本書は、暗号を作る側と解読する側のせめぎあいを、当事者達に
スポットをあて、過去から現在までの歴史を辿りながら描いている。
国や軍の指導者、政治的活動家は迅速に暗号化されたメッセージ
を必要な人にのみ伝えたいと考え、同時に敵対する相手の情報を知
りたいと考える。暗号が解読されるとまた新たな暗号が作られる。
このようないたちごっこが歴史上延々と続いてきたそうだ。
解読不能とされた暗号や古代の失われた文字などの解読を、誰が
どんなテクニックを用いて行ったかは、非常に興味深かった。軍
や情報機関での暗号研究の成果は、それらの機関の秘密主義のため
後になって明らかになるこがあり、今現在でも民間が知り得ない知
識を所有している可能性があるといった点は、薄ら寒い感覚を覚えた。
最終章では、原理的に解読不可能とされる量子暗号について書か
れており、短距離であれば実用化されたとのことだ。原理的に解読不
能な暗号というのは、安心である反面、テロリストのような人にも
使われることを考えると、賛成ばかりしていられない気がして、こ
れからどうなっていくのか考えさせられた。