ありのままに生きる

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ブラックホールと時空の方程式

 小林晋平 「ブラックホールと時空の方程式」メモ

ブラックホールと時空の方程式:15歳からの一般相対論

ブラックホールと時空の方程式:15歳からの一般相対論

 

小林晋平 「ブラックホールと時空の方程式」メモ

 

第4章 次元を上げる ~偏微分と3次元座標~

・線素を3次元へ拡張する。


 ds^2 = dr^2 + r^2dθ^2 + r^2sin^2θdθ^2 ・・・(4.1)


・線素の右辺にある項の数は、空間の次元に相当する。
・この線素は3次元の何もない空間を表す。
・これは3次元平坦空間、3次元ユークリッド空間と呼ばれる。


4.1 3次元空間とデカルト座標

・3次元空間では、物体の位置を指し示すのに「縦・横・高さ」の三つを指定する。
・2次元デカルト座標での線素は


 ds^2 = dx^2 + dy^2 ・・・(4.2)


であり、これは2次元平面での三平方の定理


 Δs^2 = Δx^2 + Δy^2 ・・・(4.3)


から来ていた。これにz成分を付け加えて3次元に拡張する。

 

 Δs^2 = Δx^2 + Δy^2 + Δz^2 ・・・(4.4)


・有限の距離Δx、Δy、Δzを無限小の量dx、dy、dzで置き換えれば、局所的な三平方の定理、線素が次式として求まる。


 ds^2 = dx^2 + dy^2 + dz^2 ・・・(4.5)

 

・線素は無限小離れた2点間の距離を表すものなので、3次元の線素を用いて3次元空間中を移動する物体が進む距離は次式を足し上げる(積分する)ことで求められる。


 ds = √(dx^2 + dy^2 +dz^2) ・・・(4.6)


●3次元デカルト座標から3次元極座標
・3次元極座標でも、原点からの距離rと角度を使い座標を表す。
・z軸からの傾きθと、x軸からの傾きφを使って表す。


・図4.2の点Pの座標がデカルト座標


 P(x,y,z) ・・・(4.7)


とする。
 rは、原点から点Pとの距離なので


 OP = r ・・・(4.8)


OP間の距離は


 OP = √(x^2 + y^2 +z^2) ・・・(4.9)


なので


 r = √(x^2 + y^2 +z^2) ・・・(4.10) 

 

 角θは、z軸と線分OPとのなす角なので


 cosθ = z/r ⇔ OC = z = rcosθ ・・・(4.11)

 

線分CPは線分OQと同じ長さ√(x^2 + y^2)なので


 sinθ = CP/r = √(x^2 + y^2)/r 


    ⇔ CP = √(x^2 + y^2) = rsinθ ・・・(4.12)


 tanθ=sinθ/cosθの関係より、


 tanθ = sinθ/cosθ = rsinθ/rcosθ = √(x^2 + y^2)/z ・・・(4.13)


以上よりθとx、y、zの関係が次式として導かれた。


 tanθ = √(x^2 + y^2)/z ・・・(4.14)


 φについて考える。OQ=√(x^2 + y^2)なので、cosφ、sinφはそれぞれ次式となる。


 cosφ = OA/OQ = x/rsinθ = x/√(x^2 + y^2) ・・・(4.15)


 sinφ = AQ/OQ = y/rsinθ = y/√(x^2 + y^2) ・・・(4.16)


よって


 OA = x = OQcosφ = rsinθcosφ ・・・(4.17)


 OB = y = OQsinφ = rsinθsinφ ・・・(4.18)


となる。tanφは次式となる。


 tanφ = sinφ/cosφ = rsinθsinφ/rsinθcosφ = y/x ・・・(4.19)


 tanφ = y/x ・・・(4.20)

 

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図4.2


<まとめ>
 x = rsinθcosφ     r = √(x^2 + y^2 + z^2)


 y = rsinθsinφ  ⇔  θ = arctan(√(x^2 + y^2)/z) ・・・(4.21)


 z = rcosθ        φ = arctan(y/x)


●3次元極座標での線素

・3次元極座標での線素が


 ds^2 = dr^2 + r^2dθ^2 + r^2sin^2θdφ^2

 ・・・(4.23)


であり、


 2点間の無限小距離を3次元座標で表す


ことを試みる。

・3次元極座標での無限小距離を求めるためには、図4.3のバウムクーヘンの切れ端のような立体を使う。
・この立体の角を結んだ対角線の長さが求めたい無限小距離。

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図4.3


デカルト座標に戻って考える。
・x、y、zの無限小変化dx、dy、dzをr、θ、φで表す。


 dx = sinθcosφdr + rcosθcosφdθ - rsinθsinφdφ


 dy = sinθsinφdr + rcosθsinφdθ + rsinθcosφdφ ・・・(4.24)


 dz = cosθdr - rsinθdθ


これらを2乗すると、


 ds^2 = dx^2 + dy^2 +dz^2 = dr^2 +r^2dθ^2 + r^2sin^2θdφ^2 ・・・(4.25)


が得られる。
・このdx、dy、dzの計算方法を理解するには偏微分と全微分を知る必要がある。


4.2 偏微分と全微分
偏微分:一つの変数の影響だけに注目する
・時刻tでの物体の位置x(t)の時間変化は


 dx/dt ・・・(4.26)


であり、これは速度。
・時間tを動かすとそれにつられてxも動くという関係なので、tを独立変数、xを従属変数という。
・一つの独立変数により決まる従属変数のことを1変数関数という。


偏微分は特定の量の変化分だけに注目し、それ以外の量は一切無視する計算。

 

・f(x,y)=3x + 2y + 4xyという2変数関数について、


 fをxで偏微分したもの = ∂f/∂x = ∂/∂x(3x + 2y + 4xy) =3x + 4y ・・・(4.28)


 fをyで偏微分したもの = ∂f/∂y = ∂/∂7(3x + 2y + 4xy) =2 + 4x ・・・(4.29)

 

となる。


・全微分:それぞれの変化を足し集める
・全微分は、複数ある要因からくる変化をすべて足し上げたとき、トータルでどれだけ変化するかを表すもの。
・考えている関数がx1、x2、・・・、xnのように、n個の変数に依存する多変数関数であれば、その全微分


 dg(x1,x2,・・・,xn) = ∂g/∂x1dx1 + ∂g/∂x2dx2+・・・+∂g/∂xndxn ・・・(4.43)


のように、変数の分だけ項が増える。
・全微分は変数をxi(i=1,2,・・・,n)からxi+dxiとした場合のすべての変化分。


 df≒f(x+Δx,y+Δy,z+Δz) - f(x,y,z)


  ⇔f(x+Δx,y+Δy,z+Δz)≒f(x,y,z) + df


   =f(x,y,z) + ∂f/∂xΔx + ∂f/∂yΔy + ∂f/∂zΔz


となる。xi(i=1,2,・・・,n)が変数なら、


 f(xi+Δxi)≒f(xi) + Σ<i=1,n>∂f/∂xiΔxi


これは、


 f(x+Δx)≒f(x) + f'(x)Δx


を多変数に拡張したもの。


・式(4.24)の一つ目の式

 
 dx = sinθcosφdr + rcosθcosφdθ - rsinθsinφdφ ・・・(4.44)


は、左辺のdxから、xの全微分であり、xは極座標のr、θ、φと


 x = rsinθcosφ ・・・(4.45)


の関係にあるので、r、θ、φの関数と見なせる。


 x=x(r,θ,φ) ・・・(4.46)


であり、xの全微分dxをつくるには、r、θ、φの偏微分が必要。


 dx = dx(r,θ,φ) = ∂x/∂rdr + ∂x/∂θdθ + ∂x/∂φdφ ・・・(4.47)


この計算を実行したものが式(4.44)。x = rsinθcosφより、


 ∂x/∂r = ∂/∂r(rsinθcosφ) = sinθcosφ ・・・(4.48)


 ∂x/∂θ = ∂/∂θ(rsinθcosφ) = rcosθcosφ ・・・(4.49)


 ∂x/∂φ = ∂/∂φ(rsinθcosφ) = -rsinθsinφ ・・・(4.50)


この結果を式(4.47)へ代入すれば式(4.44)が得られる。同様にdy、dzも計算すれば、式(4.24)の結果をすべて導ける。
・これらより、線素ds^2 = dx^2 + dy^2 +dz^2へ代入することで式(4.25)の結果が求まる。

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4.3 線素の使い道:球面上の距離
・地球の半径をaとすると、地上の点は、どこでも地球の中心からの距離はa。
・地上のどの点でもr=aで同じなので、2点間で半径(動径)の変化Δrはゼロなので、dr=0
 これを3次元極座標での線素の式に代入する。


 ds^2 = 0^2 + a^2dθ^2 +a^2sin^2θdφ^2


    = a^2(dθ^2 + sin^2θdφ^2)


    = a^2dΩ^2 ・・・(4.53)


・これが地球の表面上での線素、地上の2点間の距離を求めるための線素。
・2点間の角度の違いΔθ、Δφを代入して積分すると2点間の距離が求まる。
・ここで


 dΩ^2 = dθ^2 + sin^2θdφ^2 ・・・(4.54)


は、半径a=1としたものなので、「半径が1の球面上の線素」に相当する。


・線素は、球面という「曲がった2次元面」の上での2点間の距離を表すもの。
・平坦な空間を表す2次元デカルト座標の線素と見比べる。


 ds^2 = dx^2 + dy^2 (平坦な2次元空間、2次元平面) ・・・(4.55)


 dΩ^2 = dθ^2 + sin^2θdφ^2 (2次元球面) ・・・(4.56)


・両者の違いはdΩ^2のほうにsin^2θがつくか、つかないかだけ。
・sinθの存在が球面であることを表す。
・sinθがあることで、θの値に応じてφ方向の変化がsin^2θだけ小さくなる。


・地球の表面のどの点にも、そこに接する平面を考えることができる。
・これは、地球の表面を非常に滑らかと考えているから。
・空間がスカスカで離散的な点の集合でできている場合は、接する平面を定義できない。
一般相対性理論では、どこまでも滑らかな空間を仮定する。


【コラム―3次元空間である証拠?】
・私たちが住んでいるこの空間が3次元である証拠は?
⇒電気の力や磁石の力の性質にある。

・静電気の引きつけ合う力や、すべての質量をもつ物体同士に働く万有引力は「逆2乗則」に従い、この逆2乗則の成立が、この空間が3次元である証拠。


ガウスの法則>
・電気量Qに電気力線の本数は比例する。


 ∫<s>E・dS = Q/ε ・・・(4.58)


・電気力や磁力の強さは、電気力線や磁力線が単位面積あたりに何本生えているか、すなわち力線の本数密度に比例する。
・電気力や磁力は電荷(電気を帯びた物質)や磁荷から離れるほど弱くなる。
・本数密度は、単位面積あたりに力線が何本生えているかを表す。
電荷や磁荷から距離rのところでは、半径rの球面を考えると表面積は4πr^2なので、本数密度は次式となる。


 力線の総本数/4πr^2 ・・・(4.59)


この式の分母に現れるr^2が電気力や磁力の強さが逆2乗則に従う理由。
⇒逆2乗則の出どころは、空間中に球面を考えると、その表面積が4πr^2になること。

・仮にこの世が2次元空間であれば、本数密度は円の「表面積」に相当する2πrで割って得られることになる。(逆1乗則)
・4次元空間であれば、4次元空間中の球の表面積はr^3に比例するので、逆3乗則になる。


・一般にn次元球の表面積はガンマ関数を用いて次式で与えられる。


 2π^((n+1)/2)r^n/Γ((n+1)/2) ・・・(4.62)


・n=1のとき2πr、n=2のとき4πr^2、n=3のとき2π^2r^3。
・ガンマ関数は自然数nに対して考えられる階乗n!=n(n-1)(n-2)・・・2・1を拡張したもので、複素数zに対してΓ(z+1)=zΓ(z)を満たす。