなく、少なくとも部分的には遺伝子の支配下にあり、私たちの祖先にも自殺はあった。
・鬱は適応的な機能をもつかもしれないが、自殺は適応的かどうか、まだはっきりしない。
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・自殺のような自己破壊行動が適応目的のために進化した?
 適応の正反対では?


・自然界は弱肉強食、適者が生き残るのなら、なぜ多くの社会的動物が利他適行動をするのか
・ハミルトンの血縁淘汰の数式モデル
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 r:血縁度、二個体間の遺伝的近縁度
 B:利他行動により相手が得る繁殖上の利益
 C:利他行動により自分自身にかかる繁殖のコスト

・血縁者を助けることで得られる利益がコストを上回るなら、利他行動が起こる可能性がもっとも高い。


リチャード・ドーキンス、「利己適な遺伝子」>
・ほかの動物と同様、人間の行動のほとんどが遺伝子に操られている。
・私たちは自分の遺伝子を次世代にできるだけ多く伝えるように行動する。
・遺伝子の大部分は、直接的な通常の生殖により次世代に受け継がれる。


・遺伝子の不死は、自分の血縁者を助ける血縁淘汰モデルでも間接的に達成されうる。


<自己破壊と自己保存の数学モデル>
・強烈な情動が自殺を誘導するケースが多数ある。
・自分の直接的な繁殖の見込みがなく、同時に、生き続けることが生物学的血縁者の繁殖を妨げて彼らの遺伝的成功を脅かす時、自殺することがある。
・自殺が起こるように見える限られた生態学的条件下では、自殺を妨げる淘汰圧はない。
・「生きる理由がない」場合、生きないというどんな些細な理由も行動に影響を及ぼす。
・進化のレンズを通すと、自殺は数のゲーム。


<進化の理論家が用いる「適応的」の意味>
・日常的、臨床的な意味での善し悪しとは無関係。
・道徳的な善悪の意味もない。
機械的な意味での適応を意味する。


<鬱も一種の適応?>
・無快感(アンヘドニア)の持続は鬱病の特質であり、快に注意がむかないための方策の反映かもしれない。
・不必要な快の出来事に注意が逸れないようにし、重要な適応問題の解決に集中できるようにする。
・「精神運動抑制」(セロトニン不足により体の動きが鈍くなる)と
考え込むことの組み合わせは、遺伝的利益に脅威を与える切迫した難題に焦点をあてさせるために自然が採用したやり方。


・本質的に社会的な問題が引き金になり鬱が引き起こされる。
鬱状態の人間は過度な社会的警戒モードにあり、社会的な問題への注意が高まるせいで、基本的な認知機能が損なわれる。
・鬱になると、抽象的知能テスト、記憶課題、基本的読解の成績が落ちる。
・鬱で、自分のおかれた状況を正確に把握できているなら、その人はうまくやっている。
・彼らにとってリアリズムとペシミズムは紙一重
・重大局面では、何事にも悲観的になったほうが賢明。
・鍵は、最悪のシナリオを計算に入れることであり、この場合悲観的であるほうがうまくゆく。


鬱状態により、その問題の解決法について閃きをもたらし、次の行動をとるように促し、その人は元の世界に戻れるかもしれない。
・または、出口がないという事実に到達するだけかもしれない。
・このモデルでは絶望は悪いことではない。
・問題が解決できないと感じられた時、鬱は減るはず。(なるようにしかならないという開き直り)


・鬱は適応的な機能をもつかもしれないが、自殺は適応的か?
・欝の人々の約5%がもとの生活に戻れず自殺で亡くなる。
・これらの死の多くが狂言自殺の事例。
狂言自殺:死を望んでいないのに助けを求めてそうするが、用いた方法の致死性を過小評価したことで命を落とす
・自殺未遂は件数では自殺の10倍になる。
・深刻な自殺未遂は、進化の用語「正直シグナル」に相当する。
・自殺未遂者は、関係者の援助を動機づけることにより得られる利益と自分の死のリスクとを取引している。


・自殺を予測する指標のひとつは、過去の自殺未遂。
・多くの自殺行為は「社会的交渉仮説」を支持しているように見える。
<社会的交渉仮説>
・自殺の企図は、行為者の幸福に関して遺伝的利益をもつ人々の頑迷な態度を変えるための、強力なてことして使われる。
・自殺は変化を起こすための強力な交渉手段。


・その人を自殺させないようにする直接的な方法は、その人の目標の途中に障害物をおいている人たちの意識を変えること。
・その人が変化をおこすためにこれらの「操作的」戦術を用いるとしても、意識的に戦略を立てているのではない。
・典型的な自殺は、自分の首を切りながら、同時に助けを求めて大声をあげるもので、そのどちらも自殺の側面。
パラドックス:自殺する人の多くが、それらの状況でなければ生きたいと思っており、この生ではない生を高く評価していること。


・自殺を進化的適応とみなす説への対論
・自殺は「精神病理の典型」
・自殺は進化的適応ではなく、自然がうまくゆかずに破綻したケース。
・自殺は病気であって適応ではない。
・残された血縁者は悲しみで身動きがとれなくなることが多く、彼らの繁殖可能性は自殺により低まる。
 →自殺は適応的ではない。


・自殺が他者にも害を与えるのだから自殺者は精神的に病んでいるという主張は、適応度の方程式に道徳的推論を入れ込んでいる。
・道徳は適応とは関係ない。
・進化はただ機械的にはたらくだけ。


・ヒトを真社会性の種(アリ、ハチ)として見る。
・真社会性の定義:子どもを協力して世話すること。
・人間の自殺にもっとも近い行動は、真社会性昆虫の致死的な自己犠牲行動に見いだせる。
・個々のミツバチは、巣への侵略者に針を刺すことにより命を捨てる。


・ヒトの自殺は、集団内のほかの者たちに模倣を引き起こし、悲しみや不幸をもたらす
 →自殺は適応ではなく「真社会性の本能の混乱」
・自殺する人々は、自分が「社会毒」に感染しているかのように行動し、自分を集団から遠ざけようとする。
<問題点>
①真社会性の昆虫は、半倍数性の生き物。
 真社会性行動にかかる淘汰圧は、ヒトの自殺のもとにある淘汰圧とは違う。
②すべての自殺をハミルトン則の誤解の結果だと仮定していること。
 進化論は価値論ではない。


・進化論的な考え方を採用するにしても、そこに適応的に行動すべきというルールはない。
進化心理学は、どれだけの数が生き延び繁殖するかという数の問題であり、道徳の問題ではない。


・生物学では「究極」要因と「至近」要因を区別する。
・究極要因:生物に適応行動をとらせるように作用する無意識的な圧力システム。
・至近要因:生物にその行動をとらせる直接的な(通常は情動的な)要因を指す。


・究極要因の点で、ヒトの自殺が真社会性昆虫の自己破壊行動のように包括適応度のパターンに従うかはわからない。
・ヒトの場合、自己破壊行動はほかの人間により引き起こされる。
 →この場合の至近要因は、他者により引き起こされる感情から逃れたいという欲求


・自分が必要とされていると感じる時には、自殺は少ない。
・これは、自殺率は戦時中(文化の焦点が集団の結束にある時代)には急落する傾向がある事実を説明する。


<家畜動物仮説>
・進化論が自殺を問題にする必要があるのは、自殺が遺伝子の支配下にある場合で、かつ野生動物に広く見られる場合に限られる。


・自殺にはある程度遺伝が関係している。
・素因としての自殺傾向も次の世代へと受け継がれる。
 →自殺には遺伝的基盤がある
・自殺が遺伝子により必然的に決まるということではない。
・リスク要因と一緒になったとき、一部の人では自殺をする閾値が低くなること。
・遺伝するのは感受性
・自殺は少なくとも部分的には「遺伝子の支配下にある」


・私たちの祖先に自殺があったかどうか?
・人類学で調査されてきたほぼどの社会でも、自殺の証拠が得られている。
・狩猟採集社会も含まれる。


・自殺率は時代を越えて変化していない。
・自殺の動機はほぼ不変であるが、手段は変化する。
・社会的学習は、自殺率から自殺方法や文化的態度にいたるまで、自殺のあらゆる側面に大きな影響をおよぼす。
・地域や時代を越えて見られる類似性は、問題がヒトの進化した心にあることも示している。