リサ・ランドール/監訳 向山信治 訳 塩原通緒 「ワープする宇宙」メモ
リサ・ランドール 監訳 向山信治 訳 塩原通緒
「ワープする宇宙」メモ
Ⅱ部 20世紀初頭の進展
第5章
相対理論ーアインシュタインが発展させた重力理論
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【まとめ】
・物理法則はあらゆる慣性系において等しく、光の速さはどの慣性系においても等しい。
・一般相対性理論は慣性質量と重力質量の関係を利用し、重力効果を時空の幾何の観点だけから定式化。
・物質とエネルギーは時空を曲げ、その曲がりが重力を生み出す。
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●ニュートンの万有引力の法則
・二つの物体のあいだに働く重力の強さはそれぞれの物体の質量の積に比例する。
・二つの物体間に働く力は距離の二乗に逆比例する。
・重力効果はニュートンの万有引力(重力)定数に比例する。
・重力は非常に弱い力なので、ニュートン定数は微少な数字。
・地球の重力は、地球の全質量が地球の中心部に凝縮されているかのように働く。
●特殊相対性理論
・物理法則はどの観測者にとっても真理でなければならない。
・基準系(基準となる座標系)により測定される量が変わるかもしれないが、その量をつかさどる法則はつねに一定であるはず。
・特殊相対性理論は、時間と空間の概念をも一変させる飛躍的な前進。
・時間と空間を単独で考えることはできず、観測する側の運動している速度により、測定される量が変わる。
→この発見が特殊相対性理論・慣性系:基準系に対して等速運動をしているもの
<アインシュタインの仮定>
・物理法則はあらゆる慣性系において等しい。
・光の速さ(c)はどの慣性系においても等しい。→この二つの仮定は、ニュートンの法則の不完全性を示す。
・光速に近い速さで運動するものでは、ニュートンの公式と特殊相対性理論の公式に歴然とした違いが生じる。
・運動している時計と静止している時計で時間の刻まれるペースが違う。
・運動している基準系での光速と静止している基準系での光速が同じであることから導かれる。
・物理学者が時間の遅れを計測するのは、加速器や大気圏内で生み出された素粒子を研究するとき。
・素粒子は相対論的な速さ、光速に近い速さで動いている。
・大気圏内のミューオンは、ニュートンの原理の基づく宇宙にいるときに比べて、少なくとも10倍の距離を移動する。
●等価原理ー一般相対性理論の始まり
・特殊相対性理論の問題点
①慣性系という特殊な状況、互いに対して等速度で運動している場合にしか適用できない。
②重力場を規定する公式が見つかっていなかった。
・一般相対性理論の中心は、等価原理。
・加速による効果と重力による効果は区別できない。
・均一な加速度運動を、重力場における静止状態と区別することはできない。
・等価原理より、「慣性質量」と「重力質量」が等価であることが導かれる。
・慣性質量:力が加えられたときに物体がどれだけ加速するかを規定する・ニュートンの運動の第二法則:F=ma
・任意の力が物体にかけられるとき、その物体の慣性質量が大きいほど加速度が小さくなる
・重力質量:重力の法則において重力の強さを規定する質量
・ニュートン理論における重力の強さは、互いに引き合う二つの物質の質量それぞれに比例する。
・この質量が重力質量。
・重力質量と慣性質量は、結果的に等価。
・あらゆる物体が経験する重力加速度は、重力の原因となる別の物体から等距離にあるものにとり、つねに同じでなくてはならない。・加速度が加速した物体の質量と無関係であることは、重力だけにあてはまる。
・加速度と力の強さの関係(ニュートンの第二法則)はつねに質量に依存するのに、重力以外の力の強さはすべて質量に依存しないから。
・重力の法則とニュートンの運動の法則は同じように質量に依存する。
・重力による加速度を計算するときには質量が相殺される。
→重力加速度は質量に依存しない。
・一様な重力場においてはすべての物質が同じ加速度になる。
・この単一の加速度が相殺されるなら、重力の証拠も相殺される。
・この状況を表すのが自由落下。
・このときの物体は、重力の証拠をぴったり相殺するだけ加速している。
・等価原理:自分と自分の周囲のすべてのものが自由落下しているなら、重力場を感じない
・自由落下している観測者は、重力がない状況で加速度運動のない慣性系にいる観測者に適用
されるのと同じ方程式で記述される。
・自由落下している観測者は重力の力を感じない
・自由落下をしていない物体だけが重力の力を経験する。
●一般相対性理論の検証
<光の重力赤方偏移>
・赤方偏移により、光の波は、その光が放射されたときの振動数よりも低い振動数になる。
・光子は振動数が低くなるとエネルギーも低くなる。
・重力場に逆らい進む光子は運動エネルギーを失う。
・エネルギーを低くするため、光子は振動数を低める。
・この低められた振動数が、重力赤方変異。
<光の曲がり>
・重力は質量と同様にエネルギーも引きつけることができる。
・太陽の重力は質量に影響を及ぼし、光の軌道にも影響を及ぼす。
●宇宙の優美な湾曲
・等価原理は、重力が”局所的”には加速度に置き換えられるとしか言っていない。
・重力は物体に直接作用する力ではない。
・重力とは時空の幾何構造のゆがみであり、場所が違えば重力を相殺するのに別の加速度が必要となる。
・時空は事象を説明するための背景ではなく、主役。
・一般相対性理論では、重力の力は時空の局率と解釈され、その局率はそこに存在する物質とエネルギーにより決まる。
●湾曲した空間と湾曲した時空。
・時空:空間三次元に時間を含めたもの
・時空構造:エネルギーと物質のある特定の分布により生じる重力場に対応する幾何を正確に描写するもの
●アインシュタインの一般相対性理論
・一般相対性理論は、重力の概念を根本的に修正したもの。
・一般相対性理論は慣性質量と重力質量の深い関係を利用し、重力効果を時空の幾何の観点だけから定式化している。
・物質やエネルギーの分布は、時空を曲げたり歪めたりする。
・時空のなかの曲げられた通り道が重力運動を決定し、宇宙の物質とエネルギーが時空そのものの拡張・起伏・収縮を生む。
・平坦な空間では、二つのあいだの最短距離、「測地線」は直線となる。
・曲がった空間でも測地線の定義は同じだが、その経路はかならずしも直線にはならない。
・曲がった四次元時空でも、測地線は定義できる。
・自由落下(最も抵抗のない経路)は時空の測地線に沿った運動。
・外部の力が存在しない場合、落とされた物体は測地線に沿って落下する。
・ものが測地線に沿って時空を進み、外部の力が働いていない場合でも、重力は明らかな効果を及ぼす。
・重力により生じる加速度がどんな質量に対しても局所的に等しいので、重力は時空そのものの特性。
・それは自由落下が違う場所では違う内容になるからで、重力は単一の加速度に局所的にしか置き換えられない。
・自由落下の方向がすべての場所で同じにならないことは、時空が曲がっている証拠。
・すべての場所での重力効果を相殺できる単一の加速度はない。
・曲がった時空では、観測者により測地線が異なる。
→重力はつねに観測できる影響を及ぼす。
・一般相対性理論がニュートンの重力理論より優れているのは、これを使えばエネルギーと物質の分布がどうあれ、その相対論的な重力場を計算できること。
・一般相対性理論により、重力場は物質とエネルギーにより生じた時空構造の歪みであることがわかった。
・この歪みは宇宙全体に広がり、ブレーンまで含まれるかもしれない高次元の時空にも広がっている。
・時空の曲がりを決めるのは物質で、物質がどう運動するかを決めるのは時空。
・物質とエネルギーは時空を曲げ、その曲がりが重力を生み出す。
・一般相対性理論はニュートン重力理論の遠隔作用を排除した。
・重力が作用するには、時空の変形が必要。
・この過程は瞬時には起こらない。
・重力波は光速で進む。
・重力効果が所定の場所で作用するのは、信号がそこまで進み、時空を歪めるのにかかる時間が過ぎてから。
・光が届くよりも先にそれが起こることはない。