ありのままに生きる

社会不適合なぼっちおやじが、自転車、ジョギング等々に現実逃避する日々を綴っています。

不確実性を飼いならす:予測不能な世界を読み解く科学

イアン・スチュアート  著 徳田 功 訳  「不確実性を飼いならす」メモ  

 

イアン・スチュアート著 徳田 功訳
「不確実性を飼いならす 予測不能な世界を読み解く科学」メモ

 

15 量子の不確定性
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【まとめ】
不確定性原理で表される不確定性は観測者効果で生じるわけではなく、不確定性は本質的に存在している。
コペンハーゲン解釈が正しければ、互いに遠方にある二粒子からなる系で、一方の測定が他方に瞬時に(光速を越えて)影響を与える、不気味な遠隔作用が存在する。

決定論に基づく隠れた変数理論が「不気味な遠隔作用」なしで量子もつれを説明可能。
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量子力学>---
・不確実性は自然に固有の性質。
・知識をいくら付け加えても、起こる事象を予測可能にすることはできない。
・システム自体が、自分がなにをするかを「知らない」から。
・システムは、することをするだけ。
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ニュートンの功績:自然が数学のルールに従うこと。
量子力学:数学のルールでさえ本質的には不確実かもしれない。


★マックス・プランクの閃き
・光:人間の目が検出できる波長をもつ電磁波の一種。
・黒体:電磁エネルギーを最も効率的に放射する物体。
    あらゆる周波数の電磁波を完全に吸収する物体。
・黒体放射の強度が、放出される放射線の周波数と黒体の温度にどう依存するか。


プランクの説明:電磁エネルギーは離散的な量。
・電磁エネルギーは常に固定された微小量の整数倍になる。
・与えられた周波数に対し、エネルギーは常に非常に小さな定数値に周波数をかけて値の整数倍となる。
プランク定数:h=6.626×10^ー34Js


・光は整数個の光子をもつので、光のエネルギーは光子のエネルギーの整数倍。
・どうすれば粒子は周波数を持てるのか?
・光子は波(波動)なのか粒子なのか?
 →両方


★粒子説と波動説
・光がレンズやスリットを通過すると、明暗のある縞模様ができる(干渉現象)。
・波動理論で干渉現象を簡単に、自然に説明可能。
→光は粒子ではなく波
プランク説により、光の波動説は自明でなくなった。


★ヤングの二重スリットの実験
・光には二重性があり、ときには粒子、ときには波として振る舞う。


シュレーディンガー方程式と波動関数
シュレーディンガー方程式は線形。
・方程式の解に定数をかけたり、二つの解を足しあわせると、それらの結果も元の方程式の解。
→重ね合わせ
・重ね合わせの効果の一つは干渉縞の発生。
シュレーディンガー方程式の解を波と捉えるのが適切。
・系の量子状態を表す用語:波動関数


波動関数には観測可能な側面もあるが、すべてがそうではない。
・ある側面を観測すると、その他の側面は観測できなくなるか、変動し、2番目の観測結果を最初の観測結果と有機的に関連づけできなくなる。


波動関数の観測可能な側面:固有状態
・固有状態:系の「特徴的な状態」を指し、数学的に厳密に定義。
・複数の固有状態の足しあわせで任意の波動関数を作ることができる。


・量子系の状態を観測する場合
 ①ある固有状態を選ぶ。
 ②波動関数における固有状態の成分だけを測定する。
・最初の観測で波動関数が乱されるため、最初の固有状態は②までに変化。
・量子状態は固有状態の重ね合わせであるが、量子測定の結果得られるのは、純粋な固有状態でなければならない。


・量子系を測定する行為が、測定対象の特性を何らかの形で破壊する。
コペンハーゲン解釈:量子系を観測すると波動関数が崩壊し、ただ一つの固有状態に収縮する。


シュレーディンガーの猫
波動関数がどのように崩壊するかを誰も説明できない。
・大規模な量子系が、なぜ古典力学に従っているように見えるのか?


・中心となる哲学的な問題:観測とは何か?
・実際の観測では、測定装置は量子系ではないと仮定。


重要な点
・重ね合わせの原理
・私たちが測定できるのは固有状態のみ
・量子観測には未解決の性質がある。


★量子の不確定性
ハイゼンベルク量子力学では、粒子の位置を正確に測定すればするほど、その速度は正確には決まらなくなる。逆もまた然り。


・位置の不確定性とと運動量の不確定性の積は h/4π 以上。

   σx σp > h/4π


   σx:位置の標準偏差
   σp:運動量の標準偏差

量子力学には固有の大きさを持つ不確定性が存在する。
・ある組み合わせの量は測定が不可能となる。
・測定装置の限界ではなく、自然から来る限界。
 →量子論のいくつかの側面は、実験で検証不可能


ハイゼンベルクの原理が適用される変数の組み合わせ、適用されない組み合わせがある。
・位置と運動量など「共役」、「相補的」な変数の組み合わせは切り離せない関係にある。
・数学的なつながりのせいで、一つの変数を正確に測定すると、もう一方の変数を正確に測定できない。
・量子世界でも、二つの異なる変数を同時に測定できる場合もある。


★観測者効果と不確定性原理
不確定性原理で表される不確定性は観測者効果で生じるわけではない。
中性子スピンの測定結果:観測行為はハイゼンベルクの示した量の不確定性を生み出さない。
・光子群に対しての測定結果:個々の光子の不確定性が、不確定性原理が規定する量よりも小さい。


・一つの偏向の測定は、ハイゼンベルクの原理が主張するほどには光子を乱さない。
・不確定性を生み出すのは必ずしも測定する行為ではない。
・不確定性はすでに存在している。


★EPRのパラドックスと不気味な遠隔作用
コペンハーゲン解釈が正しければ、二つの粒子からなる系では、二つが遠く離れていても、一方を測定すると他方に瞬間的に影響が及ぶ。
・光速を越えた瞬間的影響は相対性理論と矛盾する(不気味な遠隔作用)。


・現代量子物理学:EPRパラドックスの作用は存在する。
・二つの粒子が「もつれた」限定された状況で生じる。
・粒子がもつれると、個々の構成要素は観測不能となり、系全体の状態しか観測できない。
・この意味で、粒子は独自性を失う。
・組み合わされた系の量子状態は、構成要素の量子状態の「テンソル積」で与えられる。
・対応する波動関数は、系の任意の状態が観測される確率を表す。
・この系の量子状態は、個々の構成要素の観測結果に分割不能


・二つの粒子間に相互作用が存在
→測定された粒子は何らかの方法でその状態をもう一方の粒子に伝達し、もう一方の粒子の測定に影響を与える。
・この効果は、粒子が互いにどれだけ離れていても起こる。
量子もつれの観測への影響は「量子テレボーテーション」と呼ばれる。


★隠れた変数理論
・隠れた変数理論:背後に決定論が隠れているという理論
・量子系のすべての粒子に隠れた変数が存在し、これらの変数が観測結果を決めると仮定する。
・二つの粒子がもつれた状態にあるとき、それぞれの隠れた変数の挙動は同期していると考える。
・それ以降、どの瞬間でも両方の隠れた変数の状態は同じになる。
・測定の結果がランダムでなく、粒子の内部状態で決まるならば、両方の粒子に対して行われた測定結果は一致するはず。
→二つの粒子の間で信号をやりとりする必要はない。


決定論に基づく隠れた変数理論が「不気味な遠隔作用」なしで量子もつれを説明可能。